桜色の思いで

木葉風子

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長い足を組み
私の方を見て
ニッコリ微笑む
切れ長の目に
筋の通った鼻
薄い唇

まるで少女漫画から
抜け出してきたようだ…

「君もここに
入院しているの?」

どうやら私に聞いてるみたい

「あっ、あの…
今日から少しの間
入院なんです」

しどろもどろに答えた

「フ~ン」

そう言うと私をじっと見る

「詩織」

廊下から母親の呼ぶ声

「しおりって
漢字でどう書くの?」

「えっ、あの…」

妙な問いかけに戸惑う

「可愛い名前だから
気になってね」

またニッコリと
微笑んでくれた

「あのぉ
言偏に寺の詩に
織物の織です」

「詩織、何してるの?」

母親の急かす声

「私、行かなきゃ
じゃあ、失礼します」

ペコリとお辞儀をして
通用口に行く
その間も背中に
彼の視線を感じた
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