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《2》悪役令嬢は初めてを捧げたい
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結局よく判らなかったパーティーから無事に帰宅してから数日。しばらくは何事もなく平穏な日々を過ごしていたのだが……。
「ルーク、やっぱり無理しなくていいのよ?」
不安にかられルークの前から離れようとするが、ルークがそれを止めた。
「無理なんかしてないよ。オレは大丈夫」
「でも……」
にこりと、いつもの微笑みを見せてくれようとするがその表情は少し堅い。今のルークは私の従者であり、私に仕えていなければ死刑になるかもしれない身だ。私から申し出られたら断りたくても断れないのだろう。でも、どうしてもルークにお願いしたかったのだ。
「……わかってるの、本当は無理を言ってるって。でも、私……初めてで。最初の人はルークにお願いしたくて……」
羞恥心もあり頬に熱が集まるのを感じる。この年齢で初めてなんてルークはどう思うだろうか?しかし前世でもろくに経験のなかった私はやはり初めてを最推しに捧げたかった。
「嬉しいよ、御主人様。御主人様の初めてなら全部欲しい。だからーーーー」
ルークが私に向かって手を伸ばす。私はこくんと頷き、それに従った。
「ルークに食べて欲しくて、生まれて初めて作った手料理……召し上がれ!」
ルークの目の前には料理長がドン!と置いた大きな鍋がその存在感を猛烈にアピールしている。蓋はすでに開いていて中からは湯気が漂っているのだが……その湯気はなんとも言えない色をしていた。
「「「……!」」」
なぜかその場にいたルークの周りの使用人たちが一斉に息を飲み込む。見た目もそうだが、匂いもなんだか違う気がするし……やはり乙女ゲームの世界だから仕様が違うのだろうか?しかし私達が普段食べてる食事は普通なのに、なぜ私が作ったらこんなことになるのか……不思議である。
「シチューを作ってみたんだけど、なぜか途中から色が変わってきてしまって……」
「おぉう、これは……。お、美味しそうだよ!いただきます!」
そうしてルークは一気にそのシチューを食べてくれたのだった。
あのパーティーから数日。私はルークにあのドレスのお礼がしたいと頭を悩ませていた。乳母たちに相談してみると「(ルーク様なら)手作りのものが喜ばれるのでは?」と言われてチャレンジしてみる事にしたのである。
しかし、私は前世も含めてものすごく不器用だ。刺繍やレース編みなんて逆立ちしても出来なくてどうしたものかと思っていたら、それなら手料理ならどうか?と料理長が簡単な料理を教えてくれる事になったのだ。
もちろん料理も初めての経験だった。じゃがいもってあんなにゴツゴツしているのに、皮を剥くと立方体になるんだもの。不思議だわ……。ちなみに前世では包丁を握って大惨事になった事があり母親に“台所立入禁止“にされた経験がある。しかし、転生して女子力スキルも上がってるはず!と果敢に挑戦してみたのだが、やはり悪役令嬢には料理スキルは備わってなかったようなのだ。
それにしても……なんでホワイトシチューを作ったのに、色がヴァイオレットになるのかしら?自分で味見もしてみたがそこまで変な味もしなかったのでちゃんとシチューのはずなのだが。
「見た目はちょっとアレだけど、味は大丈夫だと思うの!変な物は入れてないし……」
逆に変なものを入れてないのにこの色になるのがミステリーとも言えるのだが、初めて作った料理をルークが食べてくれてるのが嬉しくて私はそこまで考えていなかった。
「でもやっぱり量が多かったわね。ルークも食べてくれたし、残りはお父様やみんなにも……」
まだ半分以上残っているシチューを見て、やはり作りすぎたと反省した。さすがにこれを全部ルークに食べろと言うのは無理があるだろう。そう思って鍋を下げようとするがルークの手が私の手を優しく握ってそれを止める。
「……ダメだよ御主人様、これは全部オレのだからね。誰にもあげないよ」
「ルーク……、そんなにこのシチューが気に入ってくれての?」
「こんなに美味しいシチューを食べたのは生まれて初めてだよ」
こうしてルークはシチューを全て平らげ(涙目)、なぜか屋敷の全使用人たちから尊敬の念を向けられる事になったのだった。
***
「ルーク様が自分を犠牲にされて、我々使用人を守ってくださったんだ!」
「まさかお嬢様の料理があんな……でもどんな味かちょっと興味あるかも」
「馬鹿野郎!治癒師であるルーク様ですら完食した後にしばらく寝込んでたんだぞ?!なんでも毒物ではないから治癒出来なかったらしいとか」
「気にはなるけど、完食は無理だよなぁ……」
「お嬢様には申し訳ないけど、火からおろしてるのにボコボコとガスを噴き出しててまるで毒沼に潜む魔物みたいにしか見えなかったよ……紫色してたし」
「鍋いっぱいのあれを完食したルーク様は勇者だぜ」
「愛の力ってすごいんだなぁ。俺、感動した」
味はギリギリ食べれる範囲だったが、見た目がどうにもヤバかった“まるで魔物シチュー”をエメリアへの愛で食べきったルークの部屋には大量に胃薬の差し入れがあったそうな。
「ルーク、やっぱり無理しなくていいのよ?」
不安にかられルークの前から離れようとするが、ルークがそれを止めた。
「無理なんかしてないよ。オレは大丈夫」
「でも……」
にこりと、いつもの微笑みを見せてくれようとするがその表情は少し堅い。今のルークは私の従者であり、私に仕えていなければ死刑になるかもしれない身だ。私から申し出られたら断りたくても断れないのだろう。でも、どうしてもルークにお願いしたかったのだ。
「……わかってるの、本当は無理を言ってるって。でも、私……初めてで。最初の人はルークにお願いしたくて……」
羞恥心もあり頬に熱が集まるのを感じる。この年齢で初めてなんてルークはどう思うだろうか?しかし前世でもろくに経験のなかった私はやはり初めてを最推しに捧げたかった。
「嬉しいよ、御主人様。御主人様の初めてなら全部欲しい。だからーーーー」
ルークが私に向かって手を伸ばす。私はこくんと頷き、それに従った。
「ルークに食べて欲しくて、生まれて初めて作った手料理……召し上がれ!」
ルークの目の前には料理長がドン!と置いた大きな鍋がその存在感を猛烈にアピールしている。蓋はすでに開いていて中からは湯気が漂っているのだが……その湯気はなんとも言えない色をしていた。
「「「……!」」」
なぜかその場にいたルークの周りの使用人たちが一斉に息を飲み込む。見た目もそうだが、匂いもなんだか違う気がするし……やはり乙女ゲームの世界だから仕様が違うのだろうか?しかし私達が普段食べてる食事は普通なのに、なぜ私が作ったらこんなことになるのか……不思議である。
「シチューを作ってみたんだけど、なぜか途中から色が変わってきてしまって……」
「おぉう、これは……。お、美味しそうだよ!いただきます!」
そうしてルークは一気にそのシチューを食べてくれたのだった。
あのパーティーから数日。私はルークにあのドレスのお礼がしたいと頭を悩ませていた。乳母たちに相談してみると「(ルーク様なら)手作りのものが喜ばれるのでは?」と言われてチャレンジしてみる事にしたのである。
しかし、私は前世も含めてものすごく不器用だ。刺繍やレース編みなんて逆立ちしても出来なくてどうしたものかと思っていたら、それなら手料理ならどうか?と料理長が簡単な料理を教えてくれる事になったのだ。
もちろん料理も初めての経験だった。じゃがいもってあんなにゴツゴツしているのに、皮を剥くと立方体になるんだもの。不思議だわ……。ちなみに前世では包丁を握って大惨事になった事があり母親に“台所立入禁止“にされた経験がある。しかし、転生して女子力スキルも上がってるはず!と果敢に挑戦してみたのだが、やはり悪役令嬢には料理スキルは備わってなかったようなのだ。
それにしても……なんでホワイトシチューを作ったのに、色がヴァイオレットになるのかしら?自分で味見もしてみたがそこまで変な味もしなかったのでちゃんとシチューのはずなのだが。
「見た目はちょっとアレだけど、味は大丈夫だと思うの!変な物は入れてないし……」
逆に変なものを入れてないのにこの色になるのがミステリーとも言えるのだが、初めて作った料理をルークが食べてくれてるのが嬉しくて私はそこまで考えていなかった。
「でもやっぱり量が多かったわね。ルークも食べてくれたし、残りはお父様やみんなにも……」
まだ半分以上残っているシチューを見て、やはり作りすぎたと反省した。さすがにこれを全部ルークに食べろと言うのは無理があるだろう。そう思って鍋を下げようとするがルークの手が私の手を優しく握ってそれを止める。
「……ダメだよ御主人様、これは全部オレのだからね。誰にもあげないよ」
「ルーク……、そんなにこのシチューが気に入ってくれての?」
「こんなに美味しいシチューを食べたのは生まれて初めてだよ」
こうしてルークはシチューを全て平らげ(涙目)、なぜか屋敷の全使用人たちから尊敬の念を向けられる事になったのだった。
***
「ルーク様が自分を犠牲にされて、我々使用人を守ってくださったんだ!」
「まさかお嬢様の料理があんな……でもどんな味かちょっと興味あるかも」
「馬鹿野郎!治癒師であるルーク様ですら完食した後にしばらく寝込んでたんだぞ?!なんでも毒物ではないから治癒出来なかったらしいとか」
「気にはなるけど、完食は無理だよなぁ……」
「お嬢様には申し訳ないけど、火からおろしてるのにボコボコとガスを噴き出しててまるで毒沼に潜む魔物みたいにしか見えなかったよ……紫色してたし」
「鍋いっぱいのあれを完食したルーク様は勇者だぜ」
「愛の力ってすごいんだなぁ。俺、感動した」
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