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ピンゾロ
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俺は賭博場で胴元の白髭じじいと大勝負をすることになった。
勝負はチンチロで行う。即勝ちなし、即負けなしの一発勝負ルール。お互いにサイコロを振るチャンスは3回あり、強い出目を出した方が勝ちだ。
「おぬしが賭け金を置いておるから、必然的にわしが親じゃの」
「まあ、どっちでも同じことだ。即勝ちなし、即負けなしだからな」
賭け金は21万2,500ルド、俺の手持ち全てだ。
「そいじゃあいってみるかいのぉ……」
じじいはサイコロ3つを右手に握り、カチャカチャと拳の中でそれをこねると、おもむろに丼ぶりの中に投じた。
チンチロリンと丼の中でサイコロが回り、目が出た。
出目は1・1・1のピンゾロ。
「おぉっピンゾロじゃのぉ、のわっはっはっは!」
このじじいの感じ、出て当然といった風だ。
当てが外れた。
俺はじじいの持つスキル『三重の賽の目』のレベルが4だったことで、ピンゾロは出せないだろうと踏んでいたが、それは違ったようだ。
しかし、まだ望みはある。スキルレベルが出目の精度に関係するかもしれない。その場合、長期戦になれば俺が有利だ。
「悪いのぉ若造、最強の出目が出てしもうたわい。ぬっふっふ。本来ならここでわしの勝ちが確定するんじゃが、即勝ちなしのルールじゃ、一応サイコロを振ってみるか? おん?」
俺がピンゾロを出す確率は『娯楽の神の加護』によって100%。ここで身を引くわけにはいかない。
「もちろんだ。一発勝負だが、引き分ければもう一勝負だぞ」
「そうじゃが、この出目を見ても怖気付かんとはのぉ。ふっふ、やはりわしが見込んだ男だけのことはあるわい」
俺は丼の中にサイコロ3つをそっと落とした。
チンチロリン。
出目は1・1・1のピンゾロ。引き分けだ。
「ぬっ、ぬぁにぃ! おぬしもピンゾロを出しおったじゃと……! どわっはっはっは! こんな強運を持った者がこの世におるとはのぉ……」
「ということで勝負はまだ続くぞ」
「のぞむところじゃ……ぬっふっふ」
俺の二投目でピンゾロが出た時、さすがに怪しく思ったのだろう。じじいは鑑定を使って俺を調べていたようだった。
しかし『偽装』によって改変されたステータスしかじじいは見ることが出来ない。それらしいものを見つけることは出来なかっただろう。
じじいの中で俺の強運はさらに怪しさを増していたようだった。
「1・1・1じゃ」
「1・1・1だ」
それから俺とじじいはお互いにピンゾロを連発した。
じじいのスキルの精度は良好のようだ。
こうなればもはや、どちらかが先にションベン(サイコロを丼から溢すこと)をするまで勝負は終わらない。
そして、なおも俺はサイコロを振る。
出目は当然のようにピンゾロだ。
「信じられん……これが全くの運じゃというのか……。わしゃこの日の勝負の為に今までサイコロを振り続けてきたのかもしれんわい」
「そうかい。さあ、次はあんたの番だぞ」
ふと、じじいのサイコロを振る手が止まった。
「ふぅ……もう気付いておると思うが、白状しておくかのぉ……」
じじいは俯きそう言った。
まるで容疑者が犯行を認め、観念している様を見ているようだった。
「わしゃこの勝負、イカサマを使ってピンゾロを出しておったんじゃ……」
今更感がすごかった。
「……だろうと思ったが、今更すぎるな」
「わしが勝負師を始めてもう65年じゃ……。若い頃は全うに勝負するのがわしの唯一の誇りじゃった……。しかし長い月日の中で、いつしか勝負師としての道を踏み外してしもうとった。勝ちを欲するあまり、イカサマに手を出してしもうたんじゃ……。一度イカサマに手を出したら、もう抜けられん……。情けない話しじゃが、わしゃ勝負師としての誇りを捨ててしもうたんじゃ……」
じじいは胸のつかえを吐き出すように語った。
「なぜ今、白状した」
「情けのうなってしもうた。わしがイカサマを使う傍らで、本当の強運の持ち主であるおぬしがピンゾロを連発するのを見てのぉ……」
「そうか」
「わしの勝負師人生で最高のこの勝負を、イカサマで終わらせとうはないんじゃ!」
じじいは勢いよく床に左手を突き、右膝を立てるとサイコロを握る右手に力を入れた。
「見届けてくれい、わしのサイコロを!」
じじいは丼に3つのサイコロを放った。
チンチロリンと丼の中をサイコロが回り、目が出る。
出目は無常にも、1・2・3のヒフミだった。
「……おん? ……のっほっほっはっは! こりゃええのぉ! 気持ちがええほどの負けっぷりじゃわい! なっはっはっはっは!」
俺はその後、当然のようにピンゾロを出し、じじいとの勝負に勝った。
賭け金21万2,500ルドの2×10で20倍、425万ルドと万能鍵が俺の取り分だ。
じじいは清々しい笑顔で425万ルド分の貨幣と万能鍵をゴザの上に置いた。
俺はそれを受け取ると、余韻に浸るじじいを部屋に残し、無言で賭博場を後にした。
元手9,500ルドで、446万2,500ルドと万能鍵を手にすることができた。
勝負はチンチロで行う。即勝ちなし、即負けなしの一発勝負ルール。お互いにサイコロを振るチャンスは3回あり、強い出目を出した方が勝ちだ。
「おぬしが賭け金を置いておるから、必然的にわしが親じゃの」
「まあ、どっちでも同じことだ。即勝ちなし、即負けなしだからな」
賭け金は21万2,500ルド、俺の手持ち全てだ。
「そいじゃあいってみるかいのぉ……」
じじいはサイコロ3つを右手に握り、カチャカチャと拳の中でそれをこねると、おもむろに丼ぶりの中に投じた。
チンチロリンと丼の中でサイコロが回り、目が出た。
出目は1・1・1のピンゾロ。
「おぉっピンゾロじゃのぉ、のわっはっはっは!」
このじじいの感じ、出て当然といった風だ。
当てが外れた。
俺はじじいの持つスキル『三重の賽の目』のレベルが4だったことで、ピンゾロは出せないだろうと踏んでいたが、それは違ったようだ。
しかし、まだ望みはある。スキルレベルが出目の精度に関係するかもしれない。その場合、長期戦になれば俺が有利だ。
「悪いのぉ若造、最強の出目が出てしもうたわい。ぬっふっふ。本来ならここでわしの勝ちが確定するんじゃが、即勝ちなしのルールじゃ、一応サイコロを振ってみるか? おん?」
俺がピンゾロを出す確率は『娯楽の神の加護』によって100%。ここで身を引くわけにはいかない。
「もちろんだ。一発勝負だが、引き分ければもう一勝負だぞ」
「そうじゃが、この出目を見ても怖気付かんとはのぉ。ふっふ、やはりわしが見込んだ男だけのことはあるわい」
俺は丼の中にサイコロ3つをそっと落とした。
チンチロリン。
出目は1・1・1のピンゾロ。引き分けだ。
「ぬっ、ぬぁにぃ! おぬしもピンゾロを出しおったじゃと……! どわっはっはっは! こんな強運を持った者がこの世におるとはのぉ……」
「ということで勝負はまだ続くぞ」
「のぞむところじゃ……ぬっふっふ」
俺の二投目でピンゾロが出た時、さすがに怪しく思ったのだろう。じじいは鑑定を使って俺を調べていたようだった。
しかし『偽装』によって改変されたステータスしかじじいは見ることが出来ない。それらしいものを見つけることは出来なかっただろう。
じじいの中で俺の強運はさらに怪しさを増していたようだった。
「1・1・1じゃ」
「1・1・1だ」
それから俺とじじいはお互いにピンゾロを連発した。
じじいのスキルの精度は良好のようだ。
こうなればもはや、どちらかが先にションベン(サイコロを丼から溢すこと)をするまで勝負は終わらない。
そして、なおも俺はサイコロを振る。
出目は当然のようにピンゾロだ。
「信じられん……これが全くの運じゃというのか……。わしゃこの日の勝負の為に今までサイコロを振り続けてきたのかもしれんわい」
「そうかい。さあ、次はあんたの番だぞ」
ふと、じじいのサイコロを振る手が止まった。
「ふぅ……もう気付いておると思うが、白状しておくかのぉ……」
じじいは俯きそう言った。
まるで容疑者が犯行を認め、観念している様を見ているようだった。
「わしゃこの勝負、イカサマを使ってピンゾロを出しておったんじゃ……」
今更感がすごかった。
「……だろうと思ったが、今更すぎるな」
「わしが勝負師を始めてもう65年じゃ……。若い頃は全うに勝負するのがわしの唯一の誇りじゃった……。しかし長い月日の中で、いつしか勝負師としての道を踏み外してしもうとった。勝ちを欲するあまり、イカサマに手を出してしもうたんじゃ……。一度イカサマに手を出したら、もう抜けられん……。情けない話しじゃが、わしゃ勝負師としての誇りを捨ててしもうたんじゃ……」
じじいは胸のつかえを吐き出すように語った。
「なぜ今、白状した」
「情けのうなってしもうた。わしがイカサマを使う傍らで、本当の強運の持ち主であるおぬしがピンゾロを連発するのを見てのぉ……」
「そうか」
「わしの勝負師人生で最高のこの勝負を、イカサマで終わらせとうはないんじゃ!」
じじいは勢いよく床に左手を突き、右膝を立てるとサイコロを握る右手に力を入れた。
「見届けてくれい、わしのサイコロを!」
じじいは丼に3つのサイコロを放った。
チンチロリンと丼の中をサイコロが回り、目が出る。
出目は無常にも、1・2・3のヒフミだった。
「……おん? ……のっほっほっはっは! こりゃええのぉ! 気持ちがええほどの負けっぷりじゃわい! なっはっはっはっは!」
俺はその後、当然のようにピンゾロを出し、じじいとの勝負に勝った。
賭け金21万2,500ルドの2×10で20倍、425万ルドと万能鍵が俺の取り分だ。
じじいは清々しい笑顔で425万ルド分の貨幣と万能鍵をゴザの上に置いた。
俺はそれを受け取ると、余韻に浸るじじいを部屋に残し、無言で賭博場を後にした。
元手9,500ルドで、446万2,500ルドと万能鍵を手にすることができた。
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