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五章 那伽羅闍の落胤
那伽羅闍の烙印
小茶彪は全身の筋肉が弛緩したように唐突に膝をついた。
まさか、という驚きと違和感を確かめるように震える手で額に触れる。
開眼された第三の眼は――小茶彪の意思とは無関係に――さわさわとぎこちなく眼球に触れる指を厭わしげに何度も瞬きをした。
――やったぞ! 開眼だ! 覚醒した!
――小茶彪! 大丈夫なの!?
耳に届く言葉は、意味を結ぶ前にゲシュタルト崩壊を起こし、それはただの喧騒となって耳鳴りの余韻を残した。
急速に縮む世界の中で高密度に圧縮された閉塞的な空間に押し込められる感覚に、溺れるような錯覚を起こした。
肺から空気が抜けていく。
小茶彪は思わず喘いだ。
現在がいつで、ここがどこで、自分が誰で、今何をしているのか……
引き潮のように意識が遠のいたのも束の間、意識は同じ速さで元の場所へ押し戻された。
――いや、待て。
――あの男……いったい何をしたんだった?
ルクレツィアは膝をつきぐらぐらと揺れる小茶彪へと駆け寄ると、その肩を支え、顔を覗き込んだ。
両目をきつく閉じている小茶彪は、額にある開眼された第三の眼で彼女を見た。
生まれたばかりの第三の眼で見る彼女の姿は、うまく像を結べない不安定な可視の世界で分厚い水の膜を通して見るようにぼやけて見えた。
視界とは裏腹に、その瞳は意志を持つかのように忙しなく動き、今にも言葉を発するのではないかと不安になるほど生気に満ち溢れている。
ルクレツィアは息をするのも忘れるほど驚いた。
屍体を含む敵味方の大半が石と化した戦場を見て、そして小茶彪へと視線を戻すと、再び戦場を見た。
辛うじて石化を免れた者たちは、戦うのも忘れてただうろたえ、混乱し、誰かの指示を待つかのように右往左往している。
ルクレツィアは力なく首を左右に振った。
「小茶彪……これがあなたの能力なの?」
「第三の眼はおれたち那伽羅闍の魂の窓だ」
ルクレツィアの疑問に答えるように尒天彪は話し出した。
「今、おまえの脳裏には血族の古の記憶が走馬燈のように蘇っている。それを血肉へ取り込んだとき、おまえはおれと共に我が血族の軌跡の先駆者となる。おれの言ったことが間違いじゃないと今ならわかるはずだ」
「今在る……全ての……ものが、滑稽に思える……」
小茶彪は重い甲冑の胸当を億劫そうに脱ぎながら何かに取り憑かれたように切れ切れに言葉を吐いた。
「そうだ! おれたち崇高な亜人種である那伽羅闍の血を継ぐものが、下等な人間の支配を受けるべきではない。おれたちは生態系の頂点となるべき存在なんだ」
尒天彪は息巻いた。
「信じられない……」
鎧を脱いだ小茶彪は傍に落ちている服に着替えながら、孤影悄然たる面持ちで呟いた。
「今はまだ、な。だがじきに真実だと納得する。おれも最初はそうだった。激しく動揺した次の瞬間には人間に対する怒りに身体が支配された。手始めにおれを虐げていたやつらを地獄へ送ってやった」
「あの男……、やっぱり狂ってる……!」
尒天彪は怪訝な面持ちで小茶彪の背中を見つめた。
小茶彪は立ち上がり、腰に巻いたサッシュベルトをきつく縛ると、さっと振り返って自身の異母兄、尒天彪と真正面から向き合った。
「味方を……ネスタロフ小隊長の首を躊躇なく刎ねるとは……。やはりあの男は頭がおかしい。おかげで開眼してしまったじゃないか、くそ!」
尒天彪は微動だにせず覚醒された小茶彪の姿を上から下までゆっくりと眺めた。
そこに自分の姿を見たかのような喜ばしい驚きに全身に力が入った。
二人は……那伽羅闍の秘史の烙印を魂の眼に刻む同胞として、まるで双子のように互いに相似していた。
「さあ、一緒に来るんだ」
尒天彪は合図を送るように片手を上げかけた。
「いやだね。悪いがおれはおまえとは行けない。おれにはおれのやりたいことがある」
上げかけた手を下ろす。
まさか……。
尒天彪はわずかに怯んだ。
覚醒し開眼したにもかかわらず志同じでないことは晴天の霹靂としか思えない誤算だった。
しかし、尒天彪は「そうか」と、内心の動揺を微塵も感じさせぬ、ただ静かで抑揚のない声音で返事をした。
その瞬間、傍に立っていたはずのルクレツィアが瞬きの間に、尒天彪の腕の中に移動していた。
小茶彪は瞬時に剣を拾い、身構えた。
尒天彪は背後からルクレツィアの首と上腕をがっちりつかんで彼女を盾にした。
「彼女をはなせ」
「おまえ次第だ。一緒に来ないならこの女だけでも連れて行く。那伽羅闍の男児を生ませるために」
その言葉に、小茶彪の第三の眼――小刻みに震える赤い瞳孔を持った金色に輝く瞳――が燃えるように光った。
「いや……!」
ルクレツィアは身をよじって抵抗したがぴくりとも動けなかった。
「男児を産ませるのに、おれにとって、なにもこの女でなければならないこともない。わかるだろ? おまえがおれと一緒に来るのなら、この……」
尒天彪はルクレツィアに一瞥をくれると「おまえの愛する婚約者を解放してやる」と続けた。
尒天彪の額にある瞳は、“こんな女のどこがいいんだ”と言いたげにくるっと目を回して見せた。
わずかな沈黙の静けさのあと、小茶彪はポイッと剣を投げ捨て構えを解くと、尒天彪へ手を差し伸べた。
「よし、わかった。おれが行くから彼女をはなせ」
「いい子だ。兄の言うことには従うべきだよ」
内心の安堵を気取られぬよう慎重に答えると、尒天彪は小茶彪の手を取り、同時にルクレツィアを突き飛ばした。
粘土質の地に足を取られ、派手に転んだルクレツィアは手に手を取り合う二人をただ呆然と見上げた。
二人の背後の泥炭の地から一体のラビッシュ・ワームがマグマが地表へ噴出するように飛び出すと、口腔を空へ向け、蛇使いの笛の音に合わせて踊るように身をくねらせた。
尒天彪は気づいていなかった。
いや、気づいた時にはすでに遅かった。
この時、彼の那伽羅闍の烙印――第三の眼――の“操り”の能力がラビッシュ・ワームへと向けられていたために、高速で鬼気森然と迫り来る強烈な狂気を察知する有余がなかった。
「バカが。いつだって弟が従順だとは思わないことだよ。お兄ちゃん」
小茶彪がしゃがんだ瞬間、回転しながら飛んできた片刃の曲刀が尒天彪の脇腹を深く抉り、速度を落とさぬままブーメランのように旋回した。
尒天彪は脇腹を両手で押さえ、身体をくの字に曲げ、焼けるような痛みに堪らず片膝をついた。
蒼い光をまとい、鮮血を撒き散らしながら回転する片刃の曲刀の行方を眼で追う。
「悪鬼……」
額に縦に開いた赤い瞳孔を持った金色に輝く瞳が今、血濡れの片刃の曲刀を手にした真紅のローブコートをまとった長身の男をとらえる。
遠く闇の中でも、真紅に輝く瞳が射抜くようにこちらへ向けられていることが感じられた。
暗灰色の守護神グラファイトは闇に溶け込み姿こそ見えないが、その存在は、紫電をまとった黒塊の肢体からバーストしたプラズマの光を放っているため、いやでも主人の傍に控えていることが見てとれた。
もう一方の手に持つ片刃の曲刀を後方へ振りかぶる……
――――二投目が来る!
尒天彪はとっさに立ち上がると、地を蹴り高く跳躍し、ラビッシュ・ワームの口腔へと着地した。
どういうわけだかわからないが、片刃の曲刀は飛んでは来なかった。
尒天彪は、紅く光る二つの瞳に、蒼く光る双剣の片刃の曲刀をもった悪鬼羅刹と、その傍に控える紫電をまとった四大精霊を体現する崇高な存在へと視線を投げた。
そして、泥で汚れた紅いクロークを着た女と、その女を抱きしめるように支えている額に第三の眼を持つ半血の兄弟――自身の異母弟――へと視線を移した。
求める者を見つけ、我が意を得たりとばかりに狙い通りの結果を得られた。
途中までは……!
血を分けた弟が反目するとは想定外だった。
わずかな時間の間に、幸と不幸をほぼ同時に享受する羽目に陥るとは。
尒天彪は思わず笑い出したくなる衝動を押さえ、冷たく醒めた笑いを口角に湛えた。
そして、ローブの半分を鮮血にまみれさせた阿修羅のようなオーラを放つ血濡れの獣は覇者のごとく吠えた。
「小茶彪! 覚醒した今、おれたち那伽羅闍の使命をおまえもその血に刻んだはずだ! おれは必ず帰ってくる! どこへ隠れようとも必ず見つけ出し、そしておまえを連れて行く! おまえとその女との間に生まれた男児もな!」
尒天彪が叫び終えたと同時に、ラビッシュ・ワームはその巨躯を闇夜に高くそそり立たせると身を捻り、泥濘を水柱のように立てながら地中深く潜り去った。
まさか、という驚きと違和感を確かめるように震える手で額に触れる。
開眼された第三の眼は――小茶彪の意思とは無関係に――さわさわとぎこちなく眼球に触れる指を厭わしげに何度も瞬きをした。
――やったぞ! 開眼だ! 覚醒した!
――小茶彪! 大丈夫なの!?
耳に届く言葉は、意味を結ぶ前にゲシュタルト崩壊を起こし、それはただの喧騒となって耳鳴りの余韻を残した。
急速に縮む世界の中で高密度に圧縮された閉塞的な空間に押し込められる感覚に、溺れるような錯覚を起こした。
肺から空気が抜けていく。
小茶彪は思わず喘いだ。
現在がいつで、ここがどこで、自分が誰で、今何をしているのか……
引き潮のように意識が遠のいたのも束の間、意識は同じ速さで元の場所へ押し戻された。
――いや、待て。
――あの男……いったい何をしたんだった?
ルクレツィアは膝をつきぐらぐらと揺れる小茶彪へと駆け寄ると、その肩を支え、顔を覗き込んだ。
両目をきつく閉じている小茶彪は、額にある開眼された第三の眼で彼女を見た。
生まれたばかりの第三の眼で見る彼女の姿は、うまく像を結べない不安定な可視の世界で分厚い水の膜を通して見るようにぼやけて見えた。
視界とは裏腹に、その瞳は意志を持つかのように忙しなく動き、今にも言葉を発するのではないかと不安になるほど生気に満ち溢れている。
ルクレツィアは息をするのも忘れるほど驚いた。
屍体を含む敵味方の大半が石と化した戦場を見て、そして小茶彪へと視線を戻すと、再び戦場を見た。
辛うじて石化を免れた者たちは、戦うのも忘れてただうろたえ、混乱し、誰かの指示を待つかのように右往左往している。
ルクレツィアは力なく首を左右に振った。
「小茶彪……これがあなたの能力なの?」
「第三の眼はおれたち那伽羅闍の魂の窓だ」
ルクレツィアの疑問に答えるように尒天彪は話し出した。
「今、おまえの脳裏には血族の古の記憶が走馬燈のように蘇っている。それを血肉へ取り込んだとき、おまえはおれと共に我が血族の軌跡の先駆者となる。おれの言ったことが間違いじゃないと今ならわかるはずだ」
「今在る……全ての……ものが、滑稽に思える……」
小茶彪は重い甲冑の胸当を億劫そうに脱ぎながら何かに取り憑かれたように切れ切れに言葉を吐いた。
「そうだ! おれたち崇高な亜人種である那伽羅闍の血を継ぐものが、下等な人間の支配を受けるべきではない。おれたちは生態系の頂点となるべき存在なんだ」
尒天彪は息巻いた。
「信じられない……」
鎧を脱いだ小茶彪は傍に落ちている服に着替えながら、孤影悄然たる面持ちで呟いた。
「今はまだ、な。だがじきに真実だと納得する。おれも最初はそうだった。激しく動揺した次の瞬間には人間に対する怒りに身体が支配された。手始めにおれを虐げていたやつらを地獄へ送ってやった」
「あの男……、やっぱり狂ってる……!」
尒天彪は怪訝な面持ちで小茶彪の背中を見つめた。
小茶彪は立ち上がり、腰に巻いたサッシュベルトをきつく縛ると、さっと振り返って自身の異母兄、尒天彪と真正面から向き合った。
「味方を……ネスタロフ小隊長の首を躊躇なく刎ねるとは……。やはりあの男は頭がおかしい。おかげで開眼してしまったじゃないか、くそ!」
尒天彪は微動だにせず覚醒された小茶彪の姿を上から下までゆっくりと眺めた。
そこに自分の姿を見たかのような喜ばしい驚きに全身に力が入った。
二人は……那伽羅闍の秘史の烙印を魂の眼に刻む同胞として、まるで双子のように互いに相似していた。
「さあ、一緒に来るんだ」
尒天彪は合図を送るように片手を上げかけた。
「いやだね。悪いがおれはおまえとは行けない。おれにはおれのやりたいことがある」
上げかけた手を下ろす。
まさか……。
尒天彪はわずかに怯んだ。
覚醒し開眼したにもかかわらず志同じでないことは晴天の霹靂としか思えない誤算だった。
しかし、尒天彪は「そうか」と、内心の動揺を微塵も感じさせぬ、ただ静かで抑揚のない声音で返事をした。
その瞬間、傍に立っていたはずのルクレツィアが瞬きの間に、尒天彪の腕の中に移動していた。
小茶彪は瞬時に剣を拾い、身構えた。
尒天彪は背後からルクレツィアの首と上腕をがっちりつかんで彼女を盾にした。
「彼女をはなせ」
「おまえ次第だ。一緒に来ないならこの女だけでも連れて行く。那伽羅闍の男児を生ませるために」
その言葉に、小茶彪の第三の眼――小刻みに震える赤い瞳孔を持った金色に輝く瞳――が燃えるように光った。
「いや……!」
ルクレツィアは身をよじって抵抗したがぴくりとも動けなかった。
「男児を産ませるのに、おれにとって、なにもこの女でなければならないこともない。わかるだろ? おまえがおれと一緒に来るのなら、この……」
尒天彪はルクレツィアに一瞥をくれると「おまえの愛する婚約者を解放してやる」と続けた。
尒天彪の額にある瞳は、“こんな女のどこがいいんだ”と言いたげにくるっと目を回して見せた。
わずかな沈黙の静けさのあと、小茶彪はポイッと剣を投げ捨て構えを解くと、尒天彪へ手を差し伸べた。
「よし、わかった。おれが行くから彼女をはなせ」
「いい子だ。兄の言うことには従うべきだよ」
内心の安堵を気取られぬよう慎重に答えると、尒天彪は小茶彪の手を取り、同時にルクレツィアを突き飛ばした。
粘土質の地に足を取られ、派手に転んだルクレツィアは手に手を取り合う二人をただ呆然と見上げた。
二人の背後の泥炭の地から一体のラビッシュ・ワームがマグマが地表へ噴出するように飛び出すと、口腔を空へ向け、蛇使いの笛の音に合わせて踊るように身をくねらせた。
尒天彪は気づいていなかった。
いや、気づいた時にはすでに遅かった。
この時、彼の那伽羅闍の烙印――第三の眼――の“操り”の能力がラビッシュ・ワームへと向けられていたために、高速で鬼気森然と迫り来る強烈な狂気を察知する有余がなかった。
「バカが。いつだって弟が従順だとは思わないことだよ。お兄ちゃん」
小茶彪がしゃがんだ瞬間、回転しながら飛んできた片刃の曲刀が尒天彪の脇腹を深く抉り、速度を落とさぬままブーメランのように旋回した。
尒天彪は脇腹を両手で押さえ、身体をくの字に曲げ、焼けるような痛みに堪らず片膝をついた。
蒼い光をまとい、鮮血を撒き散らしながら回転する片刃の曲刀の行方を眼で追う。
「悪鬼……」
額に縦に開いた赤い瞳孔を持った金色に輝く瞳が今、血濡れの片刃の曲刀を手にした真紅のローブコートをまとった長身の男をとらえる。
遠く闇の中でも、真紅に輝く瞳が射抜くようにこちらへ向けられていることが感じられた。
暗灰色の守護神グラファイトは闇に溶け込み姿こそ見えないが、その存在は、紫電をまとった黒塊の肢体からバーストしたプラズマの光を放っているため、いやでも主人の傍に控えていることが見てとれた。
もう一方の手に持つ片刃の曲刀を後方へ振りかぶる……
――――二投目が来る!
尒天彪はとっさに立ち上がると、地を蹴り高く跳躍し、ラビッシュ・ワームの口腔へと着地した。
どういうわけだかわからないが、片刃の曲刀は飛んでは来なかった。
尒天彪は、紅く光る二つの瞳に、蒼く光る双剣の片刃の曲刀をもった悪鬼羅刹と、その傍に控える紫電をまとった四大精霊を体現する崇高な存在へと視線を投げた。
そして、泥で汚れた紅いクロークを着た女と、その女を抱きしめるように支えている額に第三の眼を持つ半血の兄弟――自身の異母弟――へと視線を移した。
求める者を見つけ、我が意を得たりとばかりに狙い通りの結果を得られた。
途中までは……!
血を分けた弟が反目するとは想定外だった。
わずかな時間の間に、幸と不幸をほぼ同時に享受する羽目に陥るとは。
尒天彪は思わず笑い出したくなる衝動を押さえ、冷たく醒めた笑いを口角に湛えた。
そして、ローブの半分を鮮血にまみれさせた阿修羅のようなオーラを放つ血濡れの獣は覇者のごとく吠えた。
「小茶彪! 覚醒した今、おれたち那伽羅闍の使命をおまえもその血に刻んだはずだ! おれは必ず帰ってくる! どこへ隠れようとも必ず見つけ出し、そしておまえを連れて行く! おまえとその女との間に生まれた男児もな!」
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