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ハイデリガ王女の決意
王女の決意と思わぬ縁談
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王宮に戻った私はそのまま直ぐに兄である王太子の所へ向い、王女としてオラダスの申し出を受ける旨を伝えた。
「ティア!お前が犠牲になる必要はない!何とか……何とか回避出来る道を探っているからもう少し待っていてくれ!」
「お兄様、いいのです……これも王家に生まれた運命。私一人の犠牲で国が…民が助かるのであれば、私は喜んでこの身を捧げる所存です。」
「しかし…ティア……」
兄は顔面蒼白になりながらも必死で私を説得を試みるが、しかし私の心は既に決まっていた。
それに、妹思いで優しい兄をこれ以上板挟みにして苦しめてはいけない。
私はゆるゆると首を振り、兄の言葉を遮った。
「お兄様、私は大丈夫です。明日お父様にこの気持ちをお伝えしますね。」
それだけ言い残すと私はくるりと踵を返して兄の執務室を出た。
◇◇◇
次の日、私が謁見をお願いする前に父王からの呼び出しがあった。
身支度を整え指定された時間に謁見の間に入ると、兄と父王が何やら話をしながら待っていた。
「お父様、お兄様、クリスティアが参りました。御二方に置かれましてはことのほかご機嫌麗しく存じます。」
作法に則り丁寧に挨拶をすると、父王は手を振り表情を崩し口を開く。
「おぉ…ティア、そう固くならずともよい。今日はな、そなたに打診があってな。」
「打診、ですか?」
私が父に訊ねると、変わって兄が口を開いた。
「ティア、お前、リトヴィエに行く気はないか?」
「リトヴィエ…ですか?オラダスではなく…?」
話が見えず私が小首をかしげていると、父王と兄が強く頷いた。そして、父王が力強くもう一度私に問いかけた。
「そうだ、リトヴィエの王太子の元に嫁ぐつもりはないか、と聞いておる。」
降って湧いた突然の縁談話に閉口して目を白黒させていると、今度は兄が口を開いた。
「実は……前々からリトヴィエ王国へティアの縁談の打診はしていたんだが…漸く先程リトヴィエから正式な返信がきたんだ。」
「王太子殿下と……ですか?」
「そうだよ、ティア。あちらの王太子は俺の友人で気心も知れているし、幸いにもまだ正妃はいない。ヒューゴ、ヒューならお前を託すのに不足はないと思っている。それに、リトヴィエの『雷神』と姻戚関係になる事は、我が国のためにもなる事だ。大事な妹をオラダスなどにくれてやる気はない。」
そう言って兄は父王にリトヴィエから届いた緑色の書簡を手渡した。父王はその書簡を受け取ると内容を検め、改めて私に告げる。
「ハイデリガ王国第一王女 クリスティア・フォン・ハイデリガ、同盟国へ同盟強化の証として嫁いでくれるか?」
正式な書簡でやり取りしているのであれば、そもそも私には拒否権はない。しかし、気になるのはオラダス帝国との条約だ。
「……王命とあらば、私、クリスティア・フォン・ハイデリガは謹んでその縁談をお受け致しますが、オラダスの件はどうなるのでしょうか……」
「回答までにはまだ2ヶ月あるからその間に戦争に備えるさ。それに来月、ヒューの生誕祭がある。そこでこの婚約が発表になれば、リトヴィエ王国からも援軍があるはずだ。」
「全面戦争は避けられない、という訳ですね……」
私がそう訊ねると、兄は力なく笑った。
「あぁ…だけど、ティアを帝国にやる訳にはいかない。ティアの為でもあるが、ティアの力を帝国に取られる事は、すなわち大陸全体を巻き込む世界大戦になりかねないからね。」
兄はそう言うと、兄と父王はこの後の軍議を控えているとの事で、私は下がるように言われてこの場を後にした。
「姫様…大丈夫ですか?」
傍で控えていたクロードが心配そうな視線で私を見つめたが、今はその眼差しが辛い。私は力なく首を振ると、ゆっくりと長い回廊に歩を進めた。
そうして、自室に着くと侍女から護衛まで全員を下がらせ、扉を閉めた。
扉に寄りかかり天を仰いで深く息を吐く。
涙が一筋眦から零れ頬を伝った。
結ばれないとわかっていながらも、幼い頃からクロードとの未来を何度も想い描いていた。
結局、私はどうあっても国の為に我が身を犠牲にしなければならない。
ほんの少しの淡い希望すら抱くことすら許されず、絶望しながらも国の為に我が身を捧げるのが私の役目なのだ。
身が引き裂かれてしまいそうな程苦しかった。
それでも、こんな時にも泣き崩れる事が出来ない自分の立場に再び絶望すると、私はそのまま意識を手放した。
こうして、クロードへの想いに蓋をして、私は隣国であり同盟国のリトヴィエ王国王太子 ヒューゴ・リュカ・リトヴィエ殿下の元に、同盟強化の証として嫁ぐ事が決まった。
「ティア!お前が犠牲になる必要はない!何とか……何とか回避出来る道を探っているからもう少し待っていてくれ!」
「お兄様、いいのです……これも王家に生まれた運命。私一人の犠牲で国が…民が助かるのであれば、私は喜んでこの身を捧げる所存です。」
「しかし…ティア……」
兄は顔面蒼白になりながらも必死で私を説得を試みるが、しかし私の心は既に決まっていた。
それに、妹思いで優しい兄をこれ以上板挟みにして苦しめてはいけない。
私はゆるゆると首を振り、兄の言葉を遮った。
「お兄様、私は大丈夫です。明日お父様にこの気持ちをお伝えしますね。」
それだけ言い残すと私はくるりと踵を返して兄の執務室を出た。
◇◇◇
次の日、私が謁見をお願いする前に父王からの呼び出しがあった。
身支度を整え指定された時間に謁見の間に入ると、兄と父王が何やら話をしながら待っていた。
「お父様、お兄様、クリスティアが参りました。御二方に置かれましてはことのほかご機嫌麗しく存じます。」
作法に則り丁寧に挨拶をすると、父王は手を振り表情を崩し口を開く。
「おぉ…ティア、そう固くならずともよい。今日はな、そなたに打診があってな。」
「打診、ですか?」
私が父に訊ねると、変わって兄が口を開いた。
「ティア、お前、リトヴィエに行く気はないか?」
「リトヴィエ…ですか?オラダスではなく…?」
話が見えず私が小首をかしげていると、父王と兄が強く頷いた。そして、父王が力強くもう一度私に問いかけた。
「そうだ、リトヴィエの王太子の元に嫁ぐつもりはないか、と聞いておる。」
降って湧いた突然の縁談話に閉口して目を白黒させていると、今度は兄が口を開いた。
「実は……前々からリトヴィエ王国へティアの縁談の打診はしていたんだが…漸く先程リトヴィエから正式な返信がきたんだ。」
「王太子殿下と……ですか?」
「そうだよ、ティア。あちらの王太子は俺の友人で気心も知れているし、幸いにもまだ正妃はいない。ヒューゴ、ヒューならお前を託すのに不足はないと思っている。それに、リトヴィエの『雷神』と姻戚関係になる事は、我が国のためにもなる事だ。大事な妹をオラダスなどにくれてやる気はない。」
そう言って兄は父王にリトヴィエから届いた緑色の書簡を手渡した。父王はその書簡を受け取ると内容を検め、改めて私に告げる。
「ハイデリガ王国第一王女 クリスティア・フォン・ハイデリガ、同盟国へ同盟強化の証として嫁いでくれるか?」
正式な書簡でやり取りしているのであれば、そもそも私には拒否権はない。しかし、気になるのはオラダス帝国との条約だ。
「……王命とあらば、私、クリスティア・フォン・ハイデリガは謹んでその縁談をお受け致しますが、オラダスの件はどうなるのでしょうか……」
「回答までにはまだ2ヶ月あるからその間に戦争に備えるさ。それに来月、ヒューの生誕祭がある。そこでこの婚約が発表になれば、リトヴィエ王国からも援軍があるはずだ。」
「全面戦争は避けられない、という訳ですね……」
私がそう訊ねると、兄は力なく笑った。
「あぁ…だけど、ティアを帝国にやる訳にはいかない。ティアの為でもあるが、ティアの力を帝国に取られる事は、すなわち大陸全体を巻き込む世界大戦になりかねないからね。」
兄はそう言うと、兄と父王はこの後の軍議を控えているとの事で、私は下がるように言われてこの場を後にした。
「姫様…大丈夫ですか?」
傍で控えていたクロードが心配そうな視線で私を見つめたが、今はその眼差しが辛い。私は力なく首を振ると、ゆっくりと長い回廊に歩を進めた。
そうして、自室に着くと侍女から護衛まで全員を下がらせ、扉を閉めた。
扉に寄りかかり天を仰いで深く息を吐く。
涙が一筋眦から零れ頬を伝った。
結ばれないとわかっていながらも、幼い頃からクロードとの未来を何度も想い描いていた。
結局、私はどうあっても国の為に我が身を犠牲にしなければならない。
ほんの少しの淡い希望すら抱くことすら許されず、絶望しながらも国の為に我が身を捧げるのが私の役目なのだ。
身が引き裂かれてしまいそうな程苦しかった。
それでも、こんな時にも泣き崩れる事が出来ない自分の立場に再び絶望すると、私はそのまま意識を手放した。
こうして、クロードへの想いに蓋をして、私は隣国であり同盟国のリトヴィエ王国王太子 ヒューゴ・リュカ・リトヴィエ殿下の元に、同盟強化の証として嫁ぐ事が決まった。
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