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しおりを挟む「ふう。なかなか面白い運動ですわね。鷹狩りよりもずっと疲れます」
「おや、まだ終わっていないのですわよ、奥様。このこん棒で玉を打つのです。さあさ、試してみてくださいな」
「ほうほう……」
試しに私が奥様の投げた玉を打ってみる。
騎士に向けて打ったら、また騎士が転んだ。ごめん。
「こうして打つのです」
「やってみますわ!」
と、言う感じで、ワタクシは奥様とバッティングを楽しむと、しばらくして一緒にお茶をすることになった。ちなみに、私はイギリス式のマナーもフランス式のマナーも勉強している。
まあ、これでも本気で演劇を勉強していたから、演劇の古典演劇のマナー講座も受けていたのだ。親にはカネをかけさせちゃったなあ……。
親もワタクシをデキアイしていたから、離れてちょっとさみしいけど、このちょっと厳しくてまたちょっと押されやすいところのある奥様は、少しお母さんに似てるかも。
懐かしい。
あら、マナーなんていつ勉強したの? いえいえこれはたしなみ程度のものです、なんて会話しているうちに汗も引いて奥様は公女様との森狩りのことでまた談話を暖めることになった。
「ええ!? オオカミを五匹というのは間違いでは無かったですか!?」
「こんなところで嘘をついてもすぐにバレますわ。それに、オオカミというものは舌をつかむと動けなくなるのです。問題はかみつこうとしてくるオオカミを恐れず手を突っ込めるかどうですわ」
「なんとまあ」
ワタクシが話を適当に続けていると、なんとか奥様は笑ってくれるまでに関係を改善できた。
「あなたはなかなか気骨のある娘ですわね。よろしい。本邸に住みなさい。使用人と、それから騎士をつけますから、心得があるという剣術を磨くとよいでしょう。このロッラ王国では女性も武勇を尊《たっと》ぶものですから」
「よろしいのですか、奥様!? 言ってはなんですが、ワタクシは連座制でいえば罪人の一人では!?」
「女王陛下は幼いあなたを許しました。もう十年もの時が経つのですから、私ももう許すべきなのでしょう。いままで、苦労をかけましたね。このように曲がらず育ったことは、私が意図しない幸運でした」
奥様がきつい顔つきながら優しく微笑む。
「では、騎士ならばワタシをメユたん呼びしたあの女騎士が良いですわ。試しにバッティングで玉をぶつけても痛がる声一つあげませんでしたもの。なんだか頼りない印象でしたが、あれはきっと鍛えればモノになりますわ。人は心が強い方が、体が強いよりも喜ばしいと演劇の先生に習いました!」
「演劇……? 隠れてそんなものまでかじっていらしたの? まあ、ソライユなら門兵でしたし、別に問題はないわね」
私は使用人と剣術指南、もとい、私が剣術以外を教える教え子でもあるソライユという騎士を手に入れ、るんるん気分だった。
「浴場で体を洗ってきなさい、メユ。ああ、それから、あなたのことはこれからメユと呼びますから」
「はい、奥様」
奥様の名前を思い出し、頭を下げつつ、
「はい、ランロー奥様」
と、言い直す。
奥様はにこっと笑ってくださった。
そしてワタクシは浴場へと足を運んだ。
と、そこまでは良かったけれど。
ぬるっ!
ぬるいよ!
あ、そうか、オペラ留学でいったイギリスとかイタリア、それとドイツも、お風呂はぬるかった! そういう文化か!
日本人みたいに熱いお風呂を喜ぶのって意外と少数派なんだっけ。
ていうか胸デカいな!
道理で動きづらいわけだ!
十五歳……すごい……。
その時、誰かが浴場に入ってきた。
奥様か使用人の誰かだろうかと私が鼻歌を歌う。鼻歌はブルーハーツの「人に優しく」。
「ふふっ、不思議な旋律の曲ですわね」
「えっ?」
振り返ると――
「公女殿下!?」
そこには有力公爵家の第一息女、マオン様が――いた。
なぜ!?
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