年下上司の愛が重すぎる!

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11話

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昨日の歓迎会で俺が帰った後、俺の最寄駅を聞いていたらしい。さすがに電車の時間はわからなかったが、署に着く時間を逆算して改札口で待機。俺を見つけてバレないように後をつけていたのだが、人混みの中思ったよりも難しく、見失ってしまったようだ。

なので車内を一つずつ確認していたが見つからず、降りる駅になっても降りて来ない俺を心配して佐原も降りずに探したところ、囲まれている俺を発見。

一人は祓えたが、残りの二人には逃げられ今に至る。ただ、何の被害もなく事を収められたのは上々だろう。それよりも、よくあの混み合う車内を移動できたものだ。白い目で見られただろうに。

「....................助かった」

我ながら、ひねくれた言い方をしてしまった。それも目を合わさずに。
さすがに今のは良くないよな、と思ってちらりと佐原を見るとやはりしゅんとした表情をしている。

「あー......」

「遅くなって、すみませんでした」

「は?」

言い直そうと口を開いたのに、なぜか謝られた。

「それは何に対しての謝罪だ?」

「だって...!俺がもう少し早く見つけていれば...!そもそも見失わなければあんな事には...!」

「そんなたられば言ったって意味ないだろ」

「そうですけど.....」

拳をぎゅっと握ってまだ納得いってない様子だ。
こいつはまた....。なんだってそう自分の所為にしたがるんだ。

「....前にも言ったろ。今回も、目の前まで来てるのに気づかなかった俺が悪い。勝手に自分の所為にすんな」

「っ....」

いや、さすがに助けてもらっといてこの言い方はよくないよな....。

「.....本当に、感謝してる。....ありがとう。だから、自分の所為にしないでほしい。俺が困るから」

なんとか素直にお礼を言うと、少し驚いたように目を見開いてからふわりと笑った。

「ありがとうございます」

...........ん?なんでお礼?ありがとうって言ってくれてありがとうって事か....?うん、意味がわからん。

「姫崎さんは優しいですね」

待て、今どこにそんな要素があった?
目を白黒させていると、わからないならいいです、と話を畳まれてしまった。


それから署に戻る際、てっきり電車で向かうかと思えば、わざわざタクシーで行くらしい。

....いや、何でだよ。そもそもここは駅だし、聞けば最寄り駅を一つ過ぎただけで、一駅戻ればいいだけなのに。

圧がすごくて従ったが、佐原は助手席に座るという徹底ぶりだ。もしかして電車に乗るのが怖いと思われているのだろうか。あんな事はそうそう起こらないだろうし、乗るだけなら別に怖くもないんだがな。なんというか、ちょっと過保護のような気がする。


「ご心配おかけしました」

署に着くなり、俺は腰を折った。

「怪我がなくて良かった。....警部、姫崎くんを助けてくださり、ありがとうございました」

神野さんが佐原に対して頭を下げるので、俺も体の向きを変え、再び腰を折る。

「いえっ、そんなっ...、顔を上げてくださいっ...!」

わたわたと慌てる様子がおかしくて思わず内心で笑ってしまった。こういうところが上司っぽくないというか、キャリアっぽくないというか。

署には千葉と影山は居らず、千葉はパトロールへ、影山は件の三人を事情聴取しているらしい。
事情聴取は、なにも俺が被害に遭ったから、というわけではなく、他の被害者にも行っているものだ。

いつから不眠になったかなどを聞き、それをまとめて統計をとっているのだ。今のところ、不眠になってから一週間前後で記憶がなくなるケースが多く、女性よりも男性の方が不眠期間が長い事が多い。これは単純に男の方が体力があるからだろう。

そして、佐原にもまだ言ってない、車内で起こった事を報告すると、二人の顔がみるみる険しくなっていった。

「......やっぱり、あの噂は姫崎くんだと思っておいた方がいいかもね....」

"綺麗な人がいる"というあまりにも抽象的なものだが、ただの噂だと一蹴もできなくなってきた。

「今後、一人では出歩かないように。護符も常に貼っておいて」

不本意ではあるが、渋々頷く。だって、逆の立場だったら俺でもそう言う。

「でも、こうなると夜も心配だね」

これまでの幽霊は、目立ちたい者が多く、より目立つ昼間に行動を起こす事が多い。よって、夜に行動を起こす事はほとんどなかったのだが、目的が"俺"だとすると人目に付かない夜に仕掛けてくる可能性もゼロではなくなる。

「せめてもう少しセキュリティのしっかりしたところに引っ越す、とか...」

「無理ですね」

引っ越す金も、セキュリティのしっかりした高い家賃を払う金もない。
だが、たしかに家にまで来られたら近隣の迷惑になってしまう。

「うーん.....、なら私の家は?」

「もっと無理です」

先程よりもキッパリと突っぱねた。神野さんの家は一軒家だが、奥さんもお子さんもいる。その人たちに迷惑をかけるくらいなら、一人で被害に遭った方がましだ。

「あの.....」

でも心配だし、などと言う神野さんに、家族の事を一番に考えてあげてください、と諭していると佐原が控えめに口を挟んだ。

「俺の家、オートロックである程度セキュリティもちゃんとしてますけど....」

......ん?何だ急に。マウントとってどうするつもりだ?
眉をしかめる俺とは逆に、神野さんはおお!となんだか嬉しそうだ。

「それなら警部にお願いできますか?」

「はい!その、姫崎さんがよければ、ですけど...」

待て待て、つまりあれか?佐原の家で厄介になれって事か!?もちろん嫌だわ!

「いやっ...、これ以上警部に迷惑をかけるわけには.....」

「俺は大丈夫です。むしろ目の届く範囲に居てくれた方が安心できます」

なんだそれ!俺は子供か!

「でも....、急ですし....」

「そうだね。色々準備があるだろうから今日は休んで必要な物揃えておいで」

違う!そうじゃない!

言葉の限りを尽くして説得を試みたが、結局佐原の家に暫く居候させてもらう事になってしまった。
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