【本編完結・番外編追記】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。

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第1章 婚約破棄の章

〈10〉正当な男(エドガー視点)

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    その日、こんな話を聞いた。

“伯爵家に見たことのない格好をした他国の貴族らしい集団が入っていったって”

“どうやら海を越えた先にある、すごい大国の使者らしいぞ”

“もしかしたら結婚の申し込みでは?あれだけ仰々しいんだ、どこかの王族の使者かもしれないぞ”

“伯爵家のロティーナ様にはすでに婚約者がいるが、他国の貴族や王族が関われば国王がどうとでもするんじゃないか?”

“……あぁ、隣国との事だってそうだったもんな。あの事件は、酷い結末だった”

“どうせこの国の王は他国の王族と争わないためなら、なんでも・・・・するのだろうさ”

“つまり、ロティーナ様の今の婚約者は捨てられて終わりだな。いつも大きな顔しやがって……ロティーナ様の婚約者でなければあんな奴……”







    ……どういうことだ?まさか、俺が捨てられる?

    伯爵家に謎の集団が出入りしてたった1日で、街中にそんな噂が飛び交っていたのだ。

    今までこの伯爵領で俺が何をしようと誰も咎めたりはしなかったのに、今は俺が通るたびにヒソヒソと何かを囁かれている。

    だいたい隣国との事件って、アミィを虐めた元公爵令嬢が修道院に送られたことだろう?あの素晴らしいアミィを虐めたのだから当然の報いだろうに。令嬢同士の虐めで婚約破棄や修道院はやりすぎだって?馬鹿言うな!あの女のせいでアミィの心は深く傷ついたんだから、それくらい当たり前じゃないか!
    それにあの女は隣国の王子の婚約者でありながら複数の男に声をかけていたと言うじゃないか。そんな阿婆擦れなど修道院でも生ぬるいくらいだ。何も知らずに好き勝手言いやがって本当に腹が立つ!

    やはり平民どもにはアミィの素晴らしさはわからないのか。

    彼女はまさに天使……いや、女神だ。

    しかし、真相を確かめねばなるまい。もし噂が本当だったら一大事だ。ロティーナは俺にぞっこんに惚れ込んでいるはずだが、なんせ花1輪すらもすぐに捨てないケチ女だからな。どこぞの王子なんかに結婚を申し込まれたら金に目が眩んでしまうかもしれない。
    まったく、こんな噂が出回る事自体由々しき問題だろう!あいつはこの俺と婚約している自覚はあるのか?!これだから気味悪い桃毛は信用出来ないんだ!俺の妻になるからには、夫としての俺を敬い俺のすることには文句は言わない。いつも三歩後ろを歩く。せめてそれくらいはこなしてくれなくては困るぞ!

    このまま伯爵になり伯爵領を手に入れ、これからもアミィに俺の永遠の愛を示すための贈り物をし続ける計画が駄目になってしまうじゃないか。結婚はロティーナとするのだから、心はアミィに捧げる自由くらいなくては伯爵当主なんて大変な仕事こなせないからな。

    そうだ。俺は俺の人生の大半をロティーナの夫として伯爵当主の仕事に費やす予定なのだから、これは正当な報酬なのだ。俺にはその資格があるのだから!



    こうなったら、人の婚約者に横恋慕しようとしている奴に抗議して慰謝料をふんだくってやろう。婚約者のいる人間にそんな噂を立たすだけでもとんだ不名誉だと言うことを教えてやるぞ!!そしてロティーナにも制裁を加えてやるんだ!俺と言う婚約者がいながら他の男につけ入れられるなどとんだ尻軽だとな!

「あ。見て、また来てるよあの人……」

「今まで大きい顔をしてたけど、噂が本当なら……」

「くそっ……!」

    また俺の姿を見て領民がヒソヒソと話を始める。いつもならどこかの店でアミィにプレゼントする物を物色するのだが、あまりの居心地の悪さに俺はその場を逃げ出すように立ち去るしかなかった。

    なんで俺がこんなに目に……!

   怒りが抑えきれずドスドスと地団駄を踏みながら路地を曲がろうとした時、路地の先から見覚えのある白い手が見えた。

    その手は待っていたように指を動かし俺を招く。それはアミィの次に俺が心を許す者の手だった。俺は嬉しくなってその場へと急いで足を進めた。

    俺が目の前まで行くとその白い手は俺の頭を優しく撫でてくれる。そして赤く塗られた唇が耳障りの良い声を紡いだ。

「……エドガー、伯爵領はそろそろ手に入りそうなの?」

「は、はい!もう少しで手に入ります!
    ただ……実は今、こんな噂が広がっていてーーーー」

    俺はさっき耳にした不快な噂の事を相談する事にした。ロティーナが俺と別れられるはずがないが、もし本当に王族が関わってきたらどうなるかわからないからだ。

「まぁ、なんてことなのかしら……。エドガーは悪くないわ。あなたはとても素晴らしい人間だもの。悪いのはその伯爵令嬢よ……!
    あぁ、そうだわ。きっとその子はーーーーだから、こうしなさいーーーー」

「わかりました!」

    俺の耳元に唇を寄せ、的確なアドバイスを囁くともう一度頭を撫でてくれた。なんと頼りになるのだろうか。

    なるほど、そう言うことか。今まさに、俺だけが真実に辿り着いたのだ!待っていろ、ロティーナ。これで伯爵領は俺の物だ!




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