45 / 58
初デートとファーストキス?
しおりを挟む
夕焼けで海がオレンジ色に染まっている。その砂浜をふたつの影が寄り添って歩いていた。
私はセバスチャンと腕を絡め、ゆっくりと砂に足跡を残す。
このプライベートビーチはかなり広い上に、ルーちゃん専用らしいのでほかに人は誰もいない。
ルーちゃんも「別荘で待ってますから、ご自分の想いをぶつけてきてください」と応援してくれた。
あぁ、でも念願の初デート。こうやってふたりきりで腕を組んで歩くなんて夢のようだ。
「……歩いているだけなのに、ずいぶん楽しそうですね?」
私の口元がニマニマしてたせいか、セバスチャンが呆れたように聞いてくる。
「だってうれしいの!私、初デートは吸血鬼様とって決めてたのよ」
「私は、デートとはなにをするものかよくわかりません」
「なんでもいいのよ。デートしてるって思えばデートなの」
「……人間は難しいですね」
「こうゆうのは乙女心っていうのよ」
セバスチャンはなんだか難しそうな顔をした。
「私の初恋は吸血鬼様なんだから」
「……初耳です」
「あら、ずっと言ってるじゃない!剥製にしたいと思ったのも、ペットにしたいと思ったのも、結婚したいと思ったのも吸血鬼様だけよ?
だから初デートの夢も叶ったわ」
私がセバスチャンの腕から手を離し、くるりと弧を描く。
「私が初めて愛したのは吸血鬼様。そして死ぬまで愛するのも吸血鬼様。……だから、私のすべての初めては吸血鬼様って決めてるの」
「……」
セバスチャンは足を止め、黙ったまま私を見た。
「……ひとつ、聞いてもいい?」
「…………なんでしょう」
「今日の私は、ちょっとは可愛い?」
私が首を傾げて聞くと、セバスチャンは何も言わず、私に近づきそっと肩を抱き締めてくる。
「……!」
「……肌を露出しすぎです」
「今は、セバスチャンしかいないよ……」
私はセバスチャンの胸に頬を擦り寄せ、そのひんやりした体温を感じた。
「あなたは不思議な人間だ。私もあなたに出会ってから初めての感情ばかりでした。イライラして、モヤモヤして、ムカつくことばかりです」
それって、いいことなの?セバスチャンがモヤモヤしてたなんてそれこそ初耳だ。
「私は……いえ、――――俺様は』
声の変化にセバスチャンを見上げると、いつもの黒曜石のような瞳が紅く変化しその唇の端から牙が覗いていた。
「……吸血鬼様」
『……こんな色々な感情を初めて知った気がする。ならば、アイリも俺様の初めての相手だな』
吸血鬼様の指先が私の頬に触れる。
「吸血鬼様、私……」
『いつも、ペットだ結婚だと言っているが、その意味が本当にわかっているのか?俺様は人間じゃない。永遠に一緒にいるなど無理なことだ。
俺様はお前を吸血鬼の仲間にするつもりは無いし、糧を得るための獲物にするつもりもない』
「……私の真の願いが叶うのなら、そんなこと些細なことです」
吸血鬼様の紅い瞳。それはいつも私を虜にする。この瞳が曇ることなく輝き続けるなら、私は……。
『お前の真の願いとはなんだ?』
「あら、それは内緒です。乙女って、いろんな秘密を持ってる方が魅力的でしょ?」
『それは、この契約の1年で叶えられるのか?』
「……叶えて見せます」
私は再び吸血鬼様の胸に顔を埋め、小さく深呼吸をする。今日のデートの1番の目的を果たすために!
「あ、あの……吸血鬼様に聞きたいことが」
『……なんだ』
「あの海で、人魚に……その、か、かみちゅかれっ」
舌がもつれて変な発音が出てしまった。
「……そ、そのときの、あれが、そのっ……」
ダメだ。聞きたかったことがまったく伝えられない。恥ずかしくなってきて顔が熱いし、たぶん真っ赤になってるだろう。
「あ、あの……っ」
『――――あのときの』
吸血鬼様の手が私の頬に添えられ、上を向かされた。
『魚類に噛まれた傷は全部治ったな?』
「……はい」
『ここも』
私の唇の上に吸血鬼様の指先が滑る。
「!吸血鬼様、私、私……。やっぱり初めてのキスは吸血鬼様がいいです……!
あのときしてくれたのは、キ、キスに入りますか……?!」
『……あれは、魚類に噛まれた傷を治しただけだ。それに、俺様はまだお前のペットにも夫にもなるつもりはないぞ?』
「……それでも、初めてはあなたがいい」
夕焼けが沈み出し、暗い闇が舞い降りる。吸血鬼様の顔が少しづつ近づいて、私は目を閉じようとした……。
ザバァ――――ン!!!
唇が届くまであと1ミリ。吸血鬼様の吐息を間近に感じ、もうほぼ届いたかどうかという瀬戸際。
「「おのれ、執事!アイリから離れろ――――!」」
夜の海から現れたのは、ボロボロの服で海藻を頭から被ったびしょ濡れの双子王子だった。
『…………」
吸血鬼様は私から顔を離し、手のひらで自分の顔を覆うと瞬時に目の色を変え牙を消す。そして私の背中に手を添え、くるりと方向転換させた。
「アイリ様、夜風は体が冷えてしまいます。帰りましょう」
「う、……うん」
「「無視するな――――!」」
私のファーストキスのやり直しは、お預けのようである……。
私はセバスチャンと腕を絡め、ゆっくりと砂に足跡を残す。
このプライベートビーチはかなり広い上に、ルーちゃん専用らしいのでほかに人は誰もいない。
ルーちゃんも「別荘で待ってますから、ご自分の想いをぶつけてきてください」と応援してくれた。
あぁ、でも念願の初デート。こうやってふたりきりで腕を組んで歩くなんて夢のようだ。
「……歩いているだけなのに、ずいぶん楽しそうですね?」
私の口元がニマニマしてたせいか、セバスチャンが呆れたように聞いてくる。
「だってうれしいの!私、初デートは吸血鬼様とって決めてたのよ」
「私は、デートとはなにをするものかよくわかりません」
「なんでもいいのよ。デートしてるって思えばデートなの」
「……人間は難しいですね」
「こうゆうのは乙女心っていうのよ」
セバスチャンはなんだか難しそうな顔をした。
「私の初恋は吸血鬼様なんだから」
「……初耳です」
「あら、ずっと言ってるじゃない!剥製にしたいと思ったのも、ペットにしたいと思ったのも、結婚したいと思ったのも吸血鬼様だけよ?
だから初デートの夢も叶ったわ」
私がセバスチャンの腕から手を離し、くるりと弧を描く。
「私が初めて愛したのは吸血鬼様。そして死ぬまで愛するのも吸血鬼様。……だから、私のすべての初めては吸血鬼様って決めてるの」
「……」
セバスチャンは足を止め、黙ったまま私を見た。
「……ひとつ、聞いてもいい?」
「…………なんでしょう」
「今日の私は、ちょっとは可愛い?」
私が首を傾げて聞くと、セバスチャンは何も言わず、私に近づきそっと肩を抱き締めてくる。
「……!」
「……肌を露出しすぎです」
「今は、セバスチャンしかいないよ……」
私はセバスチャンの胸に頬を擦り寄せ、そのひんやりした体温を感じた。
「あなたは不思議な人間だ。私もあなたに出会ってから初めての感情ばかりでした。イライラして、モヤモヤして、ムカつくことばかりです」
それって、いいことなの?セバスチャンがモヤモヤしてたなんてそれこそ初耳だ。
「私は……いえ、――――俺様は』
声の変化にセバスチャンを見上げると、いつもの黒曜石のような瞳が紅く変化しその唇の端から牙が覗いていた。
「……吸血鬼様」
『……こんな色々な感情を初めて知った気がする。ならば、アイリも俺様の初めての相手だな』
吸血鬼様の指先が私の頬に触れる。
「吸血鬼様、私……」
『いつも、ペットだ結婚だと言っているが、その意味が本当にわかっているのか?俺様は人間じゃない。永遠に一緒にいるなど無理なことだ。
俺様はお前を吸血鬼の仲間にするつもりは無いし、糧を得るための獲物にするつもりもない』
「……私の真の願いが叶うのなら、そんなこと些細なことです」
吸血鬼様の紅い瞳。それはいつも私を虜にする。この瞳が曇ることなく輝き続けるなら、私は……。
『お前の真の願いとはなんだ?』
「あら、それは内緒です。乙女って、いろんな秘密を持ってる方が魅力的でしょ?」
『それは、この契約の1年で叶えられるのか?』
「……叶えて見せます」
私は再び吸血鬼様の胸に顔を埋め、小さく深呼吸をする。今日のデートの1番の目的を果たすために!
「あ、あの……吸血鬼様に聞きたいことが」
『……なんだ』
「あの海で、人魚に……その、か、かみちゅかれっ」
舌がもつれて変な発音が出てしまった。
「……そ、そのときの、あれが、そのっ……」
ダメだ。聞きたかったことがまったく伝えられない。恥ずかしくなってきて顔が熱いし、たぶん真っ赤になってるだろう。
「あ、あの……っ」
『――――あのときの』
吸血鬼様の手が私の頬に添えられ、上を向かされた。
『魚類に噛まれた傷は全部治ったな?』
「……はい」
『ここも』
私の唇の上に吸血鬼様の指先が滑る。
「!吸血鬼様、私、私……。やっぱり初めてのキスは吸血鬼様がいいです……!
あのときしてくれたのは、キ、キスに入りますか……?!」
『……あれは、魚類に噛まれた傷を治しただけだ。それに、俺様はまだお前のペットにも夫にもなるつもりはないぞ?』
「……それでも、初めてはあなたがいい」
夕焼けが沈み出し、暗い闇が舞い降りる。吸血鬼様の顔が少しづつ近づいて、私は目を閉じようとした……。
ザバァ――――ン!!!
唇が届くまであと1ミリ。吸血鬼様の吐息を間近に感じ、もうほぼ届いたかどうかという瀬戸際。
「「おのれ、執事!アイリから離れろ――――!」」
夜の海から現れたのは、ボロボロの服で海藻を頭から被ったびしょ濡れの双子王子だった。
『…………」
吸血鬼様は私から顔を離し、手のひらで自分の顔を覆うと瞬時に目の色を変え牙を消す。そして私の背中に手を添え、くるりと方向転換させた。
「アイリ様、夜風は体が冷えてしまいます。帰りましょう」
「う、……うん」
「「無視するな――――!」」
私のファーストキスのやり直しは、お預けのようである……。
5
あなたにおすすめの小説
乙女ゲームのヒロインに転生したのに、ストーリーが始まる前になぜかウチの従者が全部終わらせてたんですが
侑子
恋愛
十歳の時、自分が乙女ゲームのヒロインに転生していたと気づいたアリス。幼なじみで従者のジェイドと準備をしながら、ハッピーエンドを目指してゲームスタートの魔法学園入学までの日々を過ごす。
しかし、いざ入学してみれば、攻略対象たちはなぜか皆他の令嬢たちとラブラブで、アリスの入る隙間はこれっぽっちもない。
「どうして!? 一体どうしてなの~!?」
いつの間にか従者に外堀を埋められ、乙女ゲームが始まらないようにされていたヒロインのお話。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》
社畜の私は異世界でも社畜精神が残ったままだった
木嶋うめ香
恋愛
貴族学園の小さな部屋で、私は一人書類仕事に追われていた。
今日も寮には帰れそうにない、机の上には大量の未処理の書類。
せめて空腹を紛らわそうと、ビスケットを鞄から取り出し水を汲んでこようとして立ち上がった途端、視界が暗くなり倒れた。
床に倒れた反動で、頭を床にぶつける。
その衝撃で思い出した、私は前世ブラック企業に勤めていた社畜で、二十三連勤サービス残業付きの末、体調を崩し亡くなったアラサー営業職だった。
他サイトでもアップしています。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
気配消し令嬢の失敗
かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。
15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。
※王子は曾祖母コンです。
※ユリアは悪役令嬢ではありません。
※タグを少し修正しました。
初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる