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エピローグ ~人間界遠征~
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ふとした事でたいして大きくもない事。
「第三部署所属、黒の人間界遠征を命じる。」
閻魔大王は地獄のスナックをつまみながら黒を指さした。
「かしこまりました。」
このごろ新人や後輩達が多く出来、歌を歌いながら地獄スナックを食べ、気管に入ったほど上機嫌な黒は良い返事をした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おい!良かったな、人間界だってな」
同僚に脇をつつかれ、紙コップに入った地獄ドリンク(辛いとばかり思うなよ?人間が飲めば1発で糖尿になる)が少し揺れる。
何日前だろうか…いや、死神界でのカウントだから人間界にカウントすると数10年になる。
人間界にはいいイメージしかない。
持って帰ってきた話土産も同僚に自慢げに渡した。
服についた毛玉を近くでポチポチ取ってた閻魔大王に「宣伝案内人につけるぜお前☆」と、お褒めいただいたほどだ。
…毎度のことだが閻魔大王にタメ口聞いても大丈夫な気がしてきた。
「人間界って思いっきしハズレじゃないですか……?」
「お前、見ないうちに思いっきし痩せたな。人間界で嫌なことあったのか?遠征だったろ?」
最近入ったばかりの後輩ではじめての人間界遠征から戻ったばかりである。
「ハズレでしたよ…まぁほか知らないから何とも言えませんけど、先輩がおっしゃるような事、一つもなかったですよ…」
「お前は初めてだったから心労が多かったんだろ。かくいう俺も人間界は今回で二回目だ。」
紙コップに残っていた地獄激甘ドリンクを一気に喉に流し込む。しかし、人間界に行くとなるとこのドリンクはお預けだ。ほんの少し紙コップの底に残る青色の液体を見つめる。
「まぁかもなぁ…黒はいつから行くんだ?」
隣で鎌を磨いていた同僚が、黒を見上げ聞く。
「ああ、なるべくすぐだな、明日には行けるな。」
もう一つコップ入り地獄激甘ドリンクを買うボタンを押しながら、黒は答える。
「人間界だし、楽だろ準備。」
「まぁな。」
飲み物に口をつける。これがお預けなのは惜しいが、人間界にもなかなか美味い飲み物はある。
「あれ、楽な方だったんですか…」
先ほどの後輩は、激シブドリンクが入っていた紙コップの端を噛みながらぼやいている。
「慣れてきたら早いさ。人間界はこっちと似てるからな。容姿と鎌さえどうにかすればいいだけだから。」
なかなか取れなかった汚れが取れたのだろうか、同僚が上機嫌に笑う。
「んじゃ、またな、そろそろ準備するわ。」
「頑張ってください。」
「お前食いすぎんなよー?」
口々に言われるが、背を向け手を振る。
人間界はアタリなはずだ。なかなか仕事も固定されてるしな。なにしろ変装が楽だ。
この顔をもっと肌色にして唇を赤くして…牙をしまえば良い。
黒く裾の長い洋服を引きずりながら部屋へ向かった。
「おっ、黒、行くのか。これ買ってきてくれないか??」
出発当日、テレポートマシンの前で閻魔大王に呼び止められる。
「…なんですか?」
眉をひそめ答える。
閻魔大王は我々死神の3倍ほどの大きさだ。
そんな巨体が体を揺らしてポケットの中をなにか探っているもんだから、人間の耳に変装済みの黒にとったら大変騒音である。
「これこれ、お願いだよ黒ちゃん…ね?☆」
大王は何かが書かれた紙を見せる。
「…買い物リスト」
チェロ、トランペット…etc.
人の遠征をなんだと思っているのか。
前回はスナック菓子程度だったのに。
「…何ですかこれ。」
閻魔大王を見上げる。
「前の時、あれを買ってきてくれただろ?ほら、あの小さいヤツ。あれが良くて楽器とやらを調べたんだ。頼むよ。」
きっかけは俺かっ!!!
黒は思わず心の中で叫ぶ。
確かに死神界には音楽は存在しても、演奏というものは存在しない。楽器という概念のない世界に黒が持ち込んでしまったが故に、閻魔大王が気に入ってこんな大きなものまで欲しがっているのかもしれない。
だがっ……!!と黒は思う。
俺が渡したのは人間界での運動会とやらに使われていた笛だ…。ピーっとだけいうもの。
音も美しくない、まず一音しかならない。
なぜ楽器コレクターになっているのだ。弾けないだろうに。
全く楽器への飛躍が恐ろしい。
「分かりました。けれども楽器って高いんですから。全部は買えませんよ。」
閻魔大王に逆らうという選択肢はないが、アホではないかと時々思う。
チェロだけでも一番安いものを購入したとしても結構な値段になる。
受け取ったリストを見ながら買えそうなものを探す。
「いや、それでも絞ったんだ。なるべくすべて買ってきてくれ。」
建て替えという文化はこちらにはない。
完全実費かよ、と黒が言おうと口を開きかけた時、
「んじゃ、行ってらっしゃい☆」
閻魔大王にトンっと押された。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
うっそうと草が生え茂る森の中、黒はテレポートされた。
草をかき分け、木にぶつかりながら少し進むと、崖にたどり着いた。
真夜中の2時頃。猫目の死神には問題は無い。
人間の姿で目を光らせる黒は不気味だが致し方がない。
美しい夜景であった。近くの木につかまりながら崖に腰を下ろす。
この森も大した高さはない。もやが薄くかかり幻想的な街並みの中に夜でも活動する車が所々走っている。
大きく川にかけられた橋はライトアップされ、緑、青、赤、黄…様々な色が相まって素晴らしいグラデーションになっていた。
川に反射したライトがぼやけているのもいい。
なかなか時間帯のおかげで歩く人間は見当たらない。
よっ、と声を少しだし崖から飛び降りる。
とんっ、と軽い音を立て、地面に足をつけた。
黒は大きく背伸びして空気を吸う。
ひんやりとした空気はやはり美味しいものだ。
さてここからは人間界だ!
だが、と黒は腕を組む。
あの閻魔の野郎…金が尽きるわドアホおおおおおおおおおおおおおお
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。作者の繰呂です。
なかなかファンタジー物に手をつけたことがなかったので、果たしてこれはカテゴリー大丈夫か??と頭を悩ませながら書いていました。
次回からは人間と死神のやりとりが始まります!
死神の優男、優柔不断っぷりが詰まっております(・∀・)
コミカルなお話にちょっぴりシリアスのスパイスをかけたものになります。
気晴らしに書いていますので、恐ろしいほど駄文ではございますが、宜しくお願いします!
エピローグと第1夜は第2夜以降各話に関連しますが、
第二夜以降はエピローグ+第1夜+各話で構成されたショートショートです!
噛んでいたガムが口の中で分離してとてもキモチワルイことになっていますのでここで失礼します(`・ω・)
「第三部署所属、黒の人間界遠征を命じる。」
閻魔大王は地獄のスナックをつまみながら黒を指さした。
「かしこまりました。」
このごろ新人や後輩達が多く出来、歌を歌いながら地獄スナックを食べ、気管に入ったほど上機嫌な黒は良い返事をした。
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「おい!良かったな、人間界だってな」
同僚に脇をつつかれ、紙コップに入った地獄ドリンク(辛いとばかり思うなよ?人間が飲めば1発で糖尿になる)が少し揺れる。
何日前だろうか…いや、死神界でのカウントだから人間界にカウントすると数10年になる。
人間界にはいいイメージしかない。
持って帰ってきた話土産も同僚に自慢げに渡した。
服についた毛玉を近くでポチポチ取ってた閻魔大王に「宣伝案内人につけるぜお前☆」と、お褒めいただいたほどだ。
…毎度のことだが閻魔大王にタメ口聞いても大丈夫な気がしてきた。
「人間界って思いっきしハズレじゃないですか……?」
「お前、見ないうちに思いっきし痩せたな。人間界で嫌なことあったのか?遠征だったろ?」
最近入ったばかりの後輩ではじめての人間界遠征から戻ったばかりである。
「ハズレでしたよ…まぁほか知らないから何とも言えませんけど、先輩がおっしゃるような事、一つもなかったですよ…」
「お前は初めてだったから心労が多かったんだろ。かくいう俺も人間界は今回で二回目だ。」
紙コップに残っていた地獄激甘ドリンクを一気に喉に流し込む。しかし、人間界に行くとなるとこのドリンクはお預けだ。ほんの少し紙コップの底に残る青色の液体を見つめる。
「まぁかもなぁ…黒はいつから行くんだ?」
隣で鎌を磨いていた同僚が、黒を見上げ聞く。
「ああ、なるべくすぐだな、明日には行けるな。」
もう一つコップ入り地獄激甘ドリンクを買うボタンを押しながら、黒は答える。
「人間界だし、楽だろ準備。」
「まぁな。」
飲み物に口をつける。これがお預けなのは惜しいが、人間界にもなかなか美味い飲み物はある。
「あれ、楽な方だったんですか…」
先ほどの後輩は、激シブドリンクが入っていた紙コップの端を噛みながらぼやいている。
「慣れてきたら早いさ。人間界はこっちと似てるからな。容姿と鎌さえどうにかすればいいだけだから。」
なかなか取れなかった汚れが取れたのだろうか、同僚が上機嫌に笑う。
「んじゃ、またな、そろそろ準備するわ。」
「頑張ってください。」
「お前食いすぎんなよー?」
口々に言われるが、背を向け手を振る。
人間界はアタリなはずだ。なかなか仕事も固定されてるしな。なにしろ変装が楽だ。
この顔をもっと肌色にして唇を赤くして…牙をしまえば良い。
黒く裾の長い洋服を引きずりながら部屋へ向かった。
「おっ、黒、行くのか。これ買ってきてくれないか??」
出発当日、テレポートマシンの前で閻魔大王に呼び止められる。
「…なんですか?」
眉をひそめ答える。
閻魔大王は我々死神の3倍ほどの大きさだ。
そんな巨体が体を揺らしてポケットの中をなにか探っているもんだから、人間の耳に変装済みの黒にとったら大変騒音である。
「これこれ、お願いだよ黒ちゃん…ね?☆」
大王は何かが書かれた紙を見せる。
「…買い物リスト」
チェロ、トランペット…etc.
人の遠征をなんだと思っているのか。
前回はスナック菓子程度だったのに。
「…何ですかこれ。」
閻魔大王を見上げる。
「前の時、あれを買ってきてくれただろ?ほら、あの小さいヤツ。あれが良くて楽器とやらを調べたんだ。頼むよ。」
きっかけは俺かっ!!!
黒は思わず心の中で叫ぶ。
確かに死神界には音楽は存在しても、演奏というものは存在しない。楽器という概念のない世界に黒が持ち込んでしまったが故に、閻魔大王が気に入ってこんな大きなものまで欲しがっているのかもしれない。
だがっ……!!と黒は思う。
俺が渡したのは人間界での運動会とやらに使われていた笛だ…。ピーっとだけいうもの。
音も美しくない、まず一音しかならない。
なぜ楽器コレクターになっているのだ。弾けないだろうに。
全く楽器への飛躍が恐ろしい。
「分かりました。けれども楽器って高いんですから。全部は買えませんよ。」
閻魔大王に逆らうという選択肢はないが、アホではないかと時々思う。
チェロだけでも一番安いものを購入したとしても結構な値段になる。
受け取ったリストを見ながら買えそうなものを探す。
「いや、それでも絞ったんだ。なるべくすべて買ってきてくれ。」
建て替えという文化はこちらにはない。
完全実費かよ、と黒が言おうと口を開きかけた時、
「んじゃ、行ってらっしゃい☆」
閻魔大王にトンっと押された。
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うっそうと草が生え茂る森の中、黒はテレポートされた。
草をかき分け、木にぶつかりながら少し進むと、崖にたどり着いた。
真夜中の2時頃。猫目の死神には問題は無い。
人間の姿で目を光らせる黒は不気味だが致し方がない。
美しい夜景であった。近くの木につかまりながら崖に腰を下ろす。
この森も大した高さはない。もやが薄くかかり幻想的な街並みの中に夜でも活動する車が所々走っている。
大きく川にかけられた橋はライトアップされ、緑、青、赤、黄…様々な色が相まって素晴らしいグラデーションになっていた。
川に反射したライトがぼやけているのもいい。
なかなか時間帯のおかげで歩く人間は見当たらない。
よっ、と声を少しだし崖から飛び降りる。
とんっ、と軽い音を立て、地面に足をつけた。
黒は大きく背伸びして空気を吸う。
ひんやりとした空気はやはり美味しいものだ。
さてここからは人間界だ!
だが、と黒は腕を組む。
あの閻魔の野郎…金が尽きるわドアホおおおおおおおおおおおおおお
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。作者の繰呂です。
なかなかファンタジー物に手をつけたことがなかったので、果たしてこれはカテゴリー大丈夫か??と頭を悩ませながら書いていました。
次回からは人間と死神のやりとりが始まります!
死神の優男、優柔不断っぷりが詰まっております(・∀・)
コミカルなお話にちょっぴりシリアスのスパイスをかけたものになります。
気晴らしに書いていますので、恐ろしいほど駄文ではございますが、宜しくお願いします!
エピローグと第1夜は第2夜以降各話に関連しますが、
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