珈琲いかがですか?

木葉風子

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時の秘密 奏の真実 中編③

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とりあえずカウンターの
椅子に座った奏の前に
ミネラルウォーターが
置かれそのグラスに
口をつけた

ガチャリ
そのとき木の扉が開いた
スマホの時間を見た奏
時刻は12時55分
約束の時間の5分前だ
扉の前から動かない人影
「こちらへどうぞ」
椅子から立ち上がり
声をかける
「その声は…」
驚いてこちらを見た
入口の灯りに照らされた
その顔は間違いなく
“遠野朝美”その人だ

カツン、カツンと
ヒールの音を響かせ
カウンターの側に来る
「あなたが私に何の用
なんですか?」
「以前会ったときにも
言ったけど社長のことが
知りたいから…」
「どうしてそんなに
社長のことがそんなに
気になるんですか?」

「依頼人の頼みですから」
「社長のことがですか?」
「ドラゴンズカンパニー
を陥れたい人間を探す為に
人間関係を調べることが
第一だからね…」
「つまり社長を恨んでる 
人間が今度の事件を
仕組んだってこと…?」
「それを調べる為にも
君から話しが聞きたいな」
その言葉で奏をじっと
見つめた朝美

Bar「來夢」の個室
四人掛けのテーブルに
向かい合って座る

「依頼って、誰が…?」
厳しい表情で奏を見て言う
「あなたも秘書なら
守秘義務というのは
わかってますよね」
「全く同じ事を
返させてもらうわ」
「それじゃあ
話しが進まないなぁ」
「そうね、じゃあ私が
ここにいる必要ない
みたいね…」
そう言って
立ち上がる朝美

「このままでいいのか?」
「えっ…」
おもわず奏を見る朝美

「俺の相棒が会社関係を
調べてるから…
俺は人間関係の方から
調べようと思ってね
君は両方の事を知ってる
そうだろ?」

暫く奏を見つめて
改めて椅子に腰かけた

「あなたには前にも
言われたわね
確かに秘書の中では
一番長く勤めてるけど
もっと長く勤めている
人は他にもいるわよ」

「ああ、確かにね
でも、その中に社長や
会社を陥れようとする
人間は見当たらない…
前に君が言ってたよな
社長は人を大切にする
だから、社長や会社を
恨んだりしないと思うよ」

「それは言えるわ
先代の社長から勤めてる
人たちは今の社長にも
信頼を寄せてるわ」

「でも、そんな人間も
少なくなってるかも
会社が大きくなれば
人間も増えるからね
全ての社員がそうだ
とは言えないさ!」

その言葉に顔色を
変える朝美

「ふ~ん
何か思い当たるのかな?」
「あの…今の事件とは
関係ないとは思うけど…
確かに全ての社員のこと
わかってるわけじゃない」

「だからこそ、あなたに
協力してほしいな」
「協力…何を?」

「きみの目から見て
怪しいと思う人間が
いたら教えてほしい」

「どうして私なの?」

「君の目を信頼
してるからさ!」

「あなたに信頼される
なんて…
私が社長を恨んでる
張本人だったら
どうするんですか?」

「君は大丈夫だよ!
だって君にとっては
先代の社長もそして
今の社長も大切な存在
なんだろう」

そう言って朝美を見た
何も言わずに頷いた朝美

 



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