珈琲いかがですか?

木葉風子

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時の秘密 奏の真実 中編⑤

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喫茶「古時計」
ただいま臨時休業中

「時さん
下りてこないの?」
「そうなのよ」
誰もいない店のテーブル
そこに座る女性二人
ここに避難中の双葉と
商店街に引っ越してきた
ばかりの由季
テーブルには珈琲カップ
サンドイッチが乗った皿
どうやら昼食中のようだ

「奏さんはどこなの?」
「うん、デートだって
まぁ、何か調べてるん
だろうけどね…」
大きなため息をつく双葉
「冴えない顔
してるわよ」
「そりゃ、そうだわ
自分の身内が警察に
疑われてるのよ
それなのに何もできない
凄く歯がゆい気分だわ」
「だから二人に
頼んだんでしょ?」
「うん、まあね…」
そして、また
ため息をついた

「私はまだ二人のこと
よく知らないし、まして
もうひとつの仕事のこと
わからないけど、でもね
二人のことは信頼できる」

「由季…うん、そうよね
私も知り合ってから
そんなに経たないけど
あの二人なら大丈夫
だって思えるわ」

ガタン
席を立ち珈琲カップと
皿を手に持ちカウンター
へと歩いていく
ガチャリ
店と自宅を繋ぐ
ドアが開く
疲れた様子の時が来る

「時さん…」
カウンターへとくる
時と目が合った
「お昼ごはんは?」
カウンターの外にいる
双葉が訊ねた
「双葉ちゃん、今は休み
だから自分でするよ」
そう言いながら珈琲の
準備をしてキッチンに
行き料理を作り始める

「心配しなくても
人並みにはできるから」
そう言って料理を作る
手付きは慣れたものだ
初めは心配そうに見てた
そのうち関心して見る
「まぁ、一応
調理師免許は持ってるよ
店のメニューの料理も
作れるけどね」
その言葉に目を丸くする
双葉と由季

「親がやってるときは
母親と一緒に作ってたよ
奏が来てからはあいつに
任せてたからね」
そんな話しをしてる間に
焼きめしが出来上がった
「でも、今は奏さんが
料理担当ですよね
時さんはどうして
作らないんですか?」

「そうだな、それぞれの
役割だからかな…!」

「役割…?」

「あいつがここに
来た頃は、うちの母親に
料理教わってたんだよ
最初はほんとに
ウエイターだったけど
いつの間にか母親に
代わって作るように
なってたなぁ…
その頃は二人でキッチン
にいることがほとんど
だから喧嘩ばかり
してたかもね…」
懐かしそうに話す時

「それから暫くして
奏が調理師免許とって
両親がペンションを
経営するからって
ここを出ていったんだ」
「そういえば前に
そんなこと言ってたわね」

「それからは二人だよ
いまはキッチンのことは
あいつに任せてるから」
「確かに奏さんの料理
美味しいからね」
「そう!
あいつのおかげで
この店は繁盛してる」
満面の笑みで言う時

「あら
もちろん奏さんの料理も
だけど時さんの珈琲だって
凄く美味しいわよ」
真っ直ぐに時を見て
言った双葉
少し照れた顔になる時

「この店は二人が
いるから来てくれるのよ
この商店街にとっては
大切な存在なんだって
直人さんが言ってたわ」
二人の話しを聞いていた
由季がそう言った





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