珈琲いかがですか?

木葉風子

文字の大きさ
上 下
8 / 80

「古時計」モーニング

しおりを挟む
翌朝
開店準備のため
店の外にでてきた奏
朝から気温も高く、じっとしていても汗が滲む
「今日も暑そうだなぁ」
空を見上げる
薄い雲の間から
照りつける太陽
暑くて長い一日が始まる
店内では時が珈琲の準備中
「古時計」の開店時間には
まだなのに待っている客

「おはよう、奏くん
開店前だけどいいかな?」
「かまいませんよ
どうぞ、どうぞ!」
勝手知ったる我が家
毎回同じ席に座る
「時くん、おはよう」
カウンターにいる時にも
挨拶をする男性
親子ほど歳の離れた彼は
二人にとっては
父親のような間柄だ

店内に戻って来た奏
水とオシボリを持って行く
「ご注文はいつもと同じ?」
満面の笑みで聞く
「昨日はやすんでたね」
「たまには息抜きも必要」
そう言うとその場を離れる

カウンターの中に入り
珈琲を淹れる時の隣で
料理を始める奏

オムレツ
バタートースト
レタスにトマト
千切りキャベツ
淹れたての珈琲

トレイに乗せ、席に行く
「お待たせしました」
奏の声を聞き広げていた
新聞を閉じる
「いい香りだな~」
珈琲の香りで笑顔になる
「時くんの珈琲と
奏くんのオムレツで
一日が始まるんだよな」
さっそくオムレツを食べる
「とろとろ加減が最高だな」
美味しそうに食べる彼
「そんなに褒められると 
悪い気はしないですよ」
少し照れた顔になる奏
「君がここに来て何年に
なるのかなぁ…」
その言葉を聞いて
ふと、遠い目をした奏

店の扉の鈴が鳴り
数人の客が入って来る
「いらっしゃいませ」
彼の元を離れた
それからしばらくは
忙しい時間帯
二人しかいないので
忙しく動き回る
奥まった場所にあるので
ほとんどが常連客だが
たまに時の珈琲の評判を
聞きつけ新しい客も来る
やがて客も減り静かな時間

「忙しい時間は過ぎたな」
ホツと一息する二人
店には最初に来た彼一人
そして彼も席を立ち
店の外へと出ていった
「今日は閉店にしようか」
そう言って片付けだす

「昼から出かけるのか?」
掃除をしている奏に聞いた
「うん…いろいろ
調べることあるからな
おまえはどうするんだ?」
カウンターに身体を向け
時を見つめた
「そうだなぁ
珈琲豆の仕入れに行くか」
「じゃあ、帰りは夜か」
「多分ね…
そうだ、昨日頼まれたの
調べて机の上に置いてるよ」
おもわず時を見る
「おまえ
寝ないで調べたのか?」
「ご心配なく
対して時間かかってないよ」

カウンターから出た時
自室に戻ろうとした彼に
奏が声をかける
「なぁ、時
今夜は久しぶりに
飲みに行こうか?」
振り返って奏を見直す
「別にかまわないけど…」
「よし!
それじゃあ七時に
いつもの場所でな」
時の前をすり抜け二階へと
駆け上がって行く奏
しおりを挟む

処理中です...