風の想い 風の行方

木葉風子

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未来⑥

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呆然と立つ楓子江莉香が
彼女の手を引き2階へと
連れて行く、その後から
春海も一緒について行った
「私も何か手伝える
かもしれないわね」
真人の母親も2階へ行く

その様子を見ていた舞桜
2階に行った母親を目で
追いながら兄たちに聞く
「おかあさん、どうして
2階に行ったの?」
どう答えたらいいのか
わからず困ってしまう

「舞桜ちゃんの
おかあさんには
俺の頼みごとを
手伝ってもらってる」
そう言って舞桜の頭を
優しく撫でる怜
「れい先生の頼み?」
「そう、だからここで
暫く待っててよね」
そんな怜を見て
嬉しそうに笑う舞桜
怜もニヤニヤと笑った

「おまえさぁ、何
そんなにニヤけてんだ」
おもわず毅が言う
「別にニヤけてないよ」
大声を出す怜
「そんなことより
おまえも準備…」
敬が怜に言った
「わかってる」
「そうそう、間違っても
花嫁よりも目立つなよ!」
尚登に嫌味を言われる
「うるさいな!
バーカ!」
照れながら2階に向かう
「大丈夫かな 
あいつの場合さ
ほんとに派手に
なりかねないからな」
文句を言いながらも
笑顔の尚登

「これでおまえの
肩の荷も降りたって
ことだよな」
英司に言われる
「何のことだよ!
俺は関係ない」
真っ赤になり
言い訳をする尚登
「あんなとこが
似てんだよな」
英司と尚登を見て言う毅
「うん、そうだよね」
輝も納得する
そんな2人を
見ながら微笑む敬

❨よかったな怜…
僕も毅も輝もおまえの
幸せを願ってるよ…❩

怜を思いながら隣を見ると
1人寂しそうに立つ正悟
彼に話しかける敬
「どうか
なさったんですか?」
敬を見た正悟
「あっ、いや…別に
なんだか複雑だなって」
「複雑?」
「彼女はふぅちゃんは
娘みたいに思ってるから」
「花嫁の父みたいですね」
「彼女にしてみれば
迷惑かもしれないけど」
その表情は本当の父親だ

敬の家の2階の一室
大きな鏡の前
そこに立つ楓子
鏡に映った自分の姿を
じっと見つめている
「大丈夫
似合ってるわよ
ほんと、可愛いから」
誉められてなんだか
気恥ずかしい楓子
「エリ、これ…
どうしたの?」
「私からの
プレゼントよ」
彼女にウインクする

「じゃあ、おとうさん
呼んでくるわ」
「おとうさんって…
エリの?」
「そうよ」
「どうして…」
ただでさえ状況が
飲み込めていないのに
ますますわからない

「もちろん
花嫁さんの
エスコートよ」

「何で…?」

「あら、だって
ふぅちゃんにとっても
おとうさんだからね」
そう言って部屋を出る

「素敵な友達ね」
真人の母親が楓子に言った
「彼女ね、ふぅちゃんの
為に走り回ってたからね」
春海が言う
「でも、どうして…?」
楓子が訊ねる
「だって、ふぅちゃん
怜くんとの結婚
迷ってたでしょ?
江莉香さん
気にしてたのよ」
「……」
「それに怜くん、あなたに
ウエディングドレスを
着てもらいたかったのよ
でも、あなたがいい返事
くれないって言ってたわ」
「だって…私」
「それにみんなだって
2人のことはずいぶん
気にかけてるわよ」

1階に下りてきた江莉香
「花嫁さんの準備
できたわよ」
「じゃあ
いよいよ結婚式だね」
父親の側に行き
声をかける
「彼女を迎えに
行きましょう」

白いタキシードに
身を包んだ怜
「へえー、わりとまとも」
ジロジロと見る
「あのね、尚さん
俺だってバカじゃない」
「まぁ、白は普段から
見慣れてるしさ!」
そう言いながらも
嬉しそうな尚登
「怜くん」
英司が呼んだ
「ほら、ネクタイが…」
曲がったネクタイを直す

3人の側を江莉香と
通り過ぎながら見る正悟
背中に視線を感じた怜
そして振り向くいたとき
正悟と目が合い会釈した
「ねえ、あの2人
どこ行くんだ?」
怜が尚登に聞く
「なんだ怜
聞いてないのか?
花嫁のエスコートだよ」

「でも、どうして彼が?」
英司が尚登に訊ねる
「俺に聞かれてもさ…」
「だって、彼は
ふぅちゃんの父親
だからね」
いつの間にか
側にいた敬が言った

部屋に戻って来た江莉香
父親も一緒にいる
花嫁姿の楓子を
愛しげに見つめる正悟
「ねぇ
凄く可愛いでしょ!」
江莉香が自慢気に言った



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