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半壊・会談
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大きな音で、目が覚めた。
朦朧とする頭の中で今の状況を整理する
蒸し暑い八月、高校は休業中の夏休み。
そんな気が緩む環境の中で例に漏れず私自身も
正午近くに起きるという自堕落な生活を送っていた。
そんなことを考え、学校がないことに安心していると
長い眠りを妨げた大きな音に続き、形容し難い怒鳴り声が
聞こえた。寝室からリビングはすぐそこ、
襖一つで隔てられたその空間から音は漏れていた。
母親の泣くようで強く恨む様な低い声に
咽び泣く誰か、何事かと直ぐにベッドから飛び起きた
「どうしたの?」と問いながら恐る恐る襖を開ける。
起きた私に気づいたのか
「コイツが!コイツらが!」と自分の娘をコイツと呼び
涙を垂れ流しながら訴えかけようと母親が近づく
そんな母親を横目に周囲を見渡すと唇の下を自分の血で
赤く濡らした二つ下の妹がうずくまっていた。
明らかに普段と違うこの
ヒステリックな状況に驚きを隠せなかった。
その後徐々に落ち着きの色を見せてきた母親にハンカチで妹の血を抑えながら「何があったの!?」と問い詰めた。
そう聞くと母親は静かに妹の携帯を私に見せてきた。
そこにあったのは持ち主である妹と私の二つ上の姉
によって書かれたひどいバッシングの数々だった。
それも全て母親に対するものだった。
母親は何も喋らない、ただ俯いていた。
この一件を機に壊れて行く関係を
この時の私はまだ知らない。
どうやら母親が妹のスマホを見ていたのは
母親とのお出掛けの行き先を妹のスマホで
決めていたかららしい。
楽しい思い出を作る筈がこんなことになるとは
なんとも皮肉な話だ。
書かれていた内容への問答は
姉のバイトが終わり、帰ってくる夕暮れに行われた。
問答と言えど、その場に論理的な思考は無く
ぶつかれば痛い言葉での殴り合いだった
「今まで育てて来てやったのにこの仕打ちは何だ!」と
母が訴えれば
「育てて貰った恩など今まで感じたことはない」と
私の兄弟達は言う。
聞いていて辛い。この問答が始まってから終わるまで
感じ続けるであろう一番強い思い
確かに家族と言うしがらみを取り払った上で
考えたら絶縁ものだろう。
私の友人がもし同じ様に暴言を吐かれていたら
自分から絶縁を提案するとも思う。
だが家族、切っても切り離せないそんな関係性を持つ
私達で暴言を吐き合い続けても何も解決へは至らない。
多少これからの友好関係に疑心暗鬼が取り憑いてでも、
どんなに今回の事件が許せなくても
ここは一度許し合うべきだ。しかしそんなこと
ヒートアップを重ねる暴言の場で言える訳がなく
ずっと押し黙っていた。
二時間は経過しただろうか、
本当の殴り合いが始まりそうになったりもしたが
徐々に落ち着きを取り戻し
話は終わった。
どちら側にも付けない私にとっては
吐きそうになる程居心地の悪い最悪の時間だった。
それでもこれ以上この状況が悪化することは無いだろう、
と心の奥底では安堵していた。
すぐそこまで崩壊が来ていることも知らずに。
朦朧とする頭の中で今の状況を整理する
蒸し暑い八月、高校は休業中の夏休み。
そんな気が緩む環境の中で例に漏れず私自身も
正午近くに起きるという自堕落な生活を送っていた。
そんなことを考え、学校がないことに安心していると
長い眠りを妨げた大きな音に続き、形容し難い怒鳴り声が
聞こえた。寝室からリビングはすぐそこ、
襖一つで隔てられたその空間から音は漏れていた。
母親の泣くようで強く恨む様な低い声に
咽び泣く誰か、何事かと直ぐにベッドから飛び起きた
「どうしたの?」と問いながら恐る恐る襖を開ける。
起きた私に気づいたのか
「コイツが!コイツらが!」と自分の娘をコイツと呼び
涙を垂れ流しながら訴えかけようと母親が近づく
そんな母親を横目に周囲を見渡すと唇の下を自分の血で
赤く濡らした二つ下の妹がうずくまっていた。
明らかに普段と違うこの
ヒステリックな状況に驚きを隠せなかった。
その後徐々に落ち着きの色を見せてきた母親にハンカチで妹の血を抑えながら「何があったの!?」と問い詰めた。
そう聞くと母親は静かに妹の携帯を私に見せてきた。
そこにあったのは持ち主である妹と私の二つ上の姉
によって書かれたひどいバッシングの数々だった。
それも全て母親に対するものだった。
母親は何も喋らない、ただ俯いていた。
この一件を機に壊れて行く関係を
この時の私はまだ知らない。
どうやら母親が妹のスマホを見ていたのは
母親とのお出掛けの行き先を妹のスマホで
決めていたかららしい。
楽しい思い出を作る筈がこんなことになるとは
なんとも皮肉な話だ。
書かれていた内容への問答は
姉のバイトが終わり、帰ってくる夕暮れに行われた。
問答と言えど、その場に論理的な思考は無く
ぶつかれば痛い言葉での殴り合いだった
「今まで育てて来てやったのにこの仕打ちは何だ!」と
母が訴えれば
「育てて貰った恩など今まで感じたことはない」と
私の兄弟達は言う。
聞いていて辛い。この問答が始まってから終わるまで
感じ続けるであろう一番強い思い
確かに家族と言うしがらみを取り払った上で
考えたら絶縁ものだろう。
私の友人がもし同じ様に暴言を吐かれていたら
自分から絶縁を提案するとも思う。
だが家族、切っても切り離せないそんな関係性を持つ
私達で暴言を吐き合い続けても何も解決へは至らない。
多少これからの友好関係に疑心暗鬼が取り憑いてでも、
どんなに今回の事件が許せなくても
ここは一度許し合うべきだ。しかしそんなこと
ヒートアップを重ねる暴言の場で言える訳がなく
ずっと押し黙っていた。
二時間は経過しただろうか、
本当の殴り合いが始まりそうになったりもしたが
徐々に落ち着きを取り戻し
話は終わった。
どちら側にも付けない私にとっては
吐きそうになる程居心地の悪い最悪の時間だった。
それでもこれ以上この状況が悪化することは無いだろう、
と心の奥底では安堵していた。
すぐそこまで崩壊が来ていることも知らずに。
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