珈琲いかがですか?

木葉風子

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時の秘密 奏の真実 中編④

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ドラゴンズカンパニーは
日用雑貨品の輸入、輸出を
扱っている商社
日用雑貨といっても
小物から大物まである

朝美が所属している
秘書室は総務部だ
重役たちの秘書が数人
その秘書たちの下に
数人の部下がいる
以前受付で会った受付嬢
彼女たちも総務部になる

そして社員の全てを
把握している人事部
その人事部の部長が
龍谷仁弥で専務と兼任
その下に課長と係長がいる

経理部の部長は
先代の社長の時代から
勤めている人間で
身内以外では社長の
信頼度が高い

営業部は5課あり会社では
一番忙しい部署でもある
それぞれの課に課長と係長
そこに数名の部下がいる

そして庶務部がある
満弥は新入社員として
所属していた
専務の息子だからと
特別扱いはされてない
彼の仕事は雑用係
みたいなものだ

「部署のことはそれぞれ
部長に任せてるわ
私は総務だから人事部の
ことはわからないわ
一番詳しいのは専務ね」

「まぁ、他の会社との
軋轢があるのかは時が
調べてるから…」

「時さんって…
あなたの相棒?」

「う~ん、相棒かぁ
でも正確にいえば俺は
雇われ人なんだけどな」

「雇われ人…?」

「おまけにあいつは
大家だしな、俺は
ただの居候だからさ」

「でも、平等に
見えたわよ」
「まぁ、あいつは
人見知りだから
俺が表に出てるからな」
「そういう
役割分担なのね」
「役割か…まぁ
そうなるのかなぁ」

コンコン
個室のドアを叩く音
「はい、どうぞ」
ドアが開き飲み物を
持って入って来た
「もう話しは終わった?」
テーブルにカップを置く
「口にあうか
わからないけどどうぞ」
「へぇー、何だろう?」
「残念ながらお酒では
ありませんよ」
「昼間から飲まないよ」
「まだ終わらないの?」
「もう終わりにするよ」

飲み物を口にする
「紅茶、でもこの味は…
ジンジャーと林檎?」
「わぁー、カクテルに
して飲みたいわ」
「じゃあ、今度来たとき
カクテルで出すわね」
そんな話しで盛り上がる
女性二人

「女性ってさ
幾つになっても“女子”
なんだねー!」
ニヤニヤしながら見る奏
「それって
どういうことですか?」
女性二人に
言い寄られる奏
「別に変な意味じゃない
たださ、女性ってさ歳に
関係なくキャピキャピ
してると思ったからさ
男は歳とるとタダの
おっさんになるからさ!」

「おっさんだなんて
奏さんは違うでしょ
まぁ、うちの旦那なら
そうかもしれないけどね」
クスクス笑って奏を見る

「いや、俺や時と
おたくの旦那
似たようなものさ
特に最近は若い子が
来るようになったから
ますます歳食った感じ
がするよ」

「若い子って…
双葉さんたち?」
笑ってる彼女の横で
奏をじっと見てた朝美が
訊ねてくる
「うん、まぁ、そうだね
あのさ双葉ちゃんだけど
暫く古時計にいるよ」
「えっ…それって?」
「満弥からの提案だよ
ただでさえこの前の
週刊誌のことでいろいろ
大変なのにこの事件…
今、家に帰ったら
マスコミに捕まるだろ
あいつらさ騒騒しいから」

「週刊誌って
次期社長候補の記事?」

「そうだよ
でも、おかしいよな
二つもマイナスなことが
起こるなんて…
ただの偶然かな」

「何…?その言い方だと
偶然じゃないってこと?」

「さぁ、ただ偶然が
重なるなんてさ
それも会社にとっては
マイナスなことだからさ」

「つまり誰かが
ドラゴンズカンパニーを
陥れようとしてる…?」

「だから、それは今
俺の相棒が調べてる
それとあなたからの
話しで何かが
見えてくるかもよ」

「あなたの相棒って
龍谷の家に来てた…」

「時…新時(あたらしとき)
喫茶店の店主で探偵だよ
あなたは時のことが
気になってるみたいだな」

その言葉に顔色を変える

「やたらと時のことを
聞いてただろ、あいつの
何が気になるんだ?」

「別に何も
気にしてないわよ」
と言いながらも奏から
顔を背けた

「まぁ、今は関係ないか
とにかくあなたから
聞いたことと時が調べた
ことでわからないことが
あったら連絡するから

あなたも何かおかしいと
思ったら連絡してほしい
その番号は捜しやの番号
だからね!」

「わかったわ…」

「じゃあ
俺は失礼するから
女子二人で楽しんで」

それだけ言って「來夢」
の外に出てきた奏
地下街はまだ灯りがなく
薄暗い、一階に続く階段に
向かって歩きだす
階段を上がると
目映く光る太陽に
おもわずクラっと目眩を
起こしそうな眩しさだ

❨太陽に殺されそうだなぁ❩
眩い光から逃げて
木陰に入る
❨約束の時間まで
まだ30分はあるな…❩

ビルとビルの間に
挟まれた細い路地
太陽の光さえも
差し込まず薄暗い
上を見上げても
遥か上まで続くビルの壁
壁にもたれ目を閉じる
ビルの間を抜ける風は
少しだけ冷たい
目の前の陽の当たる歩道
そこを歩く人たちは
太陽のように眩しく
明るい表情だ

❨まぁ、この細くて
暗い場所の方が
俺には似合うけどな…❩

そんなことを思い
空を見上げた
ビルとビルの隙間から
青空と流れる白い雲

❨あの空が時
流れる雲が俺
なのかも…❩

暫く空を見上げていた
そのときジャケットの
ポケットに入れていた
スマホのバイブが揺れた
「もしもし」
二言三言話し電話を切る
細い路地から出て目的地
に向かって歩きだした





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