ありがとう、さようなら

大嶋 桃枝

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魅惑のローズと氷の心

愛しい母と醜い私

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「いつもありがとうね、ローズ」

母はいつも謝る。薬を与える時も食事を与える時も、服を着替えさせる時も。母は、悪くないと言うのに………

「ローズ」
「どうしたの?お母さん。」
「貴女、お金は大丈夫なの?」

また、この話。大丈夫と言っても聞かない。お金で酷い目に会ってきた母だからこそ敏感になる。たとえ、自分の身体が病に侵されても。

「えぇ、心配しないで。それに現に家賃だってご飯だって、薬代だって払えているじゃない。」
「そうだけど………」
「そんなに落ち込まないで、心配事があると気分が悪くなるでしょ?」

私は言い訳をしながら、母をなだめる。
本当は聞きたくない、そんな事。けれど母は心配してくれているのだ。だから、強くなんて言えない。

「お母さん、もう仕事に行かなきゃ。具合が悪くなったらすぐにマイケル先生に言うのよ?」
「ごめんね、ローズ」
「ううん、じゃあ行ってくるわ」

昨日はマイケルの元で寝た。だから大丈夫だ。と心の中で安堵する。たとえ偽りの安堵だと知っていても。



─────
唇に赤い紅を塗って、瞳の上にアイライナーを書き、まぶたにアイシャドウをつけて、華麗なドレスを身にまとい、最後に赤いヒールを身につけて、さぁ私の完成。歌い手のローズの完成。
外に出れば男達を魅了する私、女達は悪魔に魂を売った魔女だと罵るけれど、私は努力でのしあがった。
多少の怖さはスパイス、ちょっとした才能に努力と言う名の材料を、いや隠し味とでも言うのかしら。それを足して今の私が存在する。
多少高いお金を払ってもその倍で返ってくるのなら私はかなわない。
私は最後に手帳に文字を綴る、誰にも見られることのない様に、カギを掛けて。

「ローズ、時間だ。上がってきてくれ。」

バーバリー・ロンスのマスター、シェロン・バーバリーが声をかける。

「えぇ、分かったわ。今行くわ」

そして私はまた、舞台と言う名の場所で今宵、蝶の様に、花の様に今、舞い散る。


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