【完結】ヒロインはラスボスがお好き

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執事の憂鬱(セバスチャン視点)

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    私の名前はセバスチャン。アイリ様に名付けられた、アイリ様だけの執事です。その正体は古代種族である吸血鬼ですが。

 しかし吸血鬼特有の牙と紅い瞳は人間とは異なる姿だったので、牙を隠し紅い瞳を黒く変え、人間の男の姿に擬態しました。
 この姿ならば、どこにでもいるようなただの平凡な人間と変わらないので特に目立つこともないでしょう。

 アイリ様はそれはそれは……なんというかお転婆?破天荒?型破り?……とにかく私の知ってる人間の娘とは違う気がしました。

 まぁ、私の人間に対する知識も古いので通用しない方がいてもしょうがないかもしれませんね。何せしばらく一人きりで森にひきこもっ……いえ、一人の生活を満喫していましたので人間とはあまり関わらない生活をしていましたから。

 それにしても、吸血鬼である私を脅迫してきた人間など長い吸血鬼生で初めてです。……剥製にするとか、ペットになって欲しいとか、結婚してくれとか。
 いえ、観賞用のペットがイチオシのようでしたね。
 吸血鬼を飼うなんて、正気の沙汰ではないとしか思えません。
もちろんペットも剥製も却下しましたが。
 なぜそんなに残念そうな顔をするのか……と思うくらい残念だ。と顔に書いてありました。はるか昔に逆にペットになりたいと言われたことならありましたけどね?
 とにかく、最初は変な規格外の人間だとしか思えませんでした。

 まぁ、それでも退屈しのぎにはなるかと思いましたし、なにより私の秘密をなぜか知っていたのでその秘密を漏らさない約束で1年間執事になる契約をしました。1年間だけですから、人間の世界を存分に楽しもうと思います。

 アイリ様と初めて出会ったのは、アイリ様がもっと幼い時でした。
 嵐の夜に気まぐれに散歩に行き、たまたま土砂に流されて死にかけていた人間の子供を見つけたのです。なんとなく気になって拾ってみたら、もう命の灯火は消えかかっていました。このまま捨てようかと思ったのですが、その時幼いアイリ様が私の指をきゅっと握ったのです。
 無意識だったのでしょうが、確かにそこに生きたいという願望を感じました。そしてなぜか、この子供を助けなければいけない気がして思わずその首筋に牙をたてたのでした。

 この子供に祝福を。

 吸血鬼の祝福には傷を癒しその者を守る力があります。しかし、祝福には副作用のように呪いがかかってしまいます。うっかりしてました。
 この牙の傷痕は祝福の証であり、呪われた印です。でも私はこの子供を獲物にするつもりも呪いの成就で吸血鬼にするつもりにもなれませんでした。
 私は嵐が止んだのを確認してから、1番近い家の前に子供を置いて立ち去りました。その帰り道、怪しげな男たちが「嵐のせいで、子供を売り損ねた」「あのピンクゴールドの髪なら高値で売れたのにもったいない」と言っているのが聞こえて、あの子供をあんな目に合わせたのはこの人間たちかと思いムカついて殺してしまいました。
 血は吸ってませんよ?不味そうでしたので。あの子供の血を吸ったおかげか力が溢れていたので色々できた。とだけいっておきます。
 それにしてもあの子供の血は極上でした。あんなに素晴らしい血は初めての衝撃を私に与えましたね。
 でももうあの子供には近寄りません。離れていても祝福の力は続くし、近寄らなければ呪いの成就もなり得ないのだから。と、思っていたのですが。
 あの子供……アイリ様は自らその吸血鬼に近寄ってきたのです。こっちの気も知らずに呑気ですね。

 それからアイリ様の執事として色々とこなしました。執事がどういったものかという予備知識はありましたので、特に困ることはありませんでした。
 アイリ様は見ていて面白かったので、退屈はしませんね。私をペットにしたいというわりには、私がちょっと触れたりからかってみたりしただけで一喜一憂して鼻血を出して倒れたりします。面白くてついついからかいすぎてしまいました。
 でもペットはもちろん結婚もするつもりは無いのでその辺はお断りします。

 学園というのはめんどくさい所だと思いました。そして、アイリ様の周りに人間の男がたくさんうろつくようになりました。
 湧いて出たと思った瞬間アイリ様に触れようとした人間の男には思わず回し蹴りをしてしまいました。

 ……なぜかムカついたので。

 そしてそんな男どもは1匹ならず、どんどん増えました。全部退治しましたが。

 ……やっぱりムカついたので。

 何て言うことでしょう、まさかの妖精王にまで目をつけられていたなんて。あれは1度難癖つけられたらしつこいって有名なんですよ。めんどくさい奴に目をつけられてしまいましたね。
 しかも妖精王ならアイリ様に吸血鬼の加護がついてることもわかってるはずなのにわざわざこんな種まで仕込んで……売られた喧嘩は買いますよ。

 ムカついたので。

 アイリ様の弱った祝福の力を強める為に吸血鬼の姿に戻り、素肌を合わせました。吸血鬼の汗にも治癒力はありますから、ゆっくり回復するはずです。
 それだけで目的はすむはずだったのに、首筋に残る自分が昔つけた傷痕をみていたら……。

 1年間は私はアイリ様の執事。ということは、アイリ様は1年間は私の物ですよね?
 自分の物に自分の印をつけるのは当たり前でしょう?牙は立てません。アイリ様は見ていて面白いからお気に入りなだけです。
1年間だけの退屈しのぎの私の大切な玩具……。
 でもその玩具を誰かに取られるのは無性に嫌だったので、赤い印をつけてしまいました。
 マーキングって大事ですよね?

 それからもアイリ様の周りには害虫がまとわりつきます。害虫駆除も大変です。

 せっかく人間としてアイリ様とダンスを楽しんでいたのに、とうとう妖精王が乗り込んできました。空気が読めませんね。
 なんだかよくわからないことをペラペラと喋っていますが、純潔。という単語にアイリ様が食いつきました。
 そんなもの奪ってません。ちゃんと交わらずに自然治癒を促したのに、そんなことしてたら一瞬で治ってましたよ?あまりに鬱陶しいのでエネルギーを全部吸いとってやりました。
 くそ不味かったです。

 さらに胸焼けしそうな妖精の女にすり寄られて胸まで掴まらされて、不快しかありませんでしたね。
 え?吸血鬼モードの時のことまで、なんで執事モードで語っているかって?それは……吸血鬼モードの私は口が悪いらしくて、機嫌の悪い時の言葉使いはとてもじゃないけど人様に聞かせられる言葉ではない……と、コウモリのナイトに言われたからです。
 あのコウモリは、私の眷属でありしもべのはずなのにやたらと口うるさいんですよ。
 まぁ、別に嫌では無いのでいいですけどね。

 しかし、その妖精の女が私にべったりしてきてた時のアイリ様の表情がなんというか……ものすごく変な顔だったので、モヤモヤしました。
 アイリ様はいつものように笑って、困って、恥ずかしがって、鼻血でも出してればいいのです。

 長い吸血鬼生で最も汚点を残しました。あの妖精王のせいです。
 くそ不味い上に消化不良を起こして、さらには食中毒。分解吸収するのにこんなに力を使うとは予定外でした。
 力の使いすぎで冬眠モードになるなんて、一生の不覚です。さらにはアイリ様の血の味に本能のままその血を求めて獲物扱いするなんて……。
 ナイトが私を止めてくれて本当に助かりました。私を本気で叱ってくれるしもべはナイトだけですね。
 でもアイリ様の血の味は、昔あの時の味よりさらに極上の旨さになっていました。
 あれは、……虜になる味です。

 それからというもの、アイリ様がなにかする度に変な感じになります。アイリ様に他の男が近づくと今まで以上にムカつきました。
 この間はナイトが寝言でなんかサラッと色々暴露してくれてましたが、アイリ様にはコウモリの言葉はわからないのでよかったと心底思います。

 それにしても、最近アイリ様が肌を出しすぎな気がします。腕も足も出しすぎです。跳び跳ねるからヘソがチラ見えしてしまってるではないですか。
 ルチア様はまだいいとして、あの害虫どもに見せたくありませんね。
 彼シャツ?なにする気ですか?もしかして私のシャツを素肌に着たいとか企んでますか?そんな姿になってどうする気ですか。
もちろん断固拒否しました。
 でも拗ねてルチア様の部屋に行くといわれ、大きら……大嫌い?!
 なんてことを言うんでしょうね。私のことをペットにしたいんじゃなかったんですか?

 大嫌いなんてそんなの……なんかムカつきます。ムカついたので、アイリ様をベッドに転がし自分のシャツを脱いで投げつけてやりました。
 ひと言耳元で囁いてやれば、ほらいつも通りです。また鼻血を流して……もったいない。
 一応こっちは我慢してるんですから、あんまり血を無駄にしないでもらいたいものです。夏用の寝巻きから首筋もヘソも太ももも見えていますよ。風邪ひいたらどうするんです?

 いえ、祝福があるからひきませんが。シャツは……しっかり抱き締められてて離してくれそうにありませんでした。たかがシャツ1枚でなぜそんな顔になるのか理解に苦しみます。
 でも、普段の下手な誘惑よりもこの顔の方がずっと見ていて飽きませんけどね。

 なぜでしょう。私が一仕事して帰ってきたらアイリ様が紐を着ようとしてました。え?水着?それはルチア様が着るから水着になるのであって、アイリ様が着たらただの卑猥な紐です。そんなもの着るなんて許すはずないでしょう。
 やっと紐を諦めさせたのに、今度は下着姿になってました。せっかく後ろから話してたのに、なんでこっちを向くんですか?振り向きながらスカートが脱げるってどこの大道芸ですか?
 白いレースの下着に包まれた程よい膨らみも、腰のラインも、そのヘソもちゃんと隠してくれないと困ります。
 ……よくわからないけど困ります。
 とりあえずアイリ様に服を着るのと鍵を閉めるように念押ししました。
 どうもアイリ様にはため息ばかり出ますね。ただもしあの姿を他の害虫に見られたらと思ったらイライラしてしまい、たまたまいた害虫王子どもに八つ当たりしてしまいました。
 そもそもこの害虫どもがアイリ様に近づくから私の苦労が増えるんです。
 だからこれはやっぱり八つ当たりじゃないですね。ついでに大急ぎでもうひとつの仕事を終わらせます。これのせいでアイリ様の側から離れなくてはいけなくなったんですからね。

 やっと仕事を終わらせ、アイリ様の元へ駆けつけます。ナイトのおかげでギリギリセーフです。いえ、触られてしまったからアウトでしょうか?
 ちゃんと除菌消毒しなくては。

 それにしても大変でした。たくさんの女生徒や恐喝された生徒を一人ずつまわり証言を貰い、それをまとめて隣国へ行き、王家をきょうは……脅迫して、ついでに筋肉自慢共を小指で倒してねじ伏せて…………等々。
 あの筋肉だらけの国はなんなんでしょうね?老若男女すべて筋肉でした。とりあえずもう二度といきたくありません。
 でもこれでやっと、あの目障りな筋肉を追い出せました。さて、あとはアイリ様にふさわしい水着でも選びましょうか。できれば、イライラもモヤモヤもしない水着がいいんですけどね。

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