やり逃げ令嬢は逃げきれない。

玉菜

文字の大きさ
3 / 12

3:やり逃げします。※

しおりを挟む

***

「お、お前、何言ってんだ?」

こぼしたお茶を一緒に拭きながら、小声でぼそぼそと話す。

「理由は聞かずに、一回だけでいいからほんと……」
「やりたい盛りのガキみてぇな事言ってるぞ、お嬢様」
「うん、もうそれでいいからマジで」
「マジでじゃねぇよ……」

呆れながらも顔を赤くしてるリカルドを見て、あと一押し!と思う。

「リカルド、次の休みって、いつ?」
「え?次の土曜日?つっても、昼は演習あるけど」

これはチャンスだ!だって私は、金曜でお城を辞める。さくっと彼の前を去れるではないか。

「じゃ、金曜の夜にリカルドの部屋にそっと行くから」
「おいやめろ」
「そんなに嫌?私とするの」
「ぐ……」

その表情、どうやら嫌という訳ではないらしい。

「嫌じゃないなら、お願い。リカルドがダメなら、そこらへんで誰か引っ掛けようかと思ってて……」
「はあ?お前バカだろ!……。いいよ、わかった。でも寮はダメだ。街で待ち合わせて宿を使う」
「わかった!ありがとう!」

こうして私は期日までに全て終われるように、自分の寮の荷物を次の就職先の部屋へせっせと運び込んだ。あとは当日、決行するだけだ。

***

使った宿は、魔道具がいっぱいで少し面白い部屋だった。バスに一瞬でお湯が張れたりしたので、しばらく2人で色々と遊んでから、ベッドに入る。
リカルドは驚くほど優しく、丁寧に抱いてくれた。経験値のある相手にして正解だった、と思う。なにせこちらは初心者だ。

「狭そうだな……」

そう言いながらそっと指を入れてきたけど、異物感が半端なかった。自分の中に誰かの指があるという、不思議な感覚。

「痛くないか?」
「ん、違和感……」
「もうちょっと解すか」
「解す?」

そう言いながら、彼が脇腹や内腿に口付けると、その辺りからぞわぞわと快感のようなものが湧き上がる。腰を跳ねさせる様子を見て、胸の蕾にリカルドが噛み付いた。

「やっ」
「ここ固くなってる」
「んん……」

挿入された指と胸の刺激が、身体の中で繋がって溶けていく。それと同時に、聞こえる水音が大きくなった。甘やかな刺激に浮かされていると、いつしか中に入ってる指が増えていて。

「もういいかな……挿れるぞ」
「う、ん……」

ゆっくりと入ってくる塊は、痛いというより熱かった。そして意外にも、痛みを殆ど伴わずにそれは最後まで私を貫いた。ちょうどよく隙間に入った、らしい。

「すげ、絡みついて、気持ちい……」
「あ、ふ……」
「お前も、いい?」
「うん……」

正直、初めてなのに……とても気持ちが良かった。そのまま緩く抽送されて何度も達してしまう。リカルドも2回吐精して、果てた。きちんと避妊具をつけてくれた事は、正直良心的だったと思う。

「……ごめんね。面倒かけて」
「いや、いんだけどさ……すげぇ具合は良かったし」
「ほんと?」
「うん。一回だけとか、ちょっと惜しいな」

そう言いながら、雰囲気にのまれたのか、リカルドは私の額にキスをした。私にはそれがサヨナラのキスに思えた。
温かい身体に身を寄せると、眠気がやってくる。2人共、気疲れしてたのかもしれない。そうして、早朝。私はひっそりと、出奔した。

***

その足で一度実家のある領地へ帰り、結婚する気はないこと、純潔を失ったこと(相手は知らない人という事にした)、新しい仕事と家はもう見つけてあることを両親と兄に伝えると、皆んな唖然とし、そのまま呆れて諦められた。
仕事があるならいいだろう、と体よく見放してくれたのだ。こんなに上手くいくとは、まさにリカルド様様。

……何気にほんと、気持ちよかったしね。

***
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

硝子の婚約と偽りの戴冠

柴田はつみ
恋愛
幼い頃から、第一王女アリアと隣国の王子レオンは、誰もが疑わない「未来の国王夫妻」として育てられてきた。 政略で結ばれた関係でありながら、二人の間には確かな絆があった。幼馴染として共に過ごした年月の中で、アリアは感情を表に出さないながらも、レオンをただ一人、深く愛していた。 すべてが順調に進んでいるはずだった。 戴冠式と成婚を目前に控えた、その日までは。 歯車が狂い始めたのは、妹のセシルが涙に濡れた顔で、突然アリアの元へ駆け込んできた夜だった。 震える声で語られたのは、信じ難い言葉―― 「……レオン様に、愛を告白されたの」 アリアは即座に否定した。信じるはずがない。あのレオンが、そんな裏切りをするはずがないと。 だが、その確信は、夜の庭園で無惨に打ち砕かれる。 月明かりの下。 レオンは、確かにセシルを抱き寄せていた。 後に明らかになる真実は、あまりにも残酷だった。 姉に対する劣等感を長年募らせてきたセシルが仕掛けた、周到な罠。そして――レオンが決して知られてはならない「ある弱み」を、彼女が握っていたという事実。 それは、愛ではなかった。 だが、アリアの未来を根こそぎ奪うには、十分すぎる裏切りだった。

すれ違う心 解ける氷

柴田はつみ
恋愛
幼い頃の優しさを失い、無口で冷徹となった御曹司とその冷たい態度に心を閉ざした許嫁の複雑な関係の物語

【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない

ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。 既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。 未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。 後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。 欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。 * 作り話です * そんなに長くしない予定です

婚約破棄ブームに乗ってみた結果、婚約者様が本性を現しました

ラム猫
恋愛
『最新のトレンドは、婚約破棄!  フィアンセに婚約破棄を提示して、相手の反応で本心を知ってみましょう。これにより、仲が深まったと答えたカップルは大勢います!  ※結果がどうなろうと、我々は責任を負いません』  ……という特設ページを親友から見せられたエレアノールは、なかなか距離の縮まらない婚約者が自分のことをどう思っているのかを知るためにも、この流行に乗ってみることにした。  彼が他の女性と仲良くしているところを目撃した今、彼と婚約破棄して身を引くのが正しいのかもしれないと、そう思いながら。  しかし実際に婚約破棄を提示してみると、彼は豹変して……!? ※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも投稿しています

婚約破棄された公爵令嬢は、漆黒の王太子に溺愛されて永遠の光を掴む

鷹 綾
恋愛
### 内容紹介 **タイトル**: 「婚約破棄された公爵令嬢は、漆黒の王太子に溺愛されて永遠の光を掴む」 **ジャンル**: 異世界ファンタジー恋愛 / 婚約破棄ザマア / シンデレラストーリー / 溺愛甘々 **あらすじ(ネタバレなし)** 公爵令嬢ヴィオレッタは、幼馴染の王太子アルディオンに長年婚約を誓われていた。美しい容姿と優しい性格で宮廷でも愛されていたが、ある舞踏会の夜、アルディオンは突然平民出身の偽聖女セリナに心変わりし、ヴィオレッタを公衆の面前で婚約破棄する。「君はただの飾り物だ」との屈辱的な言葉とともに、家族からも見放され、追放の危機に陥る。 絶望の底で、ヴィオレッタの中に眠っていた古代の「影の魔法」が覚醒。影を操り、幻影を生み、予知する強大な力だ。一人旅立った彼女は、冒険者として生きながら、復讐の炎を胸に秘める。 そんなヴィオレッタの前に現れたのは、銀髪銀瞳の謎の美男子セイル。彼は隣国アストリアの「漆黒の王太子」で、政争から身を隠していた。最初はヴィオレッタの影の力を利用しようとするが、彼女の強さと純粋さに惹かれ、互いに心を開いていく。 二人は共闘し、アルディオンとセリナの陰謀を暴き、王国を救う。ヴィオレッタは屈辱を乗り越え、セイルに溺愛されながら、王妃として輝く未来を掴む。影と光が調和する、真実の愛と逆転の物語。

婚約破棄された令嬢は、選ばれる人生をやめました

ふわふわ
恋愛
王太子フィリオンとの婚約を、 「完璧すぎて可愛げがない」という理不尽な理由で破棄された令嬢・セラフィナ。 代わりに選ばれたのは、 庇護されるだけの“愛される女性”ノエリアだった。 失意の中で王国を去ったセラフィナが向かった先は、 冷徹と噂される公爵カルヴァスが治めるシュタインベルク公国。 そこで提示されたのは―― 愛も期待もしない「白い結婚」。 感情に振り回されず、 責任だけを共有する関係。 それは、誰かに選ばれる人生を終わらせ、 自分で立つための最適解だった。 一方、セラフィナを失った王国は次第に歪み始める。 彼女が支えていた外交、調整、均衡―― すべてが静かに崩れていく中、 元婚約者たちは“失ってから”その価値に気づいていく。 けれど、もう遅い。 セラフィナは、 騒がず、怒らず、振り返らない。 白い結婚の先で手に入れたのは、 溺愛でも復讐でもない、 何も起きない穏やかな日常。 これは、 婚約破棄から始まるざまぁの物語であり、 同時に―― 選ばれる人生をやめ、選び続ける人生を手に入れた女性の物語。 静かで、強くて、揺るがない幸福を、あなたへ。

処理中です...