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13 俺は正しい男なのだから(エドガー視点)
その日、こんな話を耳にした。
「おい、知ってるか?アレクサンドルト伯爵家に見たことのない格好をした他国の貴族らしい集団が入っていったそうだぞ」
「知ってる!なんだかすごい大国から来たらしいって!」
「もしかしたら結婚の申し込みだったりするんじゃないか?あれだけぎょうぎょうしいんだ、どこかの王族の使者かもしれないぞ」
「えっ!でも確か伯爵家のロティーナ様にはすでに婚約者がいるじゃないか。ほらあの、偉そうな奴……」
「そんなの、他国の貴族や王族が関われば国王がどうにでもするんじゃないか?それにロティーナ様もあんな奴となんて結婚しないほうが……」
「……あぁ、それは言える。それに隣国との事だってそうだったもんな。あの事件は本当に酷い結末だった」
「どうせこの国の王は他国の王族と争わないためなら、なんでもするのだろうさ」
「それに、わざわざ使者を送ってきたということはロティーナ様を大切にしようとしてるってことだろ?ロティーナ様が幸せになれるなら大歓迎だ!ふはっ!つまりロティーナ様の今の婚約者は捨てられて終わりだな。いつも大きな顔しやがって……ロティーナ様の婚約者でなければあんな奴なんか……」
なんと、 伯爵家に謎の集団が出入りしてたった1日で、街中にそんな噂が飛び交っていたのだ。
俺は自分の耳を疑った。まさかロティーナに縁談だと?……俺がいるというのに!
その噂のせいなのか、 今までこの伯爵領で俺が何をしようと誰も咎めたりしなかったのに今は俺が通るたびに平民共が冷たい視線を向けながらヒソヒソと何かを囁いている。なんたる侮辱だろうか。
だいたい隣国との事件というのは、アミィを虐めた元公爵令嬢が修道院に送られたことだろう?あの素晴らしいアミィを虐めたのだから当然の報いだろうに。令嬢同士のいじめで婚約破棄や修道院はやりすぎだって?馬鹿言うな!あの女のせいでアミィの心は深く傷ついたんだから、それくらい当たり前じゃないか!
それにあの女は隣国の王子の婚約者でありながら複数の男に声をかけていたと言うじゃないか。そんなあばずれなど修道院でも生ぬるいくらいだ。何も知らずに好き勝手言いやがって本当に腹が立つ!
やはり平民どもにはアミィの素晴らしさはわからないのか。
彼女はまさに天使……いや、女神だ。
しかし、真相を確かめねばなるまい。もし噂が本当だったら一大事だ。ロティーナは俺にぞっこんに惚れ込んでいるはずだが、なんせ花一輪すらもすぐに捨てられないケチ女だからな。どこぞの王子なんかに結婚を申し込まれたら金に目が眩んでしまうかもしれない。
まったく、こんな噂が出回る事自体由々しき問題だろうに!あいつはこの俺と婚約している自覚はあるのか?!これだから気味悪い桃毛は信用出来ないんだ。だいたい俺の妻になるからには夫としての俺を敬い、俺のすることには文句は言わない。いつも俺の影を踏まないように三歩後ろを歩く。俺の為になんでもする。せめてそれくらいはこなしてくれなくては困るんだぞ!でなければ、不気味な桃毛の女の管理すらも出来ないのかと俺の評判がガタ落ちになってしまうじゃないか。
それに、このまま伯爵になり伯爵領を手に入れ、これからもアミィに俺の永遠の愛を示すための贈り物をし続ける計画も駄目になってしまう。結婚はロティーナとしてやるのだから、心はアミィに捧げる自由くらいなくては伯爵当主なんて大変な仕事こなせないからな。
そうだ。俺は俺の人生の大半をロティーナの夫として伯爵当主の仕事に費やす予定なのだから、これは正当な報酬なのだ。俺にはその資格があるのだから!
こうなったら、人の婚約者に横恋慕しようとしている奴に抗議して慰謝料をふんだくってやろう。婚約者のいる人間にそんな噂を立てさせるだけでもとんだ不名誉だということを教えてやるぞ!!そしてロティーナにも制裁を加えてやるんだ!俺という婚約者がいながら他の男につけ入れられるなどとんだ尻軽だとな!
「あ。見て、また来てるよあの人……」
「今まで大きい顔をしてたけど、噂が本当なら……」
「くそっ……!」
また俺の姿を見て領民がヒソヒソと話を始める。いつもならどこかの店でアミィにプレゼントする物を物色するのだが、あまりの居心地の悪さに俺はその場を逃げ出すように立ち去るしかなかった。
なんで俺がこんなに目に……!
湧き上がる怒りが抑えきれずドスドスと地団駄を踏みながら路地を曲がろうとした時、路地の先から見覚えのある白い手が見えた。
その手は待っていたように指を動かし俺を招く。それはアミィの次に俺が心を許す者の手だった。俺はそれまでの怒りが薄れ、嬉しくなってその場へと急いで足を進めた。
俺が目の前まで行くとその白い手は俺の頭を優しく撫でてくれる。そして赤く塗られた唇が耳障りのよい声を紡いだのだ。
「可愛いエドガー。わたしのエドガー。……ねぇ、エドガー。伯爵領はそろそろ手に入りそうなの?」
「は、はい!もう少しで手に入ります!
ただ……実は今、こんな噂が広がっていて────」
俺はさっき耳にした不快な噂の事を相談する事にした。ロティーナが俺と別れるはずがないが、もし本当に王族が関わってきたらどうなるかわからないからだ。
「まぁ、なんてことなのかしら……。エドガーは悪くないわ。そうよ、あなたのすることは全てが正しいの。だって、あなたはとても素晴らしい人間だもの。悪いのはその伯爵令嬢よ……!
あぁ、そうだわ。きっとその子は────だから、こうしなさい────」
「わかりました!」
俺の耳元に唇を寄せ、的確なアドバイスを囁くともう一度頭を優しく撫でてくれた。なんと頼りになるのだろう。
なるほど、そう言うことか。今まさに、俺だけが真実に辿り着いたのだ!待っていろ、ロティーナ。俺を裏切った報いを受けさせてやる……。これで伯爵領は俺の物だ!
「おい、知ってるか?アレクサンドルト伯爵家に見たことのない格好をした他国の貴族らしい集団が入っていったそうだぞ」
「知ってる!なんだかすごい大国から来たらしいって!」
「もしかしたら結婚の申し込みだったりするんじゃないか?あれだけぎょうぎょうしいんだ、どこかの王族の使者かもしれないぞ」
「えっ!でも確か伯爵家のロティーナ様にはすでに婚約者がいるじゃないか。ほらあの、偉そうな奴……」
「そんなの、他国の貴族や王族が関われば国王がどうにでもするんじゃないか?それにロティーナ様もあんな奴となんて結婚しないほうが……」
「……あぁ、それは言える。それに隣国との事だってそうだったもんな。あの事件は本当に酷い結末だった」
「どうせこの国の王は他国の王族と争わないためなら、なんでもするのだろうさ」
「それに、わざわざ使者を送ってきたということはロティーナ様を大切にしようとしてるってことだろ?ロティーナ様が幸せになれるなら大歓迎だ!ふはっ!つまりロティーナ様の今の婚約者は捨てられて終わりだな。いつも大きな顔しやがって……ロティーナ様の婚約者でなければあんな奴なんか……」
なんと、 伯爵家に謎の集団が出入りしてたった1日で、街中にそんな噂が飛び交っていたのだ。
俺は自分の耳を疑った。まさかロティーナに縁談だと?……俺がいるというのに!
その噂のせいなのか、 今までこの伯爵領で俺が何をしようと誰も咎めたりしなかったのに今は俺が通るたびに平民共が冷たい視線を向けながらヒソヒソと何かを囁いている。なんたる侮辱だろうか。
だいたい隣国との事件というのは、アミィを虐めた元公爵令嬢が修道院に送られたことだろう?あの素晴らしいアミィを虐めたのだから当然の報いだろうに。令嬢同士のいじめで婚約破棄や修道院はやりすぎだって?馬鹿言うな!あの女のせいでアミィの心は深く傷ついたんだから、それくらい当たり前じゃないか!
それにあの女は隣国の王子の婚約者でありながら複数の男に声をかけていたと言うじゃないか。そんなあばずれなど修道院でも生ぬるいくらいだ。何も知らずに好き勝手言いやがって本当に腹が立つ!
やはり平民どもにはアミィの素晴らしさはわからないのか。
彼女はまさに天使……いや、女神だ。
しかし、真相を確かめねばなるまい。もし噂が本当だったら一大事だ。ロティーナは俺にぞっこんに惚れ込んでいるはずだが、なんせ花一輪すらもすぐに捨てられないケチ女だからな。どこぞの王子なんかに結婚を申し込まれたら金に目が眩んでしまうかもしれない。
まったく、こんな噂が出回る事自体由々しき問題だろうに!あいつはこの俺と婚約している自覚はあるのか?!これだから気味悪い桃毛は信用出来ないんだ。だいたい俺の妻になるからには夫としての俺を敬い、俺のすることには文句は言わない。いつも俺の影を踏まないように三歩後ろを歩く。俺の為になんでもする。せめてそれくらいはこなしてくれなくては困るんだぞ!でなければ、不気味な桃毛の女の管理すらも出来ないのかと俺の評判がガタ落ちになってしまうじゃないか。
それに、このまま伯爵になり伯爵領を手に入れ、これからもアミィに俺の永遠の愛を示すための贈り物をし続ける計画も駄目になってしまう。結婚はロティーナとしてやるのだから、心はアミィに捧げる自由くらいなくては伯爵当主なんて大変な仕事こなせないからな。
そうだ。俺は俺の人生の大半をロティーナの夫として伯爵当主の仕事に費やす予定なのだから、これは正当な報酬なのだ。俺にはその資格があるのだから!
こうなったら、人の婚約者に横恋慕しようとしている奴に抗議して慰謝料をふんだくってやろう。婚約者のいる人間にそんな噂を立てさせるだけでもとんだ不名誉だということを教えてやるぞ!!そしてロティーナにも制裁を加えてやるんだ!俺という婚約者がいながら他の男につけ入れられるなどとんだ尻軽だとな!
「あ。見て、また来てるよあの人……」
「今まで大きい顔をしてたけど、噂が本当なら……」
「くそっ……!」
また俺の姿を見て領民がヒソヒソと話を始める。いつもならどこかの店でアミィにプレゼントする物を物色するのだが、あまりの居心地の悪さに俺はその場を逃げ出すように立ち去るしかなかった。
なんで俺がこんなに目に……!
湧き上がる怒りが抑えきれずドスドスと地団駄を踏みながら路地を曲がろうとした時、路地の先から見覚えのある白い手が見えた。
その手は待っていたように指を動かし俺を招く。それはアミィの次に俺が心を許す者の手だった。俺はそれまでの怒りが薄れ、嬉しくなってその場へと急いで足を進めた。
俺が目の前まで行くとその白い手は俺の頭を優しく撫でてくれる。そして赤く塗られた唇が耳障りのよい声を紡いだのだ。
「可愛いエドガー。わたしのエドガー。……ねぇ、エドガー。伯爵領はそろそろ手に入りそうなの?」
「は、はい!もう少しで手に入ります!
ただ……実は今、こんな噂が広がっていて────」
俺はさっき耳にした不快な噂の事を相談する事にした。ロティーナが俺と別れるはずがないが、もし本当に王族が関わってきたらどうなるかわからないからだ。
「まぁ、なんてことなのかしら……。エドガーは悪くないわ。そうよ、あなたのすることは全てが正しいの。だって、あなたはとても素晴らしい人間だもの。悪いのはその伯爵令嬢よ……!
あぁ、そうだわ。きっとその子は────だから、こうしなさい────」
「わかりました!」
俺の耳元に唇を寄せ、的確なアドバイスを囁くともう一度頭を優しく撫でてくれた。なんと頼りになるのだろう。
なるほど、そう言うことか。今まさに、俺だけが真実に辿り着いたのだ!待っていろ、ロティーナ。俺を裏切った報いを受けさせてやる……。これで伯爵領は俺の物だ!
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