珈琲いかがですか?

木葉風子

文字の大きさ
上 下
3 / 80

不思議な喫茶店

しおりを挟む
時刻は午後5時を過ぎた頃
古ぼけた商店街には似つかわしくない若い男女
細い路地の突き当りにある喫茶店の前に来て足を止めた
店じまいをする長めの髪の男性と目が合い顔を赤める女性

「もう閉店だけど
うちの店に来たのかな?」

ニコリと笑みを浮かべ訊ねる
ますます顔を赤める女性
なぜかムッとなる男性

「彼氏が怒ってるよ」
「怒ってなんか…」

おもわず言い返す男性
見た目より幼い感じの声だ

「喫茶店は店じまいだけど
別口なら開店中だよ」

真剣な目で二人を見た男性
そして木の扉を開けた

「どうそこちらへ…」

カウンターの奥のテーブルに案内される若い男女二人
「珈琲でいいかな?」
「あっ、はい」
おもわず返事をする二人
テーブルを離れカウンターに行く長髪の男性
カウンターの中にいる男性に何か言っている

「お待たせ!」
水とオシボリを持ってテーブルにやって来る長髪の男性
「はい、どうぞ!」
二人の前にコップを置いた
「あのぉ…
お店は閉店したんでしょ?」
そう訊ねる女性

「喫茶店はね…!
今から事務所になるんだよ」
「事務所…?」
怪訝な声で声の主を見る二人
「君たちが探してる場所」

「あの…ほんとにここが?」
黙り込んでいた男性が訪ねる
その声を聞いた男が
「ねぇ、ひょっとして君たち
まだ十代なのかな?」
そう言って二人をじっと見た
ブランドのスーツ姿の男女
「そのスーツは借りもの?
服に着せられてる感じだよ」
ビクッとする二人
「目一杯大人に見えるようにしてきたつもりなんだろうけどね」

しばらく続く沈黙
やがて彼女が喋りだした
「それ、半分あたってます
私はいま19歳だけど
彼はもう20歳ですから!」
正直に喋り始める

「なるほどね、でもまだ
スネかじりなんだろ?
俺から言わせりゃ
まだまだ ガキ だよ!」
その言葉にムッとする二人
「名前は?」
無言のまま
「そっか、じゃあ俺から
自己紹介するか…」

そう話ししているとテーブルの前に珈琲を運んでくる男
目の前に座っている男とは正反対な誠実な雰囲気がする
二人の前に珈琲を置いた
「こいつらには珈琲じゃなく
ホットミルクの方がいい!」
ニヤッとしながら言う男
子供扱いされ睨む女の子

「せっかくの可愛い顔が
台無しだよ♪」
キザな台詞を言う男
その様子を見るもう一人の男
すると今まで軽い口調だった男が真面目な顔になり言った


「紹介するよ
彼が君たちが探している
探偵だよ!」
しおりを挟む

処理中です...