【完結】ヒロインはラスボスがお好き

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もしかしなくても、もしかして

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朝。目が覚めると、とんでもない状況になっていた。

 ①ベットで。②私が裸で(いや、下着はつけてたけど)。③上半身裸のセバスチャンが横にいた。もうこれ、絶対テストでるから!なくらいポイントだし!

 さらに、なぜかその上半身裸(ここ重要)のセバスチャンに腕枕で抱き締められながらベット(ここも重要)に寝てて、セバスチャンのひんやりした体温が気持ちよくて、細いのにけっこうガッシリしてるなーとか、なんだかいい匂いがするなーとか……。

 いやいやいやいや、まてまてまてまて、とにかくこの状況がまったくなんなのかわからない。

「せ、せば、せば、せばす、す、す、す、」

 混乱と緊張で舌がうまく回らない。もしかして、もしかしなくても、もしかしたのだろうか?!

 ただ私には昨晩の記憶がまったく無い。何て、もったいない!セバスチャンのあれやこれやを見てたかも知れないのに!そして、そのあれやこれやを想像してオーバーヒートしそうになった。

 ひょえええぇぇぇえ!

『んー……?なんだ、もう朝か……』

 上半身裸(重要なので三回言いました)のセバスチャンが身動ぎして目を覚ました。その瞳は紅く輝いていて、唇の端からは牙がのぞいている。そこにいたのはセバスチャンではなく、本来の吸血鬼様の姿だったのだ。

 私の顔を見てフッと笑う吸血鬼様。少し気だるそうに前髪をかきあげるその仕草に、もしもカメラがあればシャッターを押しまくるところだ。

『……熱は下がったようだな。だが今日はもう1日寝ておけ、まだ体力が回復するのに時間がかかるはずだ』

「は。はひ…………」

 思わず頬が熱くなるが、また抱き締められてその胸に顔を埋める。ひんやりした体温が心地よかった。

『俺様はまだ眠い……』

 うわぁぁぁぁぁ、うわぁぁぉぁ!

 もう心の叫びが止まらない。こんな状態で眠れるはずもなく、私は金縛りにあったかのように固まりながら吸血鬼様の腕の中で半日を過ごしたのだった。








******







『……だから、お前が期待するようなことなど何も無かったと言っているだろう』

 やっと起きた吸血鬼様は私を解放したあと、めんどくさそうに説明をする。私はとりあえず毛布をぐるぐる巻きにして、たぶん期待に満ちた顔で吸血鬼様に迫っていた。

「だって、だって!あの状況だけみたら、もしかしたら、もしかして、もしかしなくても、もしかするかもと思っちゃうし!」

『アイリの熱が下がらなかったのは昔かけた祝福の力が低下していたからだったんだ。だから祝福の力を強めるためには肌を合わせてゆっくり回復させるしか無かったと言っているだろう。
 服を脱がせたのは肌を密着させて回復を促進させるためだけであって他意は無い。それとも――――』

 吸血鬼様が、くいっと私の顎をつまむ。

『手っ取り早く交わった方がよかったか?』

 吸血鬼の体液には治癒効果がある。血液なら回復能力つきの吸血鬼を作れるし、唾液や汗、涙でもゆっくりだが治癒できるわけで。
 まじっ、まじっ、ほにゃららしちゃえば色々と、もっと早く回復しちゃうということだ。

「そ、それは、もしかしなくても、もしかしてとか、」

『だから、もしかしてなどいないと言ってる。だいたい、そんな水玉レースの下着じゃ男を誘うのは難しいな』

 フンッと、小馬鹿にしたようにいい放つが吸血鬼様の手つきは優しく私の頭を撫でた。

 紅い宝石のような瞳がまっすぐ私を見つめる。その瞳に吸い込まれそうになり、下がったはずの熱がまた上がった気がして私の意識は遠のいたのだった。






*****





「お目覚めですか、アイリ様」

 ハッと気がつくとちゃんと人間に擬態したセバスチャンがきちんと執事服を着て、私に水の入ったコップを手渡した。

「たくさん汗をかかれていましたから、水分をお取りください」

「う、うん。ありがとう……」

 いつも通り執事スマイルのセバスチャンを確認し、私はまた混乱する。

 あれ?私、寝てた?さっきまでのは夢?上半身裸の吸血鬼様は夢の産物??私の願望???

 しかし水を飲みながら違和感に気づく。私は下着姿のまま毛布をぐるぐる巻きにした状態だったのだ。

 私がそっとセバスチャンを見ると、セバスチャンはにっこりと、だけどいじわるな笑みを浮かべる。

「私にもしかして欲しいなら、せめて水玉模様はやめておいて下さい」

 夢じゃなかった……!!!

「せ、セバスチャン……」

「なんでしょう?」

「匂いを嗅いでもいい?」

 これが夢でないという確定が欲しくて思わずそう聞くと、びちゃっ!と顔に濡れたタオルが叩きつけられてしまった。

「まだ熱があるみたいですね?馬鹿は風邪を引かないはずなのに、風邪を引いてしまう馬鹿はどれだけ馬鹿なんでしょうね?」

 セバスチャンがいつもの毒舌執事だったのは言うまでもない。







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