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トラヴェエ王太子の責務と恋
□ふたりの夕食2※
しおりを挟むゆっくりとグラスの中のワインを注ぎこまれ、ぶどうの香りとアルコールの強い匂いが鼻を抜けていく。
拒絶することは許されず、ゆっくりとだけど確実に流し込まれるワインを零さないよう何とか必死で飲み干した。
普段アルコールを摂取しない私は、たった一杯のワインで思考が混濁し始め、頭がぼうっとして全身が熱くなってきた。
ヒュー兄様は空になったグラスと火照って熱くなった私を見ると、満足そうに目を細めた。
「おかわりは、いる?」
涙目になりながら首を横に振ると、ヒュー兄様は、そう?と、いい空になったワイングラスをテーブルに置き、デキャンタからワインを注ぐと一気にグイッと煽った。
次にヒュー兄様は、食べやすいように既に皮が剥かれていたぶどうを一粒手に取り、その瑞々しい果汁を滴らせた果実を躊躇なく私の口元に運んで薄く笑みを湛えていった。
「さぁ、リーナ…口を開けて」
ヒュー兄様の艶かしい声と色香漂う表情に、身体が沸騰しそうになる。
自分が自分でなくなる感覚に激しい羞恥心が襲い、耐えきれずいやいやと頭を振ると、恐ろしく甘いヒュー兄様の声が降ってきた。
「だぁめ。ほら、口開けて。」
その声音は、蜂蜜のようにとろりとした甘さを含み、私の思考に染み渡り蕩かしていく。先程同様、私の本能が引き返すなら今だと激しく警鐘を鳴らしていた。
ヒュー兄様への気持ちが何かわからないのに、これ以上進んではいけない、引き返さなければとそう自分の気持ちに歯止めをかけるように身体を捩って言う。
「ん、自分で…食べられるから………恥ずかしいよ…」
「おっと、ダメだよ、リーナ。決して逃がしはしない。」
そう言いながらヒュー兄様は組み上げた足と左腕の戒めに一層強い力をいれ、私を閉じ込めている檻をより強固なものとした。
もう逃げられない……
それでも最後の抵抗で私は身を捩ったが、呆気なくぎゅっと抱き込められ、先程よりも更に拘束されビクともしない。
キッと恨みがましく見上げると、ヒュー兄様から優しく、だけど激しく情欲の篭った瞳で見つめ返され、先程よりも更に甘い声で囁くように言い含められる。
「んーん、だめだっていってるでしょ。ほら、恥ずかしがらないで口開けて?幼い時はいつもこうやって食べてたでしょ?」
そういうと、今度は少し強引にぶどうを押し当ててきた。
大きな果実は口に入り切らず、ヒュー兄様は食べやすいように指で潰しながら私の口に押し込んでいった。
飲み込むのに間に合わなかった果汁が、口から溢れて首元を濡らしていくと、それをヒュー兄様が素早く指で掬い私にゆっくりと見せつけるようにねっとり舌で舐めた。
「ふふっ、甘いね。リーナの味かな?」
その仕種が酷く扇情的で背筋がゾクゾクとした。堪らず目を背けた私の頬に、先程までねっとりと舐っていた指を添えると、ヒュー兄様の方へ向き直らせ甘い言葉で更に私の思考を蕩かしていく。
甘い言葉でトロトロに蕩かされてしまった私は、ヒュー兄様の指に触れられて無意識に物欲しそうに口が開いてしまう。そんな私の変化を見逃さなかったヒュー兄様は、テーブルの上のぶどうをもう一粒摘んで私の口元に運ぶと、極上の甘さを含んだ笑みを浮かべて言った。
「ん?もうひとつ?はい、どうぞ。」
頭の芯が蕩けきった私はもう抵抗しなかった。
唇に果実を押し付けられて私は薄く口を開いてそれを受け入れる。
しかし、今度は果実を押し付けるだけで、ヒュー兄様はいつまで経っても指で潰してくれなかった。
訝しげに見上げるとヒュー兄様の瞳が私をじっと見ているだけで、今度は口に入れてくれるつもりはなさそうだ。
焦れったさに耐えきれなくなった私は、じゅるじゅると音を立ててぶどうの実を吸った。
「んぅ…おっきぃ…」
水分をたっぷりと含んで瑞々しい果実は弾けるような弾力で、一生懸命吸ってもなかなか口に入らず、入り切らない果汁がだらしなく口の端からボタボタと零れていった。
「あぁ、また溢れさせて…勿体ない。リーナは仕方がない子だ。ここは私が綺麗にしてあげようね。」
ヒュー兄様はそう言うと熱い吐息を漏らすと、首筋に唇を寄せねっとりと味わうように舌を鎖骨から首筋、顎、唇に向けて這わせていく。
「ひゃあぁぁん…」
ゾクゾクとした快感が背筋を駆け抜け私の口からは甘い声が漏れた。
ヒュー兄様の舌が首筋を舐め、ヒュー兄様の唇が耳たぶを食む。
ヒュー兄様に触れられているという事を自覚するだけで快感は何倍にも膨れ上がり、自然と身体がビクビクと跳ね、次第に甘い疼きへと変わっていく。
ヒュー兄様の唇が耳たぶを離れ、頬に軽く触れた後、唇同士が触れそうな距離で情欲の篭った熱い吐息を漏らす。
「あぁ、ここにも美味しそう果実がある。ねぇ、リーナ、食べてしまって構わないよね?」
一瞬視線がぶつかると、そこには情欲に濡れ真っ赤に染まった捕食者のようなヒュー兄様の瞳があった。
食べられる…
そう思った時には噛み付くように激しく口付けられていた。
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