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第二章 ~無償の愛~

目標と新しい場所

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 嫌な思い出を忘れようと中学三年の時、二年生のベータの男の子と付き合う事にした。学校の二から三年生は自分がオメガなことはだいたいの人が知っているだろう。
 それでも付き合ってくれたのは嬉しかった。けど、それと同時に覚悟していた。いつかは別れる、そのつもりで付き合った。結果はあっちから無理だと言われた。
 理由は、この先どんなことがあるか分からないし、オメガの先輩の発情期が怖いんです………責任とか、そう言うのあんまり分かんないのに、すみません。だっただろうか、途中からは頭の中が半分真っ白になっていてあまり覚えていない。
 ふと思った。これが原因だったのではないか、と。オメガだから、いらない。オメガは淫乱。オメガは社会的に必要ない人物。
 その程度かと思った。ひとくくりにされ、その努力すらも認められないのかと。確かに、オメガの半数は努力しても実力が実らない人間だっている。なのにこの社会では通用しない。

 なら、俺はそれを伝える一人になろう。

 この時から自分の目標が決まった。
 それからはもっと知識を得るため、勉強を頑張り続けた。頑張り続けたお陰で、公立高校の学費免除を承けられた。
 今まで頑張って勉強したかいがあった、これでなんとか孤児院には迷惑を掛けなくてすむ、そう思うと途端に力が抜けそうになる。
 けど、ここからが本当の苦労なのだとはあの頃の俺には知るよしもなかった。


ーーーーー
[ 坂本高校 入学式 ]
『…………えー、皆さんが、ここ、坂本高校を、支え、そして、偏見なく、学生生活を行えるよう、風紀を持って、勉強に励んで下さい。』

 少し長い校長先生の挨拶。ここから始まった新しい生活に馴染めるのであろうか?とふと不安がよぎった。

『………閉会式を終了致します、』

 短くも長い挨拶が終わりここから、アルファ・ベータ・オメガ共同の学生生活が始まる。そして運命の歯車も動き出してしまった、いや動かしてしまったのだ。




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