11 / 69
第1章 婚約破棄の章
〈10〉正当な男(エドガー視点)
しおりを挟む
その日、こんな話を聞いた。
“伯爵家に見たことのない格好をした他国の貴族らしい集団が入っていったって”
“どうやら海を越えた先にある、すごい大国の使者らしいぞ”
“もしかしたら結婚の申し込みでは?あれだけ仰々しいんだ、どこかの王族の使者かもしれないぞ”
“伯爵家のロティーナ様にはすでに婚約者がいるが、他国の貴族や王族が関われば国王がどうとでもするんじゃないか?”
“……あぁ、隣国との事だってそうだったもんな。あの事件は、酷い結末だった”
“どうせこの国の王は他国の王族と争わないためなら、なんでもするのだろうさ”
“つまり、ロティーナ様の今の婚約者は捨てられて終わりだな。いつも大きな顔しやがって……ロティーナ様の婚約者でなければあんな奴……”
……どういうことだ?まさか、俺が捨てられる?
伯爵家に謎の集団が出入りしてたった1日で、街中にそんな噂が飛び交っていたのだ。
今までこの伯爵領で俺が何をしようと誰も咎めたりはしなかったのに、今は俺が通るたびにヒソヒソと何かを囁かれている。
だいたい隣国との事件って、アミィを虐めた元公爵令嬢が修道院に送られたことだろう?あの素晴らしいアミィを虐めたのだから当然の報いだろうに。令嬢同士の虐めで婚約破棄や修道院はやりすぎだって?馬鹿言うな!あの女のせいでアミィの心は深く傷ついたんだから、それくらい当たり前じゃないか!
それにあの女は隣国の王子の婚約者でありながら複数の男に声をかけていたと言うじゃないか。そんな阿婆擦れなど修道院でも生ぬるいくらいだ。何も知らずに好き勝手言いやがって本当に腹が立つ!
やはり平民どもにはアミィの素晴らしさはわからないのか。
彼女はまさに天使……いや、女神だ。
しかし、真相を確かめねばなるまい。もし噂が本当だったら一大事だ。ロティーナは俺にぞっこんに惚れ込んでいるはずだが、なんせ花1輪すらもすぐに捨てないケチ女だからな。どこぞの王子なんかに結婚を申し込まれたら金に目が眩んでしまうかもしれない。
まったく、こんな噂が出回る事自体由々しき問題だろう!あいつはこの俺と婚約している自覚はあるのか?!これだから気味悪い桃毛は信用出来ないんだ!俺の妻になるからには、夫としての俺を敬い俺のすることには文句は言わない。いつも三歩後ろを歩く。せめてそれくらいはこなしてくれなくては困るぞ!
このまま伯爵になり伯爵領を手に入れ、これからもアミィに俺の永遠の愛を示すための贈り物をし続ける計画が駄目になってしまうじゃないか。結婚はロティーナとするのだから、心はアミィに捧げる自由くらいなくては伯爵当主なんて大変な仕事こなせないからな。
そうだ。俺は俺の人生の大半をロティーナの夫として伯爵当主の仕事に費やす予定なのだから、これは正当な報酬なのだ。俺にはその資格があるのだから!
こうなったら、人の婚約者に横恋慕しようとしている奴に抗議して慰謝料をふんだくってやろう。婚約者のいる人間にそんな噂を立たすだけでもとんだ不名誉だと言うことを教えてやるぞ!!そしてロティーナにも制裁を加えてやるんだ!俺と言う婚約者がいながら他の男につけ入れられるなどとんだ尻軽だとな!
「あ。見て、また来てるよあの人……」
「今まで大きい顔をしてたけど、噂が本当なら……」
「くそっ……!」
また俺の姿を見て領民がヒソヒソと話を始める。いつもならどこかの店でアミィにプレゼントする物を物色するのだが、あまりの居心地の悪さに俺はその場を逃げ出すように立ち去るしかなかった。
なんで俺がこんなに目に……!
怒りが抑えきれずドスドスと地団駄を踏みながら路地を曲がろうとした時、路地の先から見覚えのある白い手が見えた。
その手は待っていたように指を動かし俺を招く。それはアミィの次に俺が心を許す者の手だった。俺は嬉しくなってその場へと急いで足を進めた。
俺が目の前まで行くとその白い手は俺の頭を優しく撫でてくれる。そして赤く塗られた唇が耳障りの良い声を紡いだ。
「……エドガー、伯爵領はそろそろ手に入りそうなの?」
「は、はい!もう少しで手に入ります!
ただ……実は今、こんな噂が広がっていてーーーー」
俺はさっき耳にした不快な噂の事を相談する事にした。ロティーナが俺と別れられるはずがないが、もし本当に王族が関わってきたらどうなるかわからないからだ。
「まぁ、なんてことなのかしら……。エドガーは悪くないわ。あなたはとても素晴らしい人間だもの。悪いのはその伯爵令嬢よ……!
あぁ、そうだわ。きっとその子はーーーーだから、こうしなさいーーーー」
「わかりました!」
俺の耳元に唇を寄せ、的確なアドバイスを囁くともう一度頭を撫でてくれた。なんと頼りになるのだろうか。
なるほど、そう言うことか。今まさに、俺だけが真実に辿り着いたのだ!待っていろ、ロティーナ。これで伯爵領は俺の物だ!
“伯爵家に見たことのない格好をした他国の貴族らしい集団が入っていったって”
“どうやら海を越えた先にある、すごい大国の使者らしいぞ”
“もしかしたら結婚の申し込みでは?あれだけ仰々しいんだ、どこかの王族の使者かもしれないぞ”
“伯爵家のロティーナ様にはすでに婚約者がいるが、他国の貴族や王族が関われば国王がどうとでもするんじゃないか?”
“……あぁ、隣国との事だってそうだったもんな。あの事件は、酷い結末だった”
“どうせこの国の王は他国の王族と争わないためなら、なんでもするのだろうさ”
“つまり、ロティーナ様の今の婚約者は捨てられて終わりだな。いつも大きな顔しやがって……ロティーナ様の婚約者でなければあんな奴……”
……どういうことだ?まさか、俺が捨てられる?
伯爵家に謎の集団が出入りしてたった1日で、街中にそんな噂が飛び交っていたのだ。
今までこの伯爵領で俺が何をしようと誰も咎めたりはしなかったのに、今は俺が通るたびにヒソヒソと何かを囁かれている。
だいたい隣国との事件って、アミィを虐めた元公爵令嬢が修道院に送られたことだろう?あの素晴らしいアミィを虐めたのだから当然の報いだろうに。令嬢同士の虐めで婚約破棄や修道院はやりすぎだって?馬鹿言うな!あの女のせいでアミィの心は深く傷ついたんだから、それくらい当たり前じゃないか!
それにあの女は隣国の王子の婚約者でありながら複数の男に声をかけていたと言うじゃないか。そんな阿婆擦れなど修道院でも生ぬるいくらいだ。何も知らずに好き勝手言いやがって本当に腹が立つ!
やはり平民どもにはアミィの素晴らしさはわからないのか。
彼女はまさに天使……いや、女神だ。
しかし、真相を確かめねばなるまい。もし噂が本当だったら一大事だ。ロティーナは俺にぞっこんに惚れ込んでいるはずだが、なんせ花1輪すらもすぐに捨てないケチ女だからな。どこぞの王子なんかに結婚を申し込まれたら金に目が眩んでしまうかもしれない。
まったく、こんな噂が出回る事自体由々しき問題だろう!あいつはこの俺と婚約している自覚はあるのか?!これだから気味悪い桃毛は信用出来ないんだ!俺の妻になるからには、夫としての俺を敬い俺のすることには文句は言わない。いつも三歩後ろを歩く。せめてそれくらいはこなしてくれなくては困るぞ!
このまま伯爵になり伯爵領を手に入れ、これからもアミィに俺の永遠の愛を示すための贈り物をし続ける計画が駄目になってしまうじゃないか。結婚はロティーナとするのだから、心はアミィに捧げる自由くらいなくては伯爵当主なんて大変な仕事こなせないからな。
そうだ。俺は俺の人生の大半をロティーナの夫として伯爵当主の仕事に費やす予定なのだから、これは正当な報酬なのだ。俺にはその資格があるのだから!
こうなったら、人の婚約者に横恋慕しようとしている奴に抗議して慰謝料をふんだくってやろう。婚約者のいる人間にそんな噂を立たすだけでもとんだ不名誉だと言うことを教えてやるぞ!!そしてロティーナにも制裁を加えてやるんだ!俺と言う婚約者がいながら他の男につけ入れられるなどとんだ尻軽だとな!
「あ。見て、また来てるよあの人……」
「今まで大きい顔をしてたけど、噂が本当なら……」
「くそっ……!」
また俺の姿を見て領民がヒソヒソと話を始める。いつもならどこかの店でアミィにプレゼントする物を物色するのだが、あまりの居心地の悪さに俺はその場を逃げ出すように立ち去るしかなかった。
なんで俺がこんなに目に……!
怒りが抑えきれずドスドスと地団駄を踏みながら路地を曲がろうとした時、路地の先から見覚えのある白い手が見えた。
その手は待っていたように指を動かし俺を招く。それはアミィの次に俺が心を許す者の手だった。俺は嬉しくなってその場へと急いで足を進めた。
俺が目の前まで行くとその白い手は俺の頭を優しく撫でてくれる。そして赤く塗られた唇が耳障りの良い声を紡いだ。
「……エドガー、伯爵領はそろそろ手に入りそうなの?」
「は、はい!もう少しで手に入ります!
ただ……実は今、こんな噂が広がっていてーーーー」
俺はさっき耳にした不快な噂の事を相談する事にした。ロティーナが俺と別れられるはずがないが、もし本当に王族が関わってきたらどうなるかわからないからだ。
「まぁ、なんてことなのかしら……。エドガーは悪くないわ。あなたはとても素晴らしい人間だもの。悪いのはその伯爵令嬢よ……!
あぁ、そうだわ。きっとその子はーーーーだから、こうしなさいーーーー」
「わかりました!」
俺の耳元に唇を寄せ、的確なアドバイスを囁くともう一度頭を撫でてくれた。なんと頼りになるのだろうか。
なるほど、そう言うことか。今まさに、俺だけが真実に辿り着いたのだ!待っていろ、ロティーナ。これで伯爵領は俺の物だ!
8
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
私の願いは貴方の幸せです
mahiro
恋愛
「君、すごくいいね」
滅多に私のことを褒めることがないその人が初めて会った女の子を褒めている姿に、彼の興味が私から彼女に移ったのだと感じた。
私は2人の邪魔にならないよう出来るだけ早く去ることにしたのだが。
お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!
にのまえ
恋愛
すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。
公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。
家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。
だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、
舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
私が偽聖女ですって? そもそも聖女なんて名乗ってないわよ!
Mag_Mel
恋愛
「聖女」として国を支えてきたミレイユは、突如現れた"真の聖女"にその座を奪われ、「偽聖女」として王子との婚約破棄を言い渡される。だが当の本人は――「やっとお役御免!」とばかりに、清々しい笑顔を浮かべていた。
なにせ彼女は、異世界からやってきた強大な魔力を持つ『魔女』にすぎないのだから。自ら聖女を名乗った覚えなど、一度たりともない。
そんな彼女に振り回されながらも、ひたむきに寄り添い続けた一人の少年。投獄されたミレイユと共に、ふたりが見届けた国の末路とは――?
*小説家になろうにも投稿しています
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる