【短編集まとめ】悪役令嬢たちの物語。ときどき聖女、たまに魔女

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6 【聖女と魔王】封印された大魔王だが、復活と同時に転生してきた聖女に乗っ取られたようだ

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    俺は大魔王だ。

 顔はたぶん美形だし、体はやや筋肉質。長い黒髪に頭には二本の角。闇のオーラを身に纏い、世界を滅亡させるべく君臨していた。俺を倒すために勇者や冒険者達がやって来たがどれも返り討ちにしてやったのは懐かしい思い出だ。

 そう、俺はまさに無敵の大魔王だった。

    この世界が滅亡するのも時間の問題だろうと高を括っていたが、そんな俺の前に1人の人間の女が現れたのだ。

 金色の髪を靡かせ、青色の瞳をした美しい女は“聖女”だと名乗り聖なる力で俺様を倒しに来たと言うではないか。最初は鼻で笑って相手にしなかったが、女の力はかなりのもので俺は初めて好敵手と会った気がした。

 それからその女とは闘っては引き分けになり、また乗り込んでくるの毎日を繰り返していた。女……否、聖女の力は本物だ。大魔王である俺に敵対できる唯一の聖なる力の持ち主、神に選ばれた者。

 だが俺とて闇に君臨する大魔王だ。例え相手が聖女だろうと負けはしない。しかし俺はいつしか聖女がくるのを待ち望んでいることに気づいてしまう。無意識のうちにわざと引き分けにしてまた聖女が俺の前に現れるのを望んでいる事に気づいてしまったのだ。

 まさか、大魔王ともあろう者が最大の敵である聖女を愛してしまうなんて……その事実に気づいてしまったショックでとうとう俺は聖女に破れてしまった。
 しかし聖女は俺を滅ぼす事はせず、この体と魂を封印したのだ。

最後に見たのは悲しげに微笑む聖女の姿。聖女の儚く美しいその姿を目に焼き付け俺は長い眠りについた――――。

 そう、俺は美しい思い出を胸に眠りについた……はずだった。






「ねぇねぇ、お菓子食べたーい」

「畏まりました、大魔王様」

 寝転がってマンガという書物を読みながら部下にお菓子を持ってこさせる俺の姿に部下達がボソッと呟く。

「大魔王様、復活したら性格変わったね」と。

 俺の体は千年の封印から復活した。しかしやってることは魔法で出した書物を読んでゴロゴロするばかり。たまにやってくる勇者とかをフルボッコにはしてるが追い払うだけで殺戮はしない。世界滅亡なんてもってのほか。

「世界滅亡とかちょーめんどくさいじゃん。聖女もここにいるんだからもう封印もされないし♪」

 そう、復活した俺の中にいるのはなんと俺を封印した聖女の魂なのだ。どうやら神の企みで俺の魂を押さえ込むために聖女の魂を転生させられてしまったようだった。

    確かに俺の魂は聖女の眩い魂のせいで表に出ることは出来ない。だが意識はあるわけで……。

 俺はそれから聖女の本性を目の当たりにすることになり、愕然としながら魂の同居生活をするはめになってしまったのだった。
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