【完結】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と言っていた婚約者と婚約破棄したいだけだったのに、なぜか契約聖女になってしまいました

As-me.com

文字の大きさ
13 / 77

13 俺は正しい男なのだから(エドガー視点)

    その日、こんな話を耳にした。


「おい、知ってるか?アレクサンドルト伯爵家に見たことのない格好をした他国の貴族らしい集団が入っていったそうだぞ」

「知ってる!なんだかすごい大国から来たらしいって!」

「もしかしたら結婚の申し込みだったりするんじゃないか?あれだけぎょうぎょうしいんだ、どこかの王族の使者かもしれないぞ」

「えっ!でも確か伯爵家のロティーナ様にはすでに婚約者がいるじゃないか。ほらあの、偉そうな奴……」

「そんなの、他国の貴族や王族が関われば国王がどうにでもするんじゃないか?それにロティーナ様もあんな奴となんて結婚しないほうが……」

「……あぁ、それは言える。それに隣国との事だってそうだったもんな。あの事件は本当に酷い結末だった」

「どうせこの国の王は他国の王族と争わないためなら、なんでも・・・・するのだろうさ」

「それに、わざわざ使者を送ってきたということはロティーナ様を大切にしようとしてるってことだろ?ロティーナ様が幸せになれるなら大歓迎だ!ふはっ!つまりロティーナ様の今の婚約者は捨てられて終わりだな。いつも大きな顔しやがって……ロティーナ様の婚約者でなければあんな奴なんか……」






   なんと、 伯爵家に謎の集団が出入りしてたった1日で、街中にそんな噂が飛び交っていたのだ。

俺は自分の耳を疑った。まさかロティーナに縁談だと?……俺がいるというのに!




   その噂のせいなのか、 今までこの伯爵領で俺が何をしようと誰も咎めたりしなかったのに今は俺が通るたびに平民共が冷たい視線を向けながらヒソヒソと何かを囁いている。なんたる侮辱だろうか。

    だいたい隣国との事件というのは、アミィを虐めた元公爵令嬢が修道院に送られたことだろう?あの素晴らしいアミィを虐めたのだから当然の報いだろうに。令嬢同士のいじめで婚約破棄や修道院はやりすぎだって?馬鹿言うな!あの女のせいでアミィの心は深く傷ついたんだから、それくらい当たり前じゃないか!

    それにあの女レベッカは隣国の王子の婚約者でありながら複数の男に声をかけていたと言うじゃないか。そんなあばずれなど修道院でも生ぬるいくらいだ。何も知らずに好き勝手言いやがって本当に腹が立つ!

    やはり平民どもにはアミィの素晴らしさはわからないのか。

    彼女はまさに天使……いや、女神だ。

    しかし、真相を確かめねばなるまい。もし噂が本当だったら一大事だ。ロティーナは俺にぞっこんに惚れ込んでいるはずだが、なんせ花一輪すらもすぐに捨てられないケチ女だからな。どこぞの王子なんかに結婚を申し込まれたら金に目が眩んでしまうかもしれない。

    まったく、こんな噂が出回る事自体由々しき問題だろうに!あいつはこの俺と婚約している自覚はあるのか?!これだから気味悪い桃毛は信用出来ないんだ。だいたい俺の妻になるからには夫としての俺を敬い、俺のすることには文句は言わない。いつも俺の影を踏まないように三歩後ろを歩く。俺の為になんでもする。せめてそれくらいはこなしてくれなくては困るんだぞ!でなければ、不気味な桃毛の女の管理すらも出来ないのかと俺の評判がガタ落ちになってしまうじゃないか。

   それに、このまま伯爵になり伯爵領を手に入れ、これからもアミィに俺の永遠の愛を示すための贈り物をし続ける計画も駄目になってしまう。結婚はロティーナとしてやるのだから、心はアミィに捧げる自由くらいなくては伯爵当主なんて大変な仕事こなせないからな。

    そうだ。俺は俺の人生の大半をロティーナの夫として伯爵当主の仕事に費やす予定なのだから、これは正当な報酬なのだ。俺にはその資格があるのだから!

    こうなったら、人の婚約者に横恋慕しようとしている奴に抗議して慰謝料をふんだくってやろう。婚約者のいる人間にそんな噂を立てさせるだけでもとんだ不名誉だということを教えてやるぞ!!そしてロティーナにも制裁を加えてやるんだ!俺という婚約者がいながら他の男につけ入れられるなどとんだ尻軽だとな!

「あ。見て、また来てるよあの人……」

「今まで大きい顔をしてたけど、噂が本当なら……」

「くそっ……!」

    また俺の姿を見て領民がヒソヒソと話を始める。いつもならどこかの店でアミィにプレゼントする物を物色するのだが、あまりの居心地の悪さに俺はその場を逃げ出すように立ち去るしかなかった。

    なんで俺がこんなに目に……!

  湧き上がる怒りが抑えきれずドスドスと地団駄を踏みながら路地を曲がろうとした時、路地の先から見覚えのある白い手が見えた。

    その手は待っていたように指を動かし俺を招く。それはアミィの次に俺が心を許す者の手だった。俺はそれまでの怒りが薄れ、嬉しくなってその場へと急いで足を進めた。

    俺が目の前まで行くとその白い手は俺の頭を優しく撫でてくれる。そして赤く塗られた唇が耳障りのよい声を紡いだのだ。

「可愛いエドガー。わたしのエドガー。……ねぇ、エドガー。伯爵領はそろそろ手に入りそうなの?」

「は、はい!もう少しで手に入ります!
    ただ……実は今、こんな噂が広がっていて────」

    俺はさっき耳にした不快な噂の事を相談する事にした。ロティーナが俺と別れるはずがないが、もし本当に王族が関わってきたらどうなるかわからないからだ。

「まぁ、なんてことなのかしら……。エドガーは悪くないわ。そうよ、あなたのすることは全てが正しいの。だって、あなたはとても素晴らしい人間だもの。悪いのはその伯爵令嬢よ……!
    あぁ、そうだわ。きっとその子は────だから、こうしなさい────」

「わかりました!」

    俺の耳元に唇を寄せ、的確なアドバイスを囁くともう一度頭を優しく撫でてくれた。なんと頼りになるのだろう。

    なるほど、そう言うことか。今まさに、俺だけが真実に辿り着いたのだ!待っていろ、ロティーナ。俺を裏切った報いを受けさせてやる……。これで伯爵領は俺の物だ!




感想 1

あなたにおすすめの小説

幼馴染みで婚約者だった彼に切り捨てられてしまいましたが、自分にできることをしながら生きていたところ意外な良縁に恵まれました。

四季
恋愛
マリエ・フローレニシアとダット・ティオドールは幼馴染みであり婚約者同士。 仲は悪くなかった。 だが、ダットがアレンティーナという女性と仕事で知り合った時から、二人の関係は崩れていって……。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

聖女の妹、『灰色女』の私

ルーシャオ
恋愛
オールヴァン公爵家令嬢かつ聖女アリシアを妹に持つ『私』は、魔力を持たない『灰色女(グレイッシュ)』として蔑まれていた。醜聞を避けるため仕方なく出席した妹の就任式から早々に帰宅しようとしたところ、道に座り込む老婆を見つける。その老婆は同じ『灰色女』であり、『私』の運命を変える呪文をつぶやいた。 『私』は次第にマナの流れが見えるようになり、知らなかったことをどんどんと知っていく。そして、聖女へ、オールヴァン公爵家へ、この国へ、差別する人々へ——復讐を決意した。 一方で、なぜか縁談の来なかった『私』と結婚したいという王城騎士団副団長アイメルが現れる。拒否できない結婚だと思っていたが、妙にアイメルは親身になってくれる。一体なぜ?

酔っぱらい令嬢の英雄譚 ~チョコレートを食べていたら、いつの間にか第三王子を救っていたようです!~

ゆずこしょう
恋愛
婚約者と共に参加するはずだった、 夜会当日── 婚約者は「馬車の予約ができなかった」という理由で、 迎えに来ることはなかった。 そして王宮で彼女が目にしたのは、 婚約者と、見知らぬ女性が寄り添う姿。 領地存続のために婿が必要だったエヴァンジェリンは、 感情に流されることもなく、 淡々と婚約破棄の算段を立て始める。 目の前にあった美味しいチョコレートをつまみながら、 頭の中で、今後の算段を考えていると 別の修羅場が始まって──!? その夜、ほんの少しお酒を口にしたことで、 エヴァンジェリンの評価と人生は、 思いもよらぬ方向へ転がり始める── 2月11日 第一章完結 2月15日 第二章スタート予定

『仕方がない』が口癖の婚約者

本見りん
恋愛
───『だって仕方がないだろう。僕は真実の愛を知ってしまったのだから』 突然両親を亡くしたユリアナを、そう言って8年間婚約者だったルードヴィヒは無慈悲に切り捨てた。

とある令嬢の優雅な別れ方 〜婚約破棄されたので、笑顔で地獄へお送りいたします〜

入多麗夜
恋愛
【完結まで執筆済!】 社交界を賑わせた婚約披露の茶会。 令嬢セリーヌ・リュミエールは、婚約者から突きつけられる。 「真実の愛を見つけたんだ」 それは、信じた誠実も、築いてきた未来も踏みにじる裏切りだった。だが、彼女は微笑んだ。 愛よりも冷たく、そして美しく。 笑顔で地獄へお送りいたします――

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

[完]出来損ない王妃が死体置き場に捨てられるなんて、あまりにも雑で乱暴です

小葉石
恋愛
 国の周囲を他国に囲まれたガーナードには、かつて聖女が降臨したという伝承が残る。それを裏付ける様に聖女の血を引くと言われている貴族には時折不思議な癒しの力を持った子供達が生まれている。  ガーナードは他国へこの子供達を嫁がせることによって聖女の国としての威厳を保ち周辺国からの侵略を許してこなかった。      各国が虎視眈々とガーナードの侵略を図ろうとする中、かつて無いほどの聖女の力を秘めた娘が侯爵家に生まれる。ガーナード王家はこの娘、フィスティアを皇太子ルワンの皇太子妃として城に迎え王妃とする。ガーナード国王家の安泰を恐れる周辺国から執拗に揺さぶりをかけられ戦果が激化。国王となったルワンの側近であり親友であるラートが戦場から重傷を負って王城へ帰還。フィスティアの聖女としての力をルワンは期待するが、フィスティアはラートを癒すことができず、ラートは死亡…親友を亡くした事と聖女の力を謀った事に激怒し、フィスティアを王妃の座から下ろして、多くの戦士たちが運ばれて来る死体置き場へと放り込む。  死体の中で絶望に喘ぐフィスティアだが、そこでこその聖女たる力をフィスティアは発揮し始める。  王の逆鱗に触れない様に、身を隠しつつ死体置き場で働くフィスティアの前に、ある日何とかつての夫であり、ガーナード国国王ルワン・ガーナードの死体が投げ込まれる事になった……………!   *グロテスクな描写はありませんので安心してください。しかし、死体と言う表現が多々あるかと思いますので苦手な方はご遠慮くださいます様によろしくお願いします。