いつか、ふたりで

ゆん

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夏だ!キャンプだ!みんなでGO!

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「真澄ぃ~~!いつぶりぃ~??」

私の腕に抱きついてきた光流は、いつになくテンションが高かった。

「3日ぶりかな」
「ノンノンノン。4日ぶり~」
「どうしたの。ご機嫌だね」
「ふふふふ……実は、真澄ちゃんに大切なお話があります」

にんまり笑った光流が、下げていたトートバッグから紙を取り出し、私の前にバン、と広げた。

夏だ!キャンプだ!みんなでGO!
フリーサイト ニューオープン!

それはキャンプ場のチラシだった。

「智君がね。キャンプしようって」

智君とは泉さんのことだ。会うたびに惚気てくる二人の恋は順調で、光流は相変わらずぴかぴかしている。

「良かったね。でも、光流、山は苦手じゃなかった?」

見せられたチラシは渓流沿いのキャンプ場で、かなり山深い場所のようだ。

「智君が大好きって言うから、言い出せなくなっちゃったんだよ~……しかもここ……サイトからおトイレまで遠そうで。怖いでしょ。山はお化け出るし」
「泉さんに付いてきてもらえば」
「バカ言わないで!き、聞こえちゃったらどうすんの!」

ひそひそ叫ぶ光流のこういう所が可愛い、と思いながらも、少し他人事のように聞いていた。

すると光流がぱん、と両手を合わせて私を拝んだ。

「お願いします。付いてきてください」
「え!?ふたりについてくの!?」

それはかなり嫌だが?と思っていたら、「大丈夫」と光流が自信満々に私の両肩を上から掴む。

「海堂先輩はOKだって!あとは真澄だけなのよぉ~!」
「か、勝手に話を──」
「ダブルデート楽しかったじゃーん!ダブルキャンプしようよぉ~!」

確かに一緒にいて落ち着く人たちだと思ったけど、今度は片方はカップルだ。私と海堂はかなり微妙な空気に悩まされることになるのでは──

そうは思ったものの、私は光流とは違い、山が好きだった。チラシに映る深い森、澄んだ川の水……それらはとても魅力的で、「しーくえんすでも男女混合でキャンプあるじゃん!」とか「自然の前に男も女もないよ!」とか、再三の光流のお願いに、最終的に頷いた。

確かにそうだ。意識しすぎだ。キャンプは家族でも、友達同士でもするではないか。

子供の頃は山が遊び場というくらいの田舎育ちの私。その日の夜には、楽しみの方が勝つようになっていた。






キャンプの日取りが決まると、光流が水着を買いに行こうと言い出した。

私は日焼けがひどくなりやすくて、昔からハットにサングラス、長袖ラッシュガードにロングパンツと決めている。日焼けは火傷だ。昔ひどい目にあってからというもの、実用性が優先である。

光流はひどくがっかりしたが、自分は絶対新しいのを買うからついてきてくれと言う。

「ドキドキにはやっぱりビキニタイプかな?でも私、意外と大きいから、変にエッチになるのも嫌なんだよなぁ……」

服の上から自分の胸を掴んで揉むから、やめなさい、と手を叩いた。

「私は相談相手には不適格と思うけど」
「またまたそんな。お大臣様。お願いしますよ」
「よろしい。それほど言うならついて行ってしんぜよう」

ふざけて笑いながら、次の日曜に出かけることにした。

どうやら海堂も楽しみにしているようだ。

『俺たちが長く過ごした山という故郷に君と行けることに、奥深くから立ち上るような期待がある』

そう送ってきた、海堂の言わんとすることが分かる。私と空海は人生の大半を山で過ごし、山に死んだ。あの男との思い出のほとんどは山にあると言っていい。

山は故郷なのだ。本当は誰にとっても。我々は古よりその威容に神を見出し、山懐に抱かれて生き、死すれば土に還ってきたのだから。

そう書いて送れば、海堂は笑いながら電話してくる。

「真澄ちゃん、固い。バリカタ」
「あなたに合わせたまでです」

海堂は狙っているのか、私に空海を思い出させることが増えている。

私はあの男のように器用ではないから、今の気持ちが最澄のものなのか、真澄のものなのか分からなくなる。

それでも嫌ではないのだ。決して。







「真澄、どう?やっぱさっきのかなぁ?」

光流がフィッティングルームのカーテンをそろっと開けて、体を奥に引いたままおそるおそる見せてくる。

さっきのは黒いビキニ、今のは赤メイン、緑アクセントのイチゴ風。

「うーん……光流の性格だと今の方が可愛くて似合ってる気がするけど」
「そう?子供っぽくない?」
「うーーーん……子供っぽい……かなぁ」

子供っぽい、の基準が分からない。主観じゃないのか。大体着ている人が大人なんだから、子供にはならないだろう。

「智君は色気派かなぁ……可愛い派かなぁ……」

光流がさらに難しい質問を被せてくる。光流が好きなんだから、光流派だろう。一人の人間の中にどっちかしかないとか、ないんじゃないか?

やっぱりもうちょっと探す、と光流はカーテンの向こうに引っ込んだ。私は役立たずな相談役だったが、色とりどりの水着の中で少し頬を染めて試着している女の子たちを見ているのは楽しかった。

最終的に肩にフリルが付いたビスチェ風のトップスにスカートタイプの水着に決まった。光流は最後まで私にも水着を買わせようとしていたが、子供の頃にひどい日焼けで発熱嘔吐、水膨れを体験した話をしたら、しょんぼり大人しくなった。

「真澄、色白いもんね……」
「隣に黒づくめで立つのは申し訳ないけど、大丈夫。カラスも真っ黒だから」
「なにその大丈夫の根拠」

笑いながらカフェでお茶して、向こうに行ったら何をしようと計画する時間は、気づいたら夜になってたくらい早く過ぎた。

寮に戻って初めての外泊申請をしたとき、「お、キャンプ。いいねえ」と管理人さんに言われてどきどきした。

同行者を書く欄に光流の名前しか書かなかったからだ。当然、男の人の名前は書けない。そういう規定はないが、もし親に連絡が行ったりしたらややこしい。

気を付けて行っておいで、と微笑む管理人さんに少々良心が痛んだが、踏み込んで聞かれなかったことに安堵した。


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