風の想い 風の行方

木葉風子

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未来⑦

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「れい先生
結婚しちゃうの?」
1階では舞桜が膨れっ面で
怜を困らせていた
「うん、そうなんだ」
彼の返事を聞き
睨みつける舞桜
「れい先生なんか
大嫌い!!」
可愛らしい拳をぶつける
それを黙って受け止める怜

「こら、舞桜
止めるんだ!」
和人が妹を怒った
「すいません
変なこと言って…」
怜に謝る真人
「無理ないよ
舞桜ちゃんは怜が
大好きなんだからね」
輝が彼女を見て
優しく笑う

「だって、舞桜
れい先生のお嫁さんに
なるって決めてたもん」
泣きそうになる
怜が舞桜の前に
ひざまずき
彼女の目を見て
優しく話し始めた

「ごめんね舞桜ちゃん
俺、舞桜ちゃんも
大好きだよ、でもね
ふぅちゃんは、彼女は
俺には誰よりも
大切な人だからね」

怜の真剣な顔を見て
彼女の顔が普通に戻った
「れい先生
ふぅちゃんって
絵本を読んでくれてる
本屋のおねえさん
なんでしょ?」
「そうだよ」
彼女を真っ直ぐ見て
答える怜

「れい先生は
おねえさんといるときが
一番たのしいの?
一番うれしいの?」

怜の目をじっと見て
聞いた舞桜

「そうなんだ」

満面の笑みの怜
そんな彼を見て言う

「それならいいよ!!」

「えっ!?」

「れい先生が
たのしいなら
うれしいなら
かまわない!!」

「舞桜ちゃん
ありがとう」

彼女をギュッと
抱きしめる怜

「怜先生、服が…」
地面にひざまついたので
土が付いてしまった
「あの…すいません
舞桜のために…」
母親が謝る
土を払いのけ
「なんの!
こんなもの!
どうってことないさ!」
最高の笑顔だ
「こんなことで
俺さまの男前が
下がるわけじゃないよ!」
「相変わらず強気だな」
みんなが感心して見る

「そりゃ、そうだろう
この格好がこんなに
似合う男はそうそう
いないだろが!」

「あぁ、そうですか!」
呆れ顔の尚登
周りにいるみんなも
大笑いした

「お待たせー」
江莉香が来た
彼女の後ろには
正悟にエスコートされた
楓子がいた

「おねえさん?」

普段とは全然違う
彼女の姿に驚く舞桜

「スゴーイ
きれいー!」

楓子の周りを
くるくると廻る
そして彼女の前で
足を止める舞桜
真っ直ぐ楓子を見つめる

「れい先生のこと好き?
誰よりも大好き?」

「舞桜ちゃん」

「ねぇ、おねえさん!」
必死で聞く舞桜

「大好きよ!
おねえさんね
怜先生のこと誰よりも
大好きだから」

楓子の返事を聞いた舞桜
彼女の手を引っ張る
「何?舞桜ちゃん
どこ行くの?」
彼女を怜の前に
連れてくる

「あ、あの…全然
似合ってないよね?」
怜の顔をまともに
見られない

「そんなことないよ
凄く可愛いよ」
彼を見た楓子

「いいのよ
お世辞言わなくても…」
彼女をじっと見つめる

側にいた舞桜が
怜と楓子の手を掴み
2人の手を握らせた
見つめ合う2人

「私の出番は必要
なかったみたいだな…」
江莉香に言った正悟
「ほんと、子供には
かなわないわ」
そう言いながら
嬉しそうな父と娘

「ほんとに僕たち
大人は出番なしだね」
「あの子がキューピット
になってくれてるよ」
輝が言った
「まぁ、確かにな」
毅も頷いた

見つめ合う怜と楓子
その2人の間で
はしゃぐ舞桜
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