年下上司の愛が重すぎる!

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18話

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その日の夜、習慣となった触られる練習も、ある程度慣れてきたので難易度を少し上げることになった。

「....だからってなんで縛るんだよ...」

難易度を上げることには俺も賛成だが、まさか縛られるとは思わなかった。

「より実践向きの方がいいかと思いまして。こういった状況になるって事は、姫崎さんの場合、体の自由を奪われている事が多いでしょうから」

.....確かに、佐原の言う事は一理ある。
だが、例によって佐原の膝の上に乗り、手は前で縛られてはいるものの、かなり動きを制限されているとなんとも言えない気分になる。
心許ないような...、気まずいような...。

「痛くないですか?」

「あ、ああ...」

「それじゃあ、嫌だったら言ってくださいね」

佐原は毎回そう言ってから触る。
縛られた手を上にあげられ、もう片方の手がゆっくりと手首から肘、肘から脇へと下りていく。
まるで最初の頃に戻ったような触り方だ。縛っているから気でも遣っているのだろうか。

暫くそんな触り方が続き、大丈夫だと思ったのか手が前の方へ移動してきた。

「っ!お、おいっ...、なんでそんなところ....」

俺の反応を見ながら胸の突起をカリカリと弄ってくる。

「ここ、触られたことないんですか?」

「ねえよっ...!」

自分でも洗う時くらいしか触らない場所を、服の上からとはいえ触られていることに羞恥が募る。
しかも、それほど強く触られているわけではないのに、じん、と痺れ、熱まで持ち始めた。

「さ、はらっ....、待っ....!」

「嫌でしたか?」

「........嫌、とかではないんだが....、その、なんか、変な感じが.....」

「気持ちよかったですか?勃ってきましたもんね」

「ひっ!な.....」

服の上からでもわかるようになったそれを弾かれ、ピリッとした感覚に思わず体が跳ねた。

「きも、ちい....?」

「....もしかして、セックスで気持ちいと思った事ないですか?」

直接的な表現にぎょっとしたが、正直に答える。

「......ない」

俺の言葉に、佐原は怒ったように顔を歪めた。
だがそれも一瞬で、すぐに真剣な顔つきに変わる。

「それじゃあ、上書きすればいいんじゃないですか?」

「上書き?」

「セックスは気持ちいい事だってわかれば、怖くないですよね?」

そう、なのか...?
自分でもよくわからないのでなんとも言えない。
なんと返事をしていいかわからずにいると、浮遊感とともに景色がくるんと一変した。

「うわっ!」

ソファに押し倒されたのだと気づいたのは、佐原の顔が真上にあったからだ。
真剣な目とかち合い、気まづくて逸らすと佐原の顔が近づいてきた。

「っ!?」

首筋に生暖かいものが這い、背筋がぞくりと震えた。
な、舐めた...!?
頭の中が混乱していて、状況を理解できない。

「こんなに敏感なのに、痛い思いしかしたことないなんて...」

ぼそりと呟いたかと思えば、今度は服をツン、と押し上げている突起を口に含んだ。

「なっ...!やっ、やめろ!ばかっ...!」

バタバタと体を動かすが、縛られた腕は頭の上で押さえられており、大した抵抗ができない。
不思議と嫌悪感はなく、痺れたような甘い疼きが腹の方から迫り上がってきて、初めての感覚に少し恐怖を覚える。

俺の言葉に顔を上げた佐原の顔がいつもと違い、妙に熱っぽい。

その瞬間、顔が、瞳が、父のものと重なる。


ドクン


と心臓が跳ね、呼吸の仕方を忘れたかのように息が上手く吸えなくなった。

「やっ..やだっ....!」

怖い———

俺の様子がおかしくなった事に気づいたのか、佐原はハッとした顔をして慌てて俺を抱きしめた。

「すみませんっ...!俺..調子に乗って.....」

すぐに手首の紐も解いてくれ、床で正座をしてあからさまにしゅんとしてしまった。
俺の声が届いたことにホッとするのと同時に、自分が何に怖がっているのかはっきりと分かった。

「もういいって」

「でも....」

かなり落ち込んでいるのか、なかなか顔を上げようとしない。

「本当にいいから。お陰で何が怖かったのかわかったし」

「え.....?」

ようやく顔を上げたが、何かに気づいたようにまたすぐ下げてしまった。心なしか耳が赤い。

「おい、だからこっち向けって」

「......あの、その前に着替えを.....」

はぁ?なんで着替えなんか。
意味がわからず自分を見下ろしてみると、左胸——先程口に含まれていた部分が唾液で透け、硬くなった乳首がうっすらと見えていた。

「~~~!?」

無言で勢いよく立ち上がり、自分の部屋へと急いだ。

手近にあった物に着替えたつもりだったが、無意識に濡れても透けないような色を選んだのかもしれない。
一人になれば冷静さを取り戻し、先程の出来事を思い返してみた。

俺が怖かったのは、あの眼だ。

あの眼で見られていると、俺の言葉や、意思が全て無視されてしまうような感覚に陥る。
実際父には届かず、痛いと言っても止めてもらえず、怖いと言っても無視され続けた。

痛い行為自体も、触られることも、怖いというよりは嫌悪が勝る。

まぁ、それがわかったところでどうすれば克服できるかはわからないが、原因がはっきりしないよりかマシだろう。

ふと気になって、自分の胸へと視線を落とす。
躊躇いがちに今はもう柔らかくなっている先端へと手を伸ばし、佐原が触ったのと同じように弄ってみた。

........やっぱ何も感じないよなぁ.....。

あれはなんだったのか。
自慰する時でさえ事務的で、作業に近い。
背中が粟立つような、腹が疼くようなあんな感覚は初めてだった。

....考えても無駄か。
部屋を出てリビングへ戻ると、佐原がいなかった。
もしかして、罪悪感とか感じて出ていったんじゃ....。
そう思って玄関を確認してみたが、靴はちゃんとある。

その時、トイレから水の流れる音がした。
どうやらトイレに行っていただけだったようだ。

佐原と顔を合わせると、また気恥ずかしさがぶり返したが、なんとか抑え込んでトリガーの事を伝えた。
しかし、今更ではあるが、やはり自分の弱みを人に教えるのは気力がいる。できれば隠し通したかった。

佐原は暫く考え込んでから、口を開いた。

「それなら、話しかけながら触れば大丈夫って事ですか?」

「....た、ぶん...?」

自分でもよくわからないのでそう答えるしかない。例え無視されなかったとしても、あの眼を向けられたら恐怖が襲ってくるかもしれない。

「ちょっと、試してみてもいいですか?」

「え....」

「あっ、でも今日は止めた方がいいですかね」

「いや、大丈夫だ」

俺もどうなるか試してみたい気持ちはある。

「嫌だったらすぐに止めますから」

膝の上には乗らず、お互い向かい合っているのでいつもよりは距離があり、嫌であればいつでも逃げられる。
再び佐原の手が胸の突起へと伸び、優しく押し潰された。それだけなのに、やはり痺れたような感覚に陥る。

なんで...。自分で触った時は何も感じなかったのに。

「やっぱりここは好きみたいですね」

「っ、...自分で触った時はこんな感じにならなかったのに...」

「え、自分で触ってみたんですか?」

「っ!」

そう言われて、自分がとんでもない事を口走ってしまったことに気づいた。
何言ってんだ俺は!!
否定しようとしたが、もう片方も同じように押し潰され、硬くなってきた先端を指で転がされて、声にならない。

気づけばまた熱っぽい視線を送られており、反射のように身体がぎくりと固まる。
だが——

「姫崎さん、俺の眼、ちゃんと見てください。俺は姫崎さんしか見てないですから」

「っ....は.....」

真っ直ぐ見つめられた佐原の瞳には、強張った俺の顔がしっかりと写っている。それだけで少し恐怖心が薄れた。

「姫崎さん、これは気持ちいですか?」

「っ...、わからな、い...っ」

勃ち上がった突起の周りをくるくると撫で聞いてくる。

「それならこれは?摘むのと引っ張るの、どっちがいいですか?」

「っぁ、いちいち、聞くなっ...!」

「でもさっきより悦さそうですよ?」

「くっ...!」

確かに、佐原の言う通り、声をかけられている方が安心する。先程と同じような顔をしているのに、なぜか父の顔と重ならない。

だが、恐怖心が薄れた代わりに、ぞわぞわとした感覚がより一層強まったような気がする。
なんで、こんなっ....!
自分の身体なのに言う事を聞かず、思わず佐原の肩を押し退けた。

「もう、いい.....っ!」

「嫌ではさそうですけど?」

頬をさらり撫でられ、かあっと頬が熱くなる。
くっそ、こいつ絶対調子乗ってるだろ....!

「調子に乗るな!」

「いてっ」

頭に手刀を落とすと、変な空気は霧散した。
霧散したはずなのだが....

「なんで勃ってんだよ...!」

「えっ、わっ...、また...。す、すみません...。....けど、あんな顔見せられたら仕方ないじゃないですか」

慌てて前を隠し、申し訳なさそうにしていたが、すぐに開き直って拗ねたように唇を尖らせる。

あ、あんな顔ってなんだ...!しかもこいつって言わなかったか!?もしかして、さっきトイレ行ってたのって....!

なぜか猛烈に恥ずかしくなってきて、「もう寝る!」と吐き捨てて部屋へと戻った。
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