96 / 124
第九章
未来への選択②
しおりを挟む
この店は店長の人柄でお客様が絶えないのだ。
「凪紗ちゃんの後に入った後輩の子達も、いい先輩がいるからしっかり成長してくれてるわ」
「そんな……」
今までこんな面と向かって褒めてもらう機会がなかったので戸惑ってしまう。
「凪紗ちゃんは今まで頑張ったわ。そして、十分実力もついた。そろそろこの店から卒業するタイミングなのかもしれないわね」
「店長……」
「七海ちゃんもいい子に育っているのも、頑張る凪紗ちゃんの背中を見ているからよ」
私が悩んでいたことを理解してくれている。何もなければ、ずっとこの店で働きたい。不満なんてないのだから……
でも私には守るべきものがあって、大切な人がいる。
「今までお世話になって感謝の気持ちでいっぱいです。本当はずっと店長と働きたかった。でも……」
「わかってるわ」
いつもの母のような姉のような笑顔で微笑んでくれている。
「ありがとうございます」
私は長年お世話になった美容室を、退職する決心をしたのだ。
店長と話をした夜、七海が寝てから湊翔さんへメッセージを送った。すると、タイミングが良かったのかすぐに電話が鳴る。
「もしもし」
「どうした? 話があるんだろう?」
「あ、うん。今大丈夫だったの?」
「ああ、今日は日勤で家に帰ってた」
「お疲れ様」
「七海は?」
「もう寝たよ」
「そうか。そんな時間か……。で? 話って?」
「うん、今の美容室を辞めようと思って」
「ええ⁉ 急にどうしたんだ?」
今までそんな話をしたことがなかったので驚いている。
「ずっと考えてたの。湊翔さんと籍を入れたのに、離れたままでしょう?」
「でも……」
「正直、ずっとお世話になってたから寂しい気持ちはあるよ。店長をはじめ、同僚もお客様もいい人達ばかりだから。でもね、私も新人の頃からは成長しているはずだし、美容師って仕事はどこでもできるから。七海のためにも、もちろん私のためにも湊翔さんと一緒に暮らしたいなって」
「……」
電話の向こうが静かになった。私が勝手に思っているだけで、湊翔さんには迷惑だったのだろうか。
「凪紗ちゃんの後に入った後輩の子達も、いい先輩がいるからしっかり成長してくれてるわ」
「そんな……」
今までこんな面と向かって褒めてもらう機会がなかったので戸惑ってしまう。
「凪紗ちゃんは今まで頑張ったわ。そして、十分実力もついた。そろそろこの店から卒業するタイミングなのかもしれないわね」
「店長……」
「七海ちゃんもいい子に育っているのも、頑張る凪紗ちゃんの背中を見ているからよ」
私が悩んでいたことを理解してくれている。何もなければ、ずっとこの店で働きたい。不満なんてないのだから……
でも私には守るべきものがあって、大切な人がいる。
「今までお世話になって感謝の気持ちでいっぱいです。本当はずっと店長と働きたかった。でも……」
「わかってるわ」
いつもの母のような姉のような笑顔で微笑んでくれている。
「ありがとうございます」
私は長年お世話になった美容室を、退職する決心をしたのだ。
店長と話をした夜、七海が寝てから湊翔さんへメッセージを送った。すると、タイミングが良かったのかすぐに電話が鳴る。
「もしもし」
「どうした? 話があるんだろう?」
「あ、うん。今大丈夫だったの?」
「ああ、今日は日勤で家に帰ってた」
「お疲れ様」
「七海は?」
「もう寝たよ」
「そうか。そんな時間か……。で? 話って?」
「うん、今の美容室を辞めようと思って」
「ええ⁉ 急にどうしたんだ?」
今までそんな話をしたことがなかったので驚いている。
「ずっと考えてたの。湊翔さんと籍を入れたのに、離れたままでしょう?」
「でも……」
「正直、ずっとお世話になってたから寂しい気持ちはあるよ。店長をはじめ、同僚もお客様もいい人達ばかりだから。でもね、私も新人の頃からは成長しているはずだし、美容師って仕事はどこでもできるから。七海のためにも、もちろん私のためにも湊翔さんと一緒に暮らしたいなって」
「……」
電話の向こうが静かになった。私が勝手に思っているだけで、湊翔さんには迷惑だったのだろうか。
203
あなたにおすすめの小説
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
君と出逢って
美珠
恋愛
一流企業を退職し、のんびり充電中の元OL純奈。だけど、二十七歳を過ぎて無職独身彼氏ナシだと、もれなく親から結婚の話題を振られてしまう。男は想像の中だけで十分、現実の恋はお断り。純奈は、一生結婚なんてしないと思っていた。そんな矢先、偶然何度も顔を合わせていたイケメン外交官と、交際期間をすっ飛ばしていきなり結婚することに!? ハグもキスもその先もまったく未経験の純奈は、問答無用で大人のカンケイを求められて――。恋愛初心者の元OLとイケメン過ぎる旦那様との一から始める恋の行方は!?
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる