7 / 35
007_存在進化
しおりを挟む
■■■■■■■■■■
007_存在進化
■■■■■■■■■■
屋敷に帰ると、さっそくパパの部屋に向かった。
「しばらく屋敷を離れます」
「ん? どういうことだ?」
「せっかく良い加護を得たのです。加護の力を確かめてきます」
「……お前が得た【クモ使い】はそんなに良い加護なのか?」
「何を仰っているのですか。【クモ使い】は種族限定のクモを使役できる加護ですよ」
俺は加護についてパパに語って聞かせた。
剣士系の加護は【剣士】⇒【剣王】⇒【剣聖】の順に上位加護になる。
それに対してテイム系の加護は使役できる範囲が広いほど存在力が少ないものを使役できるというものだ。
魔物全部と動物全部をテイムできる【テイマー】は、対象範囲が広いが故に存在力が弱い個体にしか効果がない。
それに対して【ビーストテイマー】のように獣限定の場合は、より高い存在力に効果を及ぼすことができる。
そして、種族限定の【竜騎士】のような加護の場合は、非常に高い存在力の個体にも効果を表す。
存在力というのは、その個体の強さと考えればいい。
「つまり、俺の【クモ使い】は【剣聖】【聖騎士】【賢者】と言った加護と同等の良い加護なのですよ」
貴族は総じて剣士系や戦士系、それに魔法使い系を尊ぶ。ウチの場合は戦士系を多く輩出する家柄で、書類仕事ばかりしているパパは【聖騎士】だったりする。
「分かった、分かった。それでしばらくというのはどのくらいだ? 半日か? 1日か?」
「1カ月くらいです」
「はぁ? お前、学園はどうするんだ?」
「休みます。大丈夫ですよ、ちゃんと卒業しますから」
「……護衛」
「要りません」
「だがな」
「死にますよ」
「………」
パパは頭を抱えてしばらく復活しなかった。
復活するのを待とうかと思ったが、時間がもったいなかったのでそっと部屋を出た。
「どうでした?」
「俺は1カ月くらい旅に出る。ロックは学園に通ってしっかり勉学に励めよ」
「分かりました」
「あと、課題は俺の部屋に置いておいてくれ。帰ったらやるから」
「了解です」
ロックと2人して俺の部屋に入る。
平民が着るような服に着替え、剣を腰に佩き、背嚢を背負う。
いつでも旅に出られるように、こういったものは事前に用意していた。
「それじゃあ、行ってくる。あとは頼んだぞ」
「スピナー様に言う必要はないでしょうが、気をつけて」
「おう!」
俺は屋敷の庭にある林に入った。
公爵家の敷地は広大で、林があるのだ。
その林の向こうにある裏口から、そっと外に出る。
人通りのない道路に出ると、駆け出す。
「落ちないように、しっかりと掴まっていろよ」
肩に乗っているミネルバに声をかけると、足を挙げて答えた。
ミネルバの感情が以前よりも分かるようになった。これは【クモ使い】の効果の1つだ。
「さあ、行こう! 俺たちの門出の日だ!」
家を出た俺は、まずミネルバの強化を行うことにした。
「あのアリを倒すんだ」
数百のアリが列をなしているところに、ミネルバを投入。
ミネルバは糸でアリを絡めとり、その顎で首を切り取っていく。
「良い攻撃だ。その調子だぞ!」
ミネルバが跳ねて応えてくる。可愛い奴だ。
「っ!? きたーっ!」
ミネルバの存在力が上がる。これは存在進化だ。
テイムされている動物の存在力が、ある一定のところまで貯まると存在進化する。
ミネルバはただの小さなクモだから、存在進化に必要な存在力の量はそれほど多くない。
ミネルバは俺の肩に戻って、糸で自分を包み込んだ。繭のようだ。
10分ほどで糸を切って出て来た。
出て来たばかりはシワシワだったが、5分もせずにクモの形になった。
「倍くらいの大きさになったか」
元々1センチに満たない小さなクモだったが、2センチくらいになった。
色はこれまでと変わらず黒に赤の斑点がある。
「よし、どんどんアリを倒すんだ!」
俺の肩から飛び降りて、アリを再び攻撃していく。
すると、アリの巣から毛色の違うアリが出て来た。
列をなしているアリよりも体が大きく、動きが速い。しかも数十匹が連携してミネルバを攻撃してくる。
「もしかして兵隊アリか」
かなり統制の取れた動きだ。ミネルバはかなり苦戦している。
「糸を兵隊アリの足に絡ませるんだ」
俺の指示を受けたミネルバは、糸を兵隊アリの足に絡ませていった。
1体1体、確実に動きを封じていくと、ミネルバに余裕ができてから反撃開始だ。
「いいぞ、ミネルバ!」
兵隊アリを倒していると、再びあの感覚を味わう。存在進化だ。
残りの兵隊アリを糸で動けないようにしたミネルバは、俺の肩の上で糸に包まった。
毎回肩の上で糸に包まるのかな? 俺の肩が割れた繭のカスで汚れるんですけど。
今度は4センチくらいの大きさになった。
黒に赤と青の斑点と、青色が増えた。
「おお、動きが速くなったぞ!」
元々動きが速かったミネルバだが、存在進化を繰り返したおかげで、さらに速くなった。
体が大きくなったことで、パワーもアップしている。
一気にアリを駆逐したミネルバは、自慢げに俺の肩に戻った。
007_存在進化
■■■■■■■■■■
屋敷に帰ると、さっそくパパの部屋に向かった。
「しばらく屋敷を離れます」
「ん? どういうことだ?」
「せっかく良い加護を得たのです。加護の力を確かめてきます」
「……お前が得た【クモ使い】はそんなに良い加護なのか?」
「何を仰っているのですか。【クモ使い】は種族限定のクモを使役できる加護ですよ」
俺は加護についてパパに語って聞かせた。
剣士系の加護は【剣士】⇒【剣王】⇒【剣聖】の順に上位加護になる。
それに対してテイム系の加護は使役できる範囲が広いほど存在力が少ないものを使役できるというものだ。
魔物全部と動物全部をテイムできる【テイマー】は、対象範囲が広いが故に存在力が弱い個体にしか効果がない。
それに対して【ビーストテイマー】のように獣限定の場合は、より高い存在力に効果を及ぼすことができる。
そして、種族限定の【竜騎士】のような加護の場合は、非常に高い存在力の個体にも効果を表す。
存在力というのは、その個体の強さと考えればいい。
「つまり、俺の【クモ使い】は【剣聖】【聖騎士】【賢者】と言った加護と同等の良い加護なのですよ」
貴族は総じて剣士系や戦士系、それに魔法使い系を尊ぶ。ウチの場合は戦士系を多く輩出する家柄で、書類仕事ばかりしているパパは【聖騎士】だったりする。
「分かった、分かった。それでしばらくというのはどのくらいだ? 半日か? 1日か?」
「1カ月くらいです」
「はぁ? お前、学園はどうするんだ?」
「休みます。大丈夫ですよ、ちゃんと卒業しますから」
「……護衛」
「要りません」
「だがな」
「死にますよ」
「………」
パパは頭を抱えてしばらく復活しなかった。
復活するのを待とうかと思ったが、時間がもったいなかったのでそっと部屋を出た。
「どうでした?」
「俺は1カ月くらい旅に出る。ロックは学園に通ってしっかり勉学に励めよ」
「分かりました」
「あと、課題は俺の部屋に置いておいてくれ。帰ったらやるから」
「了解です」
ロックと2人して俺の部屋に入る。
平民が着るような服に着替え、剣を腰に佩き、背嚢を背負う。
いつでも旅に出られるように、こういったものは事前に用意していた。
「それじゃあ、行ってくる。あとは頼んだぞ」
「スピナー様に言う必要はないでしょうが、気をつけて」
「おう!」
俺は屋敷の庭にある林に入った。
公爵家の敷地は広大で、林があるのだ。
その林の向こうにある裏口から、そっと外に出る。
人通りのない道路に出ると、駆け出す。
「落ちないように、しっかりと掴まっていろよ」
肩に乗っているミネルバに声をかけると、足を挙げて答えた。
ミネルバの感情が以前よりも分かるようになった。これは【クモ使い】の効果の1つだ。
「さあ、行こう! 俺たちの門出の日だ!」
家を出た俺は、まずミネルバの強化を行うことにした。
「あのアリを倒すんだ」
数百のアリが列をなしているところに、ミネルバを投入。
ミネルバは糸でアリを絡めとり、その顎で首を切り取っていく。
「良い攻撃だ。その調子だぞ!」
ミネルバが跳ねて応えてくる。可愛い奴だ。
「っ!? きたーっ!」
ミネルバの存在力が上がる。これは存在進化だ。
テイムされている動物の存在力が、ある一定のところまで貯まると存在進化する。
ミネルバはただの小さなクモだから、存在進化に必要な存在力の量はそれほど多くない。
ミネルバは俺の肩に戻って、糸で自分を包み込んだ。繭のようだ。
10分ほどで糸を切って出て来た。
出て来たばかりはシワシワだったが、5分もせずにクモの形になった。
「倍くらいの大きさになったか」
元々1センチに満たない小さなクモだったが、2センチくらいになった。
色はこれまでと変わらず黒に赤の斑点がある。
「よし、どんどんアリを倒すんだ!」
俺の肩から飛び降りて、アリを再び攻撃していく。
すると、アリの巣から毛色の違うアリが出て来た。
列をなしているアリよりも体が大きく、動きが速い。しかも数十匹が連携してミネルバを攻撃してくる。
「もしかして兵隊アリか」
かなり統制の取れた動きだ。ミネルバはかなり苦戦している。
「糸を兵隊アリの足に絡ませるんだ」
俺の指示を受けたミネルバは、糸を兵隊アリの足に絡ませていった。
1体1体、確実に動きを封じていくと、ミネルバに余裕ができてから反撃開始だ。
「いいぞ、ミネルバ!」
兵隊アリを倒していると、再びあの感覚を味わう。存在進化だ。
残りの兵隊アリを糸で動けないようにしたミネルバは、俺の肩の上で糸に包まった。
毎回肩の上で糸に包まるのかな? 俺の肩が割れた繭のカスで汚れるんですけど。
今度は4センチくらいの大きさになった。
黒に赤と青の斑点と、青色が増えた。
「おお、動きが速くなったぞ!」
元々動きが速かったミネルバだが、存在進化を繰り返したおかげで、さらに速くなった。
体が大きくなったことで、パワーもアップしている。
一気にアリを駆逐したミネルバは、自慢げに俺の肩に戻った。
18
あなたにおすすめの小説
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
消息不明になった姉の財産を管理しろと言われたけど意味がわかりません
紫楼
ファンタジー
母に先立たれ、木造アパートで一人暮らして大学生の俺。
なぁんにも良い事ないなってくらいの地味な暮らしをしている。
さて、大学に向かうかって玄関開けたら、秘書って感じのスーツ姿のお姉さんが立っていた。
そこから俺の不思議な日々が始まる。
姉ちゃん・・・、あんた一体何者なんだ。
なんちゃってファンタジー、現実世界の法や常識は無視しちゃってます。
十年くらい前から頭にあったおバカ設定なので昇華させてください。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる