【R18】漆黒の王太子の一途で重い純愛〜痴情の果てに初恋の姫を溺愛する

夢乃 空大

文字の大きさ
22 / 31
トラヴェエ王太子の責務と恋

□朝の身支度

しおりを挟む
 
 いつの間にか眠ってしまったのだろうか。目が覚めると私はヒュー兄様の寝室のベッドにいた。

 苦しいコルセットは外され、来ていたドレスもいつの間にか気心地の良いネグリジェタイプの夜着に着替えさせられていた。
 隣をみるとヒュー兄様の姿はなく、リネンの冷たさから既に公務に向かった事が伺える。

 これは……もしかするとヒュー兄様が……

 途端に顔に熱が集まり、羞恥で居た堪れなくなり、頭までリネンに潜り込んで悶えていると、部屋の入口から声がした。


「アイリーン様、お目覚めでございますか?」

「あ、あっ…はいっ!起きています!」


 私が慌てて飛び起きてベッドからするりと降りると、侍女がガウンを持ってやってきて肩にかけてくれた。
 昨夜のお酒が残っているのか少し頭が重かったが、そのまま続きの部屋へ向かうと、昨夜ヒュー兄様と食事をしたテーブルには既に冷めても食べられる軽食が用意されていた。

 侍女にカウチに腰掛けるように案内されると、給仕が直ぐにカップにお茶を注いでくれた。
 寝起きで喉が乾いていたので有難くカップに手を伸ばすと、先程の侍女にピシャリと制止される。


「お待ちくださいアイリーン様、お目覚めになられたばかりですので、まずはこちらの果実水からお召し上がりくださいませ。」


 そう言うと、侍女は私の目の前によく冷えた果実水の入ったグラスを置いた。


「昨夜はお酒をお召しになられたと聞きましたので、果実水に少しのビネガーを足したものをご用意させていただきました。少しでもご気分が良くなられるとよいのですが。」


 そう言われて、私は素直に果実水を手に取り口に運ぶ。


「……おいしい。」


 果実水は冷たくてほんのり酸味があった。爽やかな喉越しで乾ききった喉を潤してくれたと同時に重かった頭もスッキリしてくる。
 私がゆっくりとグラスの果実水を飲み干すと、侍女は満足そうににっこりと微笑んだ。


「それはようございました。後はお好きに召し上がって頂いて大丈夫です。それではごゆっくりお召し上がりくださいませ。」

「あ、はい…ありがとうございます。」


 侍女はそう言い、目の前にサンドイッチとサラダを取り分けてくれると、一旦部屋からさがっていった。
 用意されたサンドイッチは温かいお茶との相性も抜群でとても美味しかった。

 軽食を一通りとり終わると、先程の侍女がやってきて深く一礼をする。


「アイリーン様、申し遅れましたが、私侍女長のエマと申します。以後お見知り置きくださいませ。王太子殿下から、アイリーン様には食事をとって湯浴みが終わったら執務室に来るようにと仰せつかっております。早速お支度お手伝いいたしますね。」


 侍女長のエマはニッコリと有無を言わさない貫禄でそう告げた。

 その表情と立ち居振る舞いで思い出した……
 エマといえば、ヒュー兄様の元乳母で優しくも厳しい方だった。

 同時に、幼い頃にヒュー兄様とジュー兄様と中庭で遊んでいる時に、お転婆をして叱られて雷…それも魔法で物理的な雷落とされた事を思い出し思わず遠い目をする。


「あの…エマ……その…以前は……」

「ふふふ、はい、すっかり淑女らしくお綺麗になられましたね、アイリーン様。」

「あ、はい…ありがとうございま…す……」


 過去を思い出して身がぶるりと竦み上がる。


「大丈夫ですよ。すっかり淑女になられたアイリーン様に雷など落としませんから。さぁ、湯浴みの準備が整いましたので参りましょうか。」

「は、はひっ……」


 コクコクと頷く私を見てエマはニッコリと綺麗な笑顔を浮かべると、私の手を取った。



 ◇◇◇



 湯浴みを終えると、エマと侍女達が淡いブルーのドレスと装飾品を手に持ってやってきた。


「アイリーン様、こちら、ヒューゴ殿下からの贈り物でございます。」


 ヒュー兄様の用意したブルーのドレスは陽に当たるとシルバーの光沢がキラキラと輝いてとても美しく、侍女に着せてもらうと薄手のシルク生地がサラリとしてとても着心地も良かった。重ねてあるチュールが歩く度にフワフワと揺れとても可愛い。

 流石ヒュー兄様、私の好みを抑えているところが憎いなぁ。


 ドレスを着せて貰った後は続いて髪を整えて貰う。
  いつもは腰まである髪をおろしたままかハーフアップにしていたのだが、エマが「今日は結いましょう」と言い出し、侍女数人掛りで香油を塗るとせっせとブラッシングを始めた。


「サラサラで綺麗な御髪ですわね。」


 侍女達は恍としながら数人で細かい三つ編みを幾つか作ると編んでいない髪と纏めてふんわりと緩めにひとつの大きな三つ編みに結っていった。
 それを前側に垂らしたら、結目にパールや宝石の可愛らしい髪飾りを幾つか挿して貰う。いつもと違う髪型だがとても可愛くて気に入った。

 ついでに薄く化粧も施して貰い、首元に小粒な真っ赤なガーネットが付いたプラチナの首飾りを付けて貰うとヒュー兄様の執務室へ向かう為、ヒュー兄様の執務室を後にした。


 明るい陽ざしの中、色とりどりの花が咲く中庭を抜けると政務棟は目前だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。

結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる

狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。 しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で……… こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...