見習いシスター、フランチェスカは今日も自らのために祈る

通りすがりの冒険者

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EXTRA コーヒーブレイク

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 聖ミカエル教会の近くの商店街。そのアーケードをしばらく歩いていくと左側にその喫茶店はある。
 店は老舗しにせらしく年代が経っており、カウンターのマスターもそれ相応の年を重ねていた。
 レコードから流れるジャズの音を聞きながらマスターは布巾でカップを丁寧ていねいに磨き、汚れがないことを確認してから後ろの棚へと置く。
 その時、ドアのベルがちりりんと鳴った。
 マスターが来訪者を見るなり、好々爺こうこうやらしい微笑をにこりと浮かべる。

「お久しぶりですね。フランチェスカさん」
「こんにちは。カフェオレをちょうだい」

 カウンターの真ん中に座る。個人経営の店なので、さして広くはない。

「かしこまりました。砂糖はふたつですね?」
 
 コーヒー豆をコーヒーミルに入れ、小さなハンドルを回してく。
 がりがりがりと音を立てながら下の木箱に粉が溜まっていく。
 棚からカップを取り出して、しゅんしゅんと湯気を発するポットからお湯をフィルター越しに注いでいく。
 
「そういえばお食事は済まされてきましたか?」
「お昼ご飯もう食べたから、ケーキが食べたいな」
 
 さようですかと頷き、カウンターの端にあるショーウィンドウを見やる。

「今日はショートケーキとブルーベリーが……そうそう、チーズケーキもありますよ」
「じゃチーズケーキちょうだい」
「かしこまりました」
 
 程なくしてカフェオレが出てきた。そのあとにチーズケーキが出てくる。

「お待たせしました、カフェオレです。チーズケーキはベイクドなので、バスク風とまではいきませんが……」

 いただきますとフォークで小さくカットして口に運ぶ。じゅわりとした酸味とほのかな甘味が口内に広がっていく。

「んー美味しい!デリシオーソ!

 フランチェスカの頬が緩むと、マスターも頬が緩む。

「ありがとうございます」

 カップを口につける。コーヒーと牛乳の絶妙なバランスが程よい。
 なんでもマスターは客の好みを判断してそれによって豆の量と抽出時間を変えているそうな。
 ほぅ……とフランチェスカが溜息をもらす。

「なにかお疲れのようですね」
「ま、ね。実は最近まで海外にいたの。それも田舎のほうにね」
「海外ですか。羨ましい」

 しばし談笑し、チーズケーキがなくなるとカフェオレも残り半分となった。
 レコードから流れる音楽が耳に心地よい。

「そういえば、もうすぐあの子の命日ですね……」

 突然のマスターの言葉でフランチェスカがはっとする。

「そっか……もうそんな時期か……」
「あの子がここで働いていた時はもっと賑やかでした」
「うん……」
 
 カップを傾ける。

「ね、マスター。このカフェオレ、すみちゃんが作ったのとは味が違うけど、豆とか変えてるの?」
「いえ、豆も分量もそのまま変わらないですよ。そこがコーヒーの不思議なところで、別の人がまったく同じように作っても同じ味にはならないんですよ」
「そうなんだ……」

 またカップを傾ける。

 すみちゃんが作ったのはもう少し苦みがあったな……。

 フランチェスカの脳裏にはじめて日本に来たときの記憶が思い出される。
 すみちゃんこと、すみれはフランチェスカが日本に来てはじめての友だちであった。そして、彼女は去年の3月の初めに亡くなった。
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