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016_憂さ晴らし
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016_憂さ晴らし
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凛とした声の主は、ザルグアーム・デ・キルラ国第四王女であるリーン様だ。
彼女がここに居る理由は不明だが、俺が性質の悪い貴族に絡まれているのを見かねたようだ。
「小娘が出しゃばるな」
従者がリーン様に剣を向ける。こいつ、あとから泣きながら謝るんじゃないか。
しかし、このなんちゃら子爵は大丈夫か? 相手は俺と違ってなんちゃって貴族じゃないんだぞ。
護衛の騎士だって、近衛騎士団の紋章つきの鎧を着ているのに。俺、しーらない。
「無礼者!」
入学試験の時に見たメリル・パルマーという女騎士が出てきた。
「第四王女リーン殿下に剣を向けるとは、謀反人として捕縛されたいようだな!」
「「へっ?」」
なんとか子爵と従者が呆けた顔をした。
そりゃぁそうだよな、こんなところに王女が居るとは思わないもんな。
ただ、護衛の近衛騎士は貴族なら知っていて当然だ。どこの田舎貴族だよ。
「あわわわ」
「ふへふふへ……」
貴族と従者が変な声を出して後ずさった。
「無礼者ども! リーン様のご前であるぞ!」
「「へっ、へへー」」
土下座したよ。正式な貴族の礼儀作法というものを知らないのか、こいつ。
「貴様の姓名身分を明らかにしろ!」
「は、はい。わたくしめは、ゴルディアス地方に領地を持ちますウッドスティック・ガールデン子爵と申します。従者が大変失礼いたしましたぁぁぁ」
子爵は従者が悪いことにして、自分はなんとか罪を免れようと弁明する。その足搔きようと言ったら、見ていて気分のいいものではない。
しかし、ゴルディアス地方とはまた田舎だな。
俺の記憶が確かなら、列車を何度も乗り換えて3日以上かかるはずだ。
このセントラルから最も遠い場所と言っても過言ではない。
「このような人が多いところで、剣を抜くなど正気の沙汰ではない。そちらの少年に怨恨でもあるのか」
「そのようなことはありません。この者がわたくしめを突き飛ばした故、謝罪を求めたのです。しかし、謝罪するどころか開き直りまして、それで従者が剣を抜いた次第にございます」
よくもまあ、そんな嘘をスラスラと言えるものだ。
この子爵は口から生まれてきたのか?
「ほう、こちらのスピナー様が貴様を突き飛ばしただと?」
「はい。そのスピ……ん? この者の名をなぜ知っているのでしょうか?」
「そなた、まさかこちらの方がボルフェウス公爵家のスピナー様だと知らないのか?」
「「えっ!?」」
知っていて俺に剣を向けたんなら、パパにかなりの恨みを持っていたんだろう。
もしくは、俺が知らないところで、こいつに恨みを持たれた?
「スピナー様。こちらのガールデン子爵が仰ったことは、本当のことですか?」
「近衛騎士パルマー様。私がここで立っていたら、こちらの子爵様に後ろからぶつかられたのです。突き飛ばすどころか、こちらの子爵様が後ろに居ることさえ知りませんでした」
「わたくしも見ていました。その者はスピナー様の背後から近寄り体当たりをしました」
あら、リーン様が俺の肩を持つなんて、どんな風の吹き回しなんだろうか?
「つまり、ガールデン子爵はボルフェウス公爵家に何か含むところがおありのようだな。このことはボルフェウス公爵に報告させてもらう」
「そ、そのようなことは!」
「黙れ! この痴れ者が!」
近衛騎士パルマーに一喝されて、子爵はうな垂れた。
「ねえ、なんで俺にぶつかったわけ? ウチか俺に恨みでもあるの?」
「……ただ長旅の憂さを晴らしたいと思っただけで……知らなかったんだ」
貴族にまったく見えない俺がボーっと突っ立っていたから、憂さ晴らしに丁度いいと思ったわけか。
そんなことで人生を棒に振るなんて、バカなことをしたものだ。
近衛騎士パルマーは子爵の身分証をしっかりとチェックして、子爵を解放した。
いずれウチから何かしらのアクションがあるだろう。俺はどうでもいいけど、貴族社会では面子が重要だからね。これを放置したら、パパや家が舐められる。
「リーン様。近衛騎士パルマー様。この度はありがとうございました」
後から文句言われないように、丁寧にお礼を言った。
「いずれ、父を通して今回のお礼をしたく思いますが、本日はこれで失礼いたします」
「お待ちください」
さっさと立ち去ろうとしたら、リーン様に呼び止められてしまった。
王族とはあまり関わり合いになりたくないので、すぐに立ち去りたかったんだけど。
「はい。何か」
「あの……場所を移して、少しお話をさせていただけないでしょうか」
むぅ……。こんな美少女に上目遣いされたら断りにくい。王族でなければ、お付き合いしてくださいと申し込むところだ。
「私はこのような恰好ですが、よろしいでしょうか?」
「構いません」
「分かりました」
場所を移すため、セントラルステーションから出る。
黒塗りの超高級魔動車にリーン様、近衛騎士パルマー、俺の3人が乗り込んだ。
広い車内に3人。
外装は最高級のアダマン合金の防魔法仕様だったが、内装もさすがは王族といったしつらえだ。
このシートに使われている革は、危険度Bランクのグレーターバッファローか。手触りが良くて丈夫なんだよな、これ。防具にも使われる素材だけど、危険度Bランクの魔物の皮が素材だから高級革として知られている。
016_憂さ晴らし
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凛とした声の主は、ザルグアーム・デ・キルラ国第四王女であるリーン様だ。
彼女がここに居る理由は不明だが、俺が性質の悪い貴族に絡まれているのを見かねたようだ。
「小娘が出しゃばるな」
従者がリーン様に剣を向ける。こいつ、あとから泣きながら謝るんじゃないか。
しかし、このなんちゃら子爵は大丈夫か? 相手は俺と違ってなんちゃって貴族じゃないんだぞ。
護衛の騎士だって、近衛騎士団の紋章つきの鎧を着ているのに。俺、しーらない。
「無礼者!」
入学試験の時に見たメリル・パルマーという女騎士が出てきた。
「第四王女リーン殿下に剣を向けるとは、謀反人として捕縛されたいようだな!」
「「へっ?」」
なんとか子爵と従者が呆けた顔をした。
そりゃぁそうだよな、こんなところに王女が居るとは思わないもんな。
ただ、護衛の近衛騎士は貴族なら知っていて当然だ。どこの田舎貴族だよ。
「あわわわ」
「ふへふふへ……」
貴族と従者が変な声を出して後ずさった。
「無礼者ども! リーン様のご前であるぞ!」
「「へっ、へへー」」
土下座したよ。正式な貴族の礼儀作法というものを知らないのか、こいつ。
「貴様の姓名身分を明らかにしろ!」
「は、はい。わたくしめは、ゴルディアス地方に領地を持ちますウッドスティック・ガールデン子爵と申します。従者が大変失礼いたしましたぁぁぁ」
子爵は従者が悪いことにして、自分はなんとか罪を免れようと弁明する。その足搔きようと言ったら、見ていて気分のいいものではない。
しかし、ゴルディアス地方とはまた田舎だな。
俺の記憶が確かなら、列車を何度も乗り換えて3日以上かかるはずだ。
このセントラルから最も遠い場所と言っても過言ではない。
「このような人が多いところで、剣を抜くなど正気の沙汰ではない。そちらの少年に怨恨でもあるのか」
「そのようなことはありません。この者がわたくしめを突き飛ばした故、謝罪を求めたのです。しかし、謝罪するどころか開き直りまして、それで従者が剣を抜いた次第にございます」
よくもまあ、そんな嘘をスラスラと言えるものだ。
この子爵は口から生まれてきたのか?
「ほう、こちらのスピナー様が貴様を突き飛ばしただと?」
「はい。そのスピ……ん? この者の名をなぜ知っているのでしょうか?」
「そなた、まさかこちらの方がボルフェウス公爵家のスピナー様だと知らないのか?」
「「えっ!?」」
知っていて俺に剣を向けたんなら、パパにかなりの恨みを持っていたんだろう。
もしくは、俺が知らないところで、こいつに恨みを持たれた?
「スピナー様。こちらのガールデン子爵が仰ったことは、本当のことですか?」
「近衛騎士パルマー様。私がここで立っていたら、こちらの子爵様に後ろからぶつかられたのです。突き飛ばすどころか、こちらの子爵様が後ろに居ることさえ知りませんでした」
「わたくしも見ていました。その者はスピナー様の背後から近寄り体当たりをしました」
あら、リーン様が俺の肩を持つなんて、どんな風の吹き回しなんだろうか?
「つまり、ガールデン子爵はボルフェウス公爵家に何か含むところがおありのようだな。このことはボルフェウス公爵に報告させてもらう」
「そ、そのようなことは!」
「黙れ! この痴れ者が!」
近衛騎士パルマーに一喝されて、子爵はうな垂れた。
「ねえ、なんで俺にぶつかったわけ? ウチか俺に恨みでもあるの?」
「……ただ長旅の憂さを晴らしたいと思っただけで……知らなかったんだ」
貴族にまったく見えない俺がボーっと突っ立っていたから、憂さ晴らしに丁度いいと思ったわけか。
そんなことで人生を棒に振るなんて、バカなことをしたものだ。
近衛騎士パルマーは子爵の身分証をしっかりとチェックして、子爵を解放した。
いずれウチから何かしらのアクションがあるだろう。俺はどうでもいいけど、貴族社会では面子が重要だからね。これを放置したら、パパや家が舐められる。
「リーン様。近衛騎士パルマー様。この度はありがとうございました」
後から文句言われないように、丁寧にお礼を言った。
「いずれ、父を通して今回のお礼をしたく思いますが、本日はこれで失礼いたします」
「お待ちください」
さっさと立ち去ろうとしたら、リーン様に呼び止められてしまった。
王族とはあまり関わり合いになりたくないので、すぐに立ち去りたかったんだけど。
「はい。何か」
「あの……場所を移して、少しお話をさせていただけないでしょうか」
むぅ……。こんな美少女に上目遣いされたら断りにくい。王族でなければ、お付き合いしてくださいと申し込むところだ。
「私はこのような恰好ですが、よろしいでしょうか?」
「構いません」
「分かりました」
場所を移すため、セントラルステーションから出る。
黒塗りの超高級魔動車にリーン様、近衛騎士パルマー、俺の3人が乗り込んだ。
広い車内に3人。
外装は最高級のアダマン合金の防魔法仕様だったが、内装もさすがは王族といったしつらえだ。
このシートに使われている革は、危険度Bランクのグレーターバッファローか。手触りが良くて丈夫なんだよな、これ。防具にも使われる素材だけど、危険度Bランクの魔物の皮が素材だから高級革として知られている。
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