やる気スイッチ

海月(くらげ)

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やる気スイッチ

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朝、10時過ぎ携帯の着信音が鳴り響く。
毎日の日課のようにこの時間だ。

「はい?おはよう」

「機嫌悪い?」

「いやー普通……今洗濯物干してる……」

「今日良い天気だもんねー」

「それより今日は何?」

確か昨日は、お昼何食べようだったような?

私も、彼女も結婚している。言わば専業主婦なのだ。

旦那を仕事へ送り出し、掃除洗濯をした後ちょっと暇な時間帯。
LINE電話を繋げていると言う状態である。

「別に何もないよー(笑)やる気スイッチが入らなくてさー助けてよ!」

あーそれか……

3日に1度は、やる気スイッチクレーというお決まりなやつだ。

「ポチッと押してよ!」

洗濯物を干しながら
数秒考える。
いや……毎回考える
そもそも「やる気スイッチ」とやらは、どこにあるんだろ?
私に求められても彼女のやる気スイッチがどこにあるのか?
いや、自分のやる気スイッチさえ分からないのだから答えに困る。

「毎回聞くけど、やる気スイッチってよくわかんないだよね。私と話してて出るわけ?」

「いやーちゃんと家事こなしてるやん?今なら洗濯干してるとかさーリアルな時間にやってるの聞いたら、あーやんなきゃなーとかおもえるわけよ」

「つまり、一緒に何かしてる感じが良いのかな?」

「うーんどうだろうね?そんな時もあるし……無い時もある。今日は、聞いてもやる気ないんだよねー良い天気なのにさー」

マジやる気無しなんだろう。

「やる気スイッチってのがあると便利なのかな?」

「あー!それ欲しい!ON/OFFあったら便利だよねー」

「自分の体の一部にON/OFFのスイッチがつくんだよ?嫌じゃない?」

体の一部に、電気のスイッチが付いているのを想像してみた。
邪魔そうな気がする。
彼女も想像を膨らませたようだ。

「うーん邪魔そうだよね。邪魔にならない様な所ないかなぁ?」

真剣に考え始めたようだった。
やる気スイッチと言う物が無いのに真剣に考える彼女に可笑しさが込み上げる。思わず

「ぷぷ-ッ」と、吹き出してしまった。

「何よー真剣に考えてるのに!」

「いやーゴメンゴメン!」

真剣に考え出すと、彼女は無口になる。こりゃ話しにならないなと思い

「ちょっと買い物してくるわ。またねー」

「うん……わかった切るわ……」

私にLINE電話してきた本人は、うわの空である。
多分想像の世界で楽しんでいるのだ。そっとしておくべきだ。

買い物から帰って来ると彼女からLINEが届いていた。
彼女の腕の写真だ。
なんだ?これ?
腕時計のようにON/OFFのスイッチがついている。
どうやら、この短時間で腕ON/OFFベルトを作ったようだった。
彼女は昔から器用だからなせる技だと感心する。
感心して見ていると又写真が送られてきた。
腕ON/OFFは、ON!の映像
次送られてきたのはニコニコ笑いながら掃除機を持っている自撮り写真

「おー!やる気スイッチなかなかやるやんwww」

しばらくするとまたLINEが鳴った。

なんだろ?
腕ON/OFFのスイッチがOFFの写真だった。
やる気ない自撮り写真が間髪なく来たwww

ON/OFF無くていいんじゃない?とは思ったが、彼女は気にいっているようだから、スルーしよう。

しかし、彼女はわかっているのだろうか?
やる気スイッチが欲しいと思いだした時から彼女のやる気スイッチはONになっていたことを……

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