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真紅の剣十字
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湿った森の空気を震わせ、リザードマンの精鋭部隊が地響きを立てて進軍していた。
先頭に立つのは、族長のセキウンだ。彼の碧き鱗は歴戦の傷でさらに硬度を増し、その双眸は揺るぎない自信に満ちていた。
「よいか! 目標はオークの里本陣。だが、奴らは頑強だ。長期戦となれば我らとて消耗は避けられん」
セキウンは背後の戦士たちに太い声で檄を飛ばす。
「故に、まずは手薄な『ゴブリンの里』を奪取する! そこを我らの橋頭堡(きょうとうほ)とし、物資の集積地とするのだ。あのひ弱な小鬼どもなど、我らの爪牙にかかれば一揉みよ!」
「「「オオォォッ!!」」」
リザードマンたちの咆哮が森の鳥たちを驚かせ飛び立たせる。彼らにとって、ゴブリンの里の制圧など、本戦前の軽い準備運動に過ぎないはずだった。
隣を歩くオークのレグルスも、重い戦斧を担ぎながら鼻を鳴らす。
「フン、セキウン殿の言う通りだ。あの小鬼ども、最近妙に静かだと思えば、恐怖で巣穴に引きこもっておるのだろう。手間が省けていい」
彼らは森を抜け、ゴブリンの里があるはずの開けた場所へと躍り出た。
――その瞬間。
セキウンの足が、ピタリと止まった。
彼に続く数百の兵たちも、息を呑んで立ち尽くす。
「……な、なんだ、これは……?」
セキウンの口から、間の抜けた声が漏れた。
そこにあるはずの、粗末な木の枝と泥で作られた今にも崩れそうなゴブリンの住処は、影も形もなかった。
代わりに彼らの前に聳え立っていたのは、黒く塗り固められた土と丸太による、堅牢な「防壁」だった。
壁の上部には鋭利な逆茂木(さかもぎ)がびっしりと並び、等間隔に設置された物見櫓からは、侵入者を射抜くための狭間(さま)が黒い口を開けている。
それは、知能の低いゴブリンが築ける代物ではなかった。明確な軍事目的を持った、質の悪い冗談のような「要塞」だった。
そして、その異様な光景の中で、最もセキウンの目を引いたもの。
要塞の中央、一番高い櫓の上に、風に煽られバタバタと音を立てて翻る、一枚の「旗」があった。
血のように赤い生地。その中央には、白く鋭利な剣が交差する紋章が、禍々しく浮かび上がっている。
「レグルス殿……! あれは一体なんだ!? ゴブリンどもが、自力であのようなものを築いたとでも言うのか!?」
セキウンが問いただすと、隣のレグルスの顔色が青ざめているのが見えた。レグルスはその旗を睨みつけ、忌々しそうに唸
「……違う、セキウン殿。あれはただのゴブリンではない」
レグルスは戦斧を握る手に力を込め、吐き捨てるように言った。
「あの旗印……『赤巾党(せききんとう)』だ」
「赤巾党……だと?」
「ああ。最近、この森の闇で勢力を伸ばしているという武装集団だ。……まさか、あの最弱のゴブリンどもまでが、奴らの支配下に落ちていたとはな、その党首が我らの目標パエルだ」
風が強まり、赤い旗がさらに激しく音を立てた。それはまるで、これから始まる血なまぐさい戦いを予感させる、死神の嘲笑のようにも聞こえた。
先頭に立つのは、族長のセキウンだ。彼の碧き鱗は歴戦の傷でさらに硬度を増し、その双眸は揺るぎない自信に満ちていた。
「よいか! 目標はオークの里本陣。だが、奴らは頑強だ。長期戦となれば我らとて消耗は避けられん」
セキウンは背後の戦士たちに太い声で檄を飛ばす。
「故に、まずは手薄な『ゴブリンの里』を奪取する! そこを我らの橋頭堡(きょうとうほ)とし、物資の集積地とするのだ。あのひ弱な小鬼どもなど、我らの爪牙にかかれば一揉みよ!」
「「「オオォォッ!!」」」
リザードマンたちの咆哮が森の鳥たちを驚かせ飛び立たせる。彼らにとって、ゴブリンの里の制圧など、本戦前の軽い準備運動に過ぎないはずだった。
隣を歩くオークのレグルスも、重い戦斧を担ぎながら鼻を鳴らす。
「フン、セキウン殿の言う通りだ。あの小鬼ども、最近妙に静かだと思えば、恐怖で巣穴に引きこもっておるのだろう。手間が省けていい」
彼らは森を抜け、ゴブリンの里があるはずの開けた場所へと躍り出た。
――その瞬間。
セキウンの足が、ピタリと止まった。
彼に続く数百の兵たちも、息を呑んで立ち尽くす。
「……な、なんだ、これは……?」
セキウンの口から、間の抜けた声が漏れた。
そこにあるはずの、粗末な木の枝と泥で作られた今にも崩れそうなゴブリンの住処は、影も形もなかった。
代わりに彼らの前に聳え立っていたのは、黒く塗り固められた土と丸太による、堅牢な「防壁」だった。
壁の上部には鋭利な逆茂木(さかもぎ)がびっしりと並び、等間隔に設置された物見櫓からは、侵入者を射抜くための狭間(さま)が黒い口を開けている。
それは、知能の低いゴブリンが築ける代物ではなかった。明確な軍事目的を持った、質の悪い冗談のような「要塞」だった。
そして、その異様な光景の中で、最もセキウンの目を引いたもの。
要塞の中央、一番高い櫓の上に、風に煽られバタバタと音を立てて翻る、一枚の「旗」があった。
血のように赤い生地。その中央には、白く鋭利な剣が交差する紋章が、禍々しく浮かび上がっている。
「レグルス殿……! あれは一体なんだ!? ゴブリンどもが、自力であのようなものを築いたとでも言うのか!?」
セキウンが問いただすと、隣のレグルスの顔色が青ざめているのが見えた。レグルスはその旗を睨みつけ、忌々しそうに唸
「……違う、セキウン殿。あれはただのゴブリンではない」
レグルスは戦斧を握る手に力を込め、吐き捨てるように言った。
「あの旗印……『赤巾党(せききんとう)』だ」
「赤巾党……だと?」
「ああ。最近、この森の闇で勢力を伸ばしているという武装集団だ。……まさか、あの最弱のゴブリンどもまでが、奴らの支配下に落ちていたとはな、その党首が我らの目標パエルだ」
風が強まり、赤い旗がさらに激しく音を立てた。それはまるで、これから始まる血なまぐさい戦いを予感させる、死神の嘲笑のようにも聞こえた。
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