24 / 25
24。番外編 アレクシス
しおりを挟む
「はぁぁぁぁぁ…………」
ラース国の王太子。王家の色をしっかりと受け継ぎ、年頃の令嬢たちからは同じ色の末っ子と共に“美しい輝き王子”とか“麗しの兄弟”なんて呼ばれていた第一王子アレクシスは今日も深く長いため息をついていた。
自分と共に末っ子のオスカーは一部の貴族からかなり持て囃されている。その理由は自分と同じく王家の色を持っているからだが、はっきり言ってオスカーに政を行う才能はない。本人には申し訳ないが王家としても政略結婚の駒に使うのがせいぜいだろう。
というか、王家の色を持っていないからと一部の貴族共が蔑んでいる次男のハルベルトの方が王家にとってどれだけ重要な人物になるだろうかがわからないような頭の固い老害共なんて自分がおさめる未来にはいらないな。と、アレクシスは思っていた。
いや、別にオスカーが憎いわけではない。末っ子は普通に可愛い……が、それと王家の未来とは別の話である。ハルベルトを蔑ろにするのはよろしく無い。そうアレクシスの本能が告げるのだ。
幼い頃より王太子としての素質を持っていたアレクシスは、王家の色など関係ないと思っている。それにハルベルトの色は賢妃と名高い前王太后の色だ。あの弟は色だけでなくその才能も受け継いでいると直感していた。もしもハルベルトが次代の王となれば“賢王”と呼ばれるはずである。まぁ、本人は全くその気はない上に王族すらもやめてしまったのだが。
いや、逆にこれでよかったのだろうとも思う。セレーネがいる限りハルベルトがこの国を出ていくことはないし、セレーネが平和を望む限りハルベルトはこの国が乱れないようになんでもするのだから。
「やれやれ、我が弟ながら恐ろしい男だなぁ」
アレクシスは報告書を読んで思わず肩を竦めた。実はあの婚約破棄騒動からセレーネには密かに倭国から借りた忍者を護衛としてつけていた。もしもセレーネを害そうとする奴らがいたら牽制してもらうつもりだったのだが、どうやらハルベルトが先にそんな輩を全て片付けてしまったらしい。ハルベルトが剣の実力を隠しているのは知っているが、まさかこんな脅しに使うためとは。
あいつ、素手でもめちゃくちゃ強いからなぁ。と苦笑いするしかない。
セレーネに求婚するためだけに全てを捨てて、そしてたったひとつを手に入れた男。とてもではないが、自分にはそこまで出来ないな。と。
だがこれでラース国は影の宰相ともいえるハルベルトを獲得出来た。目立つのを嫌う弟だが、見えないところでなら色々としてくれるだろう。
今の問題はーーーー目立ちまくって問題しか起こさない方の弟だ。そう、オスカーである。
「あいつはまた抜け出したのか……!これで何度目だ?!」
今度は街の巡回をしていた衛兵からの報告書を読み、頭を抱えた。ここ最近のオスカーはどれだけ厳重に監禁してもあっという間に脱出して街へ行き、なんと平民の女を追いかけ回してプロポーズしているのだ。街でも騒動になっているというのに何度説得してもオスカーは「だって俺のおっぱいなんだ!」と理由のわからないことを叫んでいる。
大概のことは相談に乗ってくれるハルベルトも呆れているのかこの問題だけはノータッチだ。ハルベルトにとってはセレーネの元婚約者であるオスカーとはあまり関わりたくないのだろう。
確かにオスカーの再教育は自分がやると名乗りはあげたが、まさかこんな問題まで起こすとは思わなかったのだ。いや誰が「おっぱい」と連呼しながら平民にプロポーズするなんて思うのか。
それにしてもそれだけ聞くと、その平民の女がオスカーを誘惑したように聞こえるがそれもなさそうだった。
「本気でプロポーズしているつもりなら、最低最悪のプロポーズですわねぇ」
一緒に報告書を見ていたシラユキが「相変わらず残念な方ですわ」とため息をつく。結婚したばかりの新婚だというのに、オスカーのせいで甘い空気にもなりきれない。新婚なのに……。
それに、オスカーの被害に合っている平民はセレーネの知り合いらしく迷惑しているので地下牢に放り込んで簀巻にして手足に重りをつけて城から出さないようにして欲しいと苦情を言われたのでさらに上から鎖でぐるぐる巻きにしてたのになんで逃げ出してるんだ?
「早くオスカーを捕まえてこい!今度は穴を掘って首から下を生き埋めにしてやる!」
次こそはオスカーを大人しくさせないと、いつまでもシラユキとの新婚生活が楽しめないじゃないかぁっ!!
それから1週間程が過ぎた頃。その間もオスカーは城を抜け出し街をうろちょろしていたが平民の女は忽然と姿を消したようでしょんぼりとした様子で城に帰ってくる。帰ってくるのだが、また次の日も抜け出してうろちょろするのだ。アレクシスは対策が尽き疲れ切っていた。
そんな時、オスカーが城どころか国からも出ていってしまったのだ。やっぱり「おっぱい」と叫びながら……。
アレクシスは疲労困憊の顔でハルベルトに泣き付いた。お兄ちゃんは疲れたよ……。と呟きながら。
そんなアレクシスにハルベルトはにっこりと笑ってこういったのだ。
「大丈夫ですよ兄上。ほら、可愛い子には旅をさせろと言うではありませんか。それよりもだいぶお疲れのご様子ですし、しばらく業務をお休みにしてシラユキ王太子妃とゆっくり過ごされてはいかがですか?まだ国王は父上ですし、数日ならば宰相が指揮を執れば問題ありませんし、僕も影ながらお手伝いいたしますから」
「ハルベルトがそういうなら……でもオスカーが……」
「兄上は心配性ですね。でしたら伯爵家から捜索隊を出しましょう。すぐに見つかりますよ」
爽やかで裏表の無いハルベルトの穏やかな笑顔にアレクシスはホッとしたのか肩の力が抜けた気がした。ハルベルトがそういうのならば本当に大丈夫な気がしてきたのだ。それに、これまでオスカーの問題には関わってこなかったハルベルトが優しい言葉をかけてくれたのがなんだか嬉しかったのだ。やっぱりハルベルトも弟が心配だったのだな。と。
そうして数日間リフレッシュしたアレクシスは、気持ち新たに仕事に励んでいた。
ラース国はこれまでの騒動が嘘のように静かで平和だったという。
ラース国の王太子。王家の色をしっかりと受け継ぎ、年頃の令嬢たちからは同じ色の末っ子と共に“美しい輝き王子”とか“麗しの兄弟”なんて呼ばれていた第一王子アレクシスは今日も深く長いため息をついていた。
自分と共に末っ子のオスカーは一部の貴族からかなり持て囃されている。その理由は自分と同じく王家の色を持っているからだが、はっきり言ってオスカーに政を行う才能はない。本人には申し訳ないが王家としても政略結婚の駒に使うのがせいぜいだろう。
というか、王家の色を持っていないからと一部の貴族共が蔑んでいる次男のハルベルトの方が王家にとってどれだけ重要な人物になるだろうかがわからないような頭の固い老害共なんて自分がおさめる未来にはいらないな。と、アレクシスは思っていた。
いや、別にオスカーが憎いわけではない。末っ子は普通に可愛い……が、それと王家の未来とは別の話である。ハルベルトを蔑ろにするのはよろしく無い。そうアレクシスの本能が告げるのだ。
幼い頃より王太子としての素質を持っていたアレクシスは、王家の色など関係ないと思っている。それにハルベルトの色は賢妃と名高い前王太后の色だ。あの弟は色だけでなくその才能も受け継いでいると直感していた。もしもハルベルトが次代の王となれば“賢王”と呼ばれるはずである。まぁ、本人は全くその気はない上に王族すらもやめてしまったのだが。
いや、逆にこれでよかったのだろうとも思う。セレーネがいる限りハルベルトがこの国を出ていくことはないし、セレーネが平和を望む限りハルベルトはこの国が乱れないようになんでもするのだから。
「やれやれ、我が弟ながら恐ろしい男だなぁ」
アレクシスは報告書を読んで思わず肩を竦めた。実はあの婚約破棄騒動からセレーネには密かに倭国から借りた忍者を護衛としてつけていた。もしもセレーネを害そうとする奴らがいたら牽制してもらうつもりだったのだが、どうやらハルベルトが先にそんな輩を全て片付けてしまったらしい。ハルベルトが剣の実力を隠しているのは知っているが、まさかこんな脅しに使うためとは。
あいつ、素手でもめちゃくちゃ強いからなぁ。と苦笑いするしかない。
セレーネに求婚するためだけに全てを捨てて、そしてたったひとつを手に入れた男。とてもではないが、自分にはそこまで出来ないな。と。
だがこれでラース国は影の宰相ともいえるハルベルトを獲得出来た。目立つのを嫌う弟だが、見えないところでなら色々としてくれるだろう。
今の問題はーーーー目立ちまくって問題しか起こさない方の弟だ。そう、オスカーである。
「あいつはまた抜け出したのか……!これで何度目だ?!」
今度は街の巡回をしていた衛兵からの報告書を読み、頭を抱えた。ここ最近のオスカーはどれだけ厳重に監禁してもあっという間に脱出して街へ行き、なんと平民の女を追いかけ回してプロポーズしているのだ。街でも騒動になっているというのに何度説得してもオスカーは「だって俺のおっぱいなんだ!」と理由のわからないことを叫んでいる。
大概のことは相談に乗ってくれるハルベルトも呆れているのかこの問題だけはノータッチだ。ハルベルトにとってはセレーネの元婚約者であるオスカーとはあまり関わりたくないのだろう。
確かにオスカーの再教育は自分がやると名乗りはあげたが、まさかこんな問題まで起こすとは思わなかったのだ。いや誰が「おっぱい」と連呼しながら平民にプロポーズするなんて思うのか。
それにしてもそれだけ聞くと、その平民の女がオスカーを誘惑したように聞こえるがそれもなさそうだった。
「本気でプロポーズしているつもりなら、最低最悪のプロポーズですわねぇ」
一緒に報告書を見ていたシラユキが「相変わらず残念な方ですわ」とため息をつく。結婚したばかりの新婚だというのに、オスカーのせいで甘い空気にもなりきれない。新婚なのに……。
それに、オスカーの被害に合っている平民はセレーネの知り合いらしく迷惑しているので地下牢に放り込んで簀巻にして手足に重りをつけて城から出さないようにして欲しいと苦情を言われたのでさらに上から鎖でぐるぐる巻きにしてたのになんで逃げ出してるんだ?
「早くオスカーを捕まえてこい!今度は穴を掘って首から下を生き埋めにしてやる!」
次こそはオスカーを大人しくさせないと、いつまでもシラユキとの新婚生活が楽しめないじゃないかぁっ!!
それから1週間程が過ぎた頃。その間もオスカーは城を抜け出し街をうろちょろしていたが平民の女は忽然と姿を消したようでしょんぼりとした様子で城に帰ってくる。帰ってくるのだが、また次の日も抜け出してうろちょろするのだ。アレクシスは対策が尽き疲れ切っていた。
そんな時、オスカーが城どころか国からも出ていってしまったのだ。やっぱり「おっぱい」と叫びながら……。
アレクシスは疲労困憊の顔でハルベルトに泣き付いた。お兄ちゃんは疲れたよ……。と呟きながら。
そんなアレクシスにハルベルトはにっこりと笑ってこういったのだ。
「大丈夫ですよ兄上。ほら、可愛い子には旅をさせろと言うではありませんか。それよりもだいぶお疲れのご様子ですし、しばらく業務をお休みにしてシラユキ王太子妃とゆっくり過ごされてはいかがですか?まだ国王は父上ですし、数日ならば宰相が指揮を執れば問題ありませんし、僕も影ながらお手伝いいたしますから」
「ハルベルトがそういうなら……でもオスカーが……」
「兄上は心配性ですね。でしたら伯爵家から捜索隊を出しましょう。すぐに見つかりますよ」
爽やかで裏表の無いハルベルトの穏やかな笑顔にアレクシスはホッとしたのか肩の力が抜けた気がした。ハルベルトがそういうのならば本当に大丈夫な気がしてきたのだ。それに、これまでオスカーの問題には関わってこなかったハルベルトが優しい言葉をかけてくれたのがなんだか嬉しかったのだ。やっぱりハルベルトも弟が心配だったのだな。と。
そうして数日間リフレッシュしたアレクシスは、気持ち新たに仕事に励んでいた。
ラース国はこれまでの騒動が嘘のように静かで平和だったという。
520
あなたにおすすめの小説
「地味な婚約者を捨てて令嬢と結婚します」と言った騎士様が、3ヶ月で離婚されて路頭に迷っている
歩人
ファンタジー
薬師のナターリアは婚約者の騎士ルドガーに「地味なお前より伯爵令嬢が
ふさわしい」と捨てられた。泣きはしなかった。ただ、明日から届ける薬が
一人分減るな、と思っただけ。
ルドガーは華やかな伯爵令嬢イレーネと結婚し、騎士団で出世する——はずだった。
しかしイレーネの実家は見栄だけの火の車。持参金は消え、借金取りが押し寄せ、
イレーネ本人にも「稼ぎが少ない」と三行半を突きつけられた。
3ヶ月で全てを失ったルドガーが街角で見たのは、王宮薬師に抜擢された
ナターリアが、騎士団長と笑い合う姿だった。
「なあ、ナターリア……俺が間違っていた」
「ええ、知ってます。でも、もう関係のない話ですね」
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
本当に、貴女は彼と王妃の座が欲しいのですか?
もにゃむ
ファンタジー
侯爵令嬢のオリビアは、生まれた瞬間から第一王子である王太子の婚約者だった。
政略ではあったが、二人の間には信頼と親愛があり、お互いを大切にしている、とオリビアは信じていた。
王子妃教育を終えたオリビアは、王城に移り住んで王妃教育を受け始めた。
王妃教育で用意された大量の教材の中のある一冊の教本を読んだオリビアは、婚約者である第一王子との関係に疑問を抱き始める。
オリビアの心が揺れ始めたとき、異世界から聖女が召喚された。
「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」
歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。
「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは
泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析
能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り
続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。
婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
砂の揺籠
哀川アルマ
ファンタジー
ハーブロート公爵家の愛人の子、レイラ・ハーブロート公爵令嬢は、典型的な我儘令嬢でどうしようもないと噂される。
義母も相当な放蕩な女で、苦労している姉のシローヌ・ハーブロート公爵令嬢に同情の声が寄せられ、ハーブロート公爵の名声は地に落ちつつあった。
王太子妃の開いたお茶会でも暴れるレイラだが…?
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
初の投稿です。
楽しんでいただければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる