珈琲いかがですか?

木葉風子

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ひと休み 写真展 準備中②

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静かな店内
珈琲の香りが店中に漂う
常連客達の話し声がざわめく

“チリーン”
入口の扉が開き
一人の青年が入って来た
「いらっしゃい」
奏の声を聞きつけ
カウンターの前に座った
「珈琲、お願いします」
時に注文する青年
一つ場所を空け奏が座る

「今日は彼女達、いないよ」
「君がそう言ってたから
来たんだよ」
「あなたが彼女達のいない
日を教えてくれって言ったろ
健(タケル)さん…
いや、“ケン兄ちゃん”かな」
奏の言葉に渋い顔をする健
「大丈夫、知ってるのは
俺と君の前にいる時だけだ」
そう言われ、時を見る健
珈琲を煎れる用意をしながら
健に会釈する

「君が、君達が
捜しやなんだね…!」

何も言わずに首を下げる時

「今日はどうしてここに?」
珈琲を彼の前に置いて聞く
「君の珈琲を飲みにね…」
「えっ…」
不思議そうな顔で健を見た
そんな時をじっと見返す健
そしてボソッと言う

「噂で聞いたことがある
会いたい人を探してくれる
探偵がいるって…

彼が煎れる珈琲は美味い
そんな話しをね」

おもわず、ニヤリと笑う時

「おまえにそんな顔は
似合わないよ」
時の方に顔を向け言った奏

「そういう顔をするのは
俺だけでいい
おまえはいつも通りでいろよ」
少し不機嫌な声で言う
「ところで奏
ほんとに双葉ちゃん達
来ないのか?」
そんなことは気にせず聞く時
「今日は萌ちゃん家で
写真を選んでるよ!」
「それって、写真展の?」
時が聞き返す
「そうだよ、今回のテーマが
“大切な宝物”なんだって
もちろん萌ちゃんが撮った
写真もあるけど、子供の頃
の写真も展示するらしいよ
そのための写真選びだよ」

「子供の頃の写真…」
健の表情が変わった
「サンタのおじさんの
写真もあるはずだよ」
おもわず顔を綻ばせる健
「おじさんの写真…
懐かしいなぁ
俺は僅かの時間しか村には
いなかったけど
一番思い出があるよ」
優しい目で思いだしていた

「是非とも
見に来てほしいなぁ」
奏の言葉に少し顔を曇らせる
「それが萌ちゃんとの
約束だからね」
健の目を見据えて言う奏

「約束…」
二人を見て言う健

「それが芦川萌さんから
受けた依頼ですから」
静かに話す時

そんな二人を黙って
見つめ続ける健

「クリスマスパーティ?」
おもわず声をあげる双葉
「そう、25日に常連客を
呼んでするんだよ」
「えっ、常連客だけで…?」
「俺は料理担当
双葉ちゃんと萌ちゃんは
クリスマスケーキ担当」
「私達だけで?」
「君達のファンも喜ぶよ」

なんだかんだと奏に煽てられ
無事にやきあがったケーキ
奏が作ったご馳走
常連客と共に楽しく行われた
そして翌日は写真展の準備
当日の朝を迎えた
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