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第22話 BORN THIS WAY①
しおりを挟む“主よ、わたしが呼んでいるのに、いつまであなたは聞きいれて下さらないのか。わたしはあなたに「暴虐がある」と訴えたが、あなたは助けて下さらないのか”
ハバクク書第1章2節
駅から降りて15分ほど歩いたところにその墓地はある。
こつこつと革靴で歩く音が人気のない墓地に響き、やがてぴたりと止まる。
墓石の前に人の影が落とされ、ことりと水の入った桶が置かれた。
墓石の前にはすでに花が供えてあり、線香の残り香が漂う。
墓石には故人の名前が彫られ、横には生年と没年が、それによれば故人がたった25歳の若さで急逝したことがわかる。
桶から水をすくって墓石にかけて汚れを流す。次に新しい線香に火を灯して墓前に供えた。
キリスト教の見習いシスター、フランチェスカは胸の前で手を合わせて合掌して故人の冥福を祈る。
浄土真宗の墓地なのでここは仏教に合わせるべきだ。やがて祈りが終わる。
「ひさしぶり。すみちゃん元気? あたしは相変わらずだよ……」
すみちゃんこと、上月すみれはフランチェスカが日本に来て間もない頃の、最初の友だちだ。
「あたしね、最近いろんなことしてるの。幼稚園の先生になったり、ロックバンド組んだりとか……こないだなんてイタリアのど田舎まで行ったんだよ」
ぽとりと涙が落ちる。
知らぬ間に涙をこぼしていたようだ。
ごしごしと袖でこする。
「懐かしいな。すみちゃんに初めて会ったの、2年前の夏の終わりごろだよね?」
そう言ってフランチェスカはすこし遠い記憶に思いを馳せる。
それは夏の終わりにしてはまだ暑かった時だった。
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