珈琲いかがですか?

木葉風子

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時の秘密 奏の真実 前編①

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あれは何歳頃の
記憶だろう…

悪夢にうなされ
目を覚ます

「ゲホッ
ゲホッ ゲホ」
喉が詰まり咳きこむ

「大丈夫だよ」
そう言って優しく背中を
擦ってくれた温かい手

「僕が隣にいるから」
その声を聞くと不思議と
落ち着いて朝まで眠れた

「イヤだー
やめてー!」
暗闇を引き裂く叫び声

ドンドンドン
力一杯扉を叩く
カチャ
そして扉が開いた

「大丈夫か?」
扉の向こうには
真っ青な顔の時が
立っている

「大丈夫だよ
ちょっと嫌な夢を
見ちまっただけだから…」

その言葉を聞き
ベッドの側まで来る時
「ほんとに心配ないから」
少し渇れた声で言う奏

書斎の椅子をベッドの側に
引っ張ってきて座る時
「ほら、早く寝ろよ
明日も早いんだから」
「それはおまえもだろが」
「とにかく横になれ」
奏を無理やり寝かす

「わかったよ
ちゃんと寝るから
押さえつけるな」
奏の身体から手を離す時
そして優しく手を握る

「なんだかガキの頃
思いだすよ」
時の顔をじっと見つめ言う
「喋ってないで目を瞑れ」
時の言うとおりにする
時が手をギュッと握る

「時… ありがとう」

小さく呟く奏
暫くすると寝息が
聞こえてきた
静かに手を奏から離した
起きる気配がないのを
確認して部屋を
出ていった
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