30 / 31
ハイデリガ王女の決意
不安な気持ち
しおりを挟む
「姫様…何かお悩みですか?」
立場を弁えているのかいつも私と一定の距離を保っていたクロードが、よっぽど心配してくれたのだろう、気遣うように声をかけながら私の横に腰を下ろした。
クロードの声はとても心配そうで、例えそれが職務上だったとしても嬉しかった。
同時に、幼馴染なのに、『姫様』だなんて、どこか一線を引かれている事にチクリと胸が傷む。
私はふるふると頭を振り、クロードを見つめて言った。
「クロード、ふたりきりの時は昔のようにティアと呼んでって言ってるじゃない。」
「姫様、職務中はそういう訳には…」
「クロード、お願いよ。今にも不安と責任で押しつぶされそうなの…」
そういうと、クロードは短くふぅと息を吐き、着ていたマントを外して私の肩にかけると、私の手の上に自らの手を重ねた。
「……わかったよ、ティア。随分と顔色が悪いが、大丈夫か?」
その優しげな口調に冷えきっていた心が温まっていくのを感じた。それでも拭えない不安が押し寄せてきて、その温かな気持ちを押し返していく。
「クロード…私、どうしたらいいのかしら?オラダスへ行くべきなのはわかっているのだけれど……」
わかっているけれど、それを受け入れられない自分がいる。それ以外に道が無い事もわかっているのに、覚悟が決まらない自分が酷く情けなかった。
それに、オラダスへ行く事を考えただけで、恐ろしさで震えが止まらなかった。
私が行けば我が国に侵攻しない、そういう話であったがそれがいつまでなのか明言をされていない。
その約束は一時の事なのか、それとも永久的に続くのか……
それよりも、私はあんなに恐ろしい国で生きていけるのか……
考えれば考える程に不安で心が押しつぶされそうだった。
「クロード…怖いの……私が行くことが国の為なのであれば、私は…行く、つもりなのだけれども、私が行ったとして、本当に彼国は約束を守るのかしら…私は……」
言いながら私は震える手を握りしめる。
「ティア……そんな風に力任せに握るものではない。君の美しい手に傷が付いてしまうよ。握るなら俺の手にしろ…ほら。」
クロードはそう言うと、私の震える手を安心させるかのように、優しく解き、指を絡めると固くぎゅっと握った。
ハッと振り向きクロードを見上げると、いつもは瞳を合わせてくれないクロードが私を優しく見詰めていた。
「ティア、俺はお前が決めた事に従うよ。もしも…オラダスに行くのなら、俺も一緒に行く。お前は俺の命だ。絶対に守るから。」
「クロード……」
そしてクロードは立ち上ると、私の前に跪き胸に手をあてた。
「ハイデリガ王国ブルーム騎士団団長であり、クリスティア・フォン・ハイデリガ王女殿下の守護騎士である、クロード・バリーはこの命に替えても…いや、命が尽きようとも必ず貴方様を御守り致します。」
そう言って私の手に口付けを落とした後、すっと見上げたクロードの瞳は優しい慈しみの情で揺れていた。
立場を弁えているのかいつも私と一定の距離を保っていたクロードが、よっぽど心配してくれたのだろう、気遣うように声をかけながら私の横に腰を下ろした。
クロードの声はとても心配そうで、例えそれが職務上だったとしても嬉しかった。
同時に、幼馴染なのに、『姫様』だなんて、どこか一線を引かれている事にチクリと胸が傷む。
私はふるふると頭を振り、クロードを見つめて言った。
「クロード、ふたりきりの時は昔のようにティアと呼んでって言ってるじゃない。」
「姫様、職務中はそういう訳には…」
「クロード、お願いよ。今にも不安と責任で押しつぶされそうなの…」
そういうと、クロードは短くふぅと息を吐き、着ていたマントを外して私の肩にかけると、私の手の上に自らの手を重ねた。
「……わかったよ、ティア。随分と顔色が悪いが、大丈夫か?」
その優しげな口調に冷えきっていた心が温まっていくのを感じた。それでも拭えない不安が押し寄せてきて、その温かな気持ちを押し返していく。
「クロード…私、どうしたらいいのかしら?オラダスへ行くべきなのはわかっているのだけれど……」
わかっているけれど、それを受け入れられない自分がいる。それ以外に道が無い事もわかっているのに、覚悟が決まらない自分が酷く情けなかった。
それに、オラダスへ行く事を考えただけで、恐ろしさで震えが止まらなかった。
私が行けば我が国に侵攻しない、そういう話であったがそれがいつまでなのか明言をされていない。
その約束は一時の事なのか、それとも永久的に続くのか……
それよりも、私はあんなに恐ろしい国で生きていけるのか……
考えれば考える程に不安で心が押しつぶされそうだった。
「クロード…怖いの……私が行くことが国の為なのであれば、私は…行く、つもりなのだけれども、私が行ったとして、本当に彼国は約束を守るのかしら…私は……」
言いながら私は震える手を握りしめる。
「ティア……そんな風に力任せに握るものではない。君の美しい手に傷が付いてしまうよ。握るなら俺の手にしろ…ほら。」
クロードはそう言うと、私の震える手を安心させるかのように、優しく解き、指を絡めると固くぎゅっと握った。
ハッと振り向きクロードを見上げると、いつもは瞳を合わせてくれないクロードが私を優しく見詰めていた。
「ティア、俺はお前が決めた事に従うよ。もしも…オラダスに行くのなら、俺も一緒に行く。お前は俺の命だ。絶対に守るから。」
「クロード……」
そしてクロードは立ち上ると、私の前に跪き胸に手をあてた。
「ハイデリガ王国ブルーム騎士団団長であり、クリスティア・フォン・ハイデリガ王女殿下の守護騎士である、クロード・バリーはこの命に替えても…いや、命が尽きようとも必ず貴方様を御守り致します。」
そう言って私の手に口付けを落とした後、すっと見上げたクロードの瞳は優しい慈しみの情で揺れていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる
狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。
しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で………
こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる