35 / 60
32話
しおりを挟む
真剣に考える、とは言ったものの、どうすれば答えが見つかるのか想像もつかない。
こんなことを相談できる友人などいないし、どうしたものか。
考えても埒があかないので、とりあえず気になっている事から確かめていく事にした。
まず、一番気になっているのは、他の奴に触られても気持ち悪くないかどうかだ。
本当にトラウマを克服できたのか。
とはいえ、誰彼構わず触ってもらうわけにもいかない。というかそれは俺が嫌だ。
本当はそんな検証もしたくないが、真剣に考えると言った手前、これを確認するのが一番の近道な気がする。
だが、問題は誰に触ってもらうか、だ。
想像しただけで吐きそうになる奴は却下だとすると、幽霊課のメンバーしかいない気がする。
プロに頼む事も考えたが、知らない人は少しハードルが高い。なのでそれは最終手段にする事にした。
「千葉、どこでもいいから触ってみてくれないか」
仕事の合間にそう頼んでみると、幽霊課全員の動きが一瞬止まった。
......しまった。みんながいる前で言う事じゃなかったか。
まずは服の上からでも、と軽く考えていたのがいけなかった。
だが、俺が言葉を撤回するより、みんなの反応の方が早かった。
「頭でもおかしくなったか?」
と、目の前の千葉はドン引きしており、
「姫崎さん!?なんで千葉さんに触ってもらう必要が!?」
と、佐原が怒ったような顔で詰め寄り、
「俺も触りたいです!」
と、影山が立候補し、
「私も触らせてもらえるのかな?」
と、神野さんが携帯を取り出しながら言った。
.....神野さんはとりあえず撮るのやめてもらえますかね....。
「姫崎さん!真剣に考えてくれるって言ったじゃないですか!」
佐原の怒りように、先に伝えておけばよかったと少し後悔した。
「.....だから、それを考えるために触ってもらおうと思ったんだよ...」
この間の飲み会で、俺が佐原にタメ口で喋っている事が影山以外にも知られてしまったので、もうほとんど敬語を使っていない。
佐原にはちゃんと説明するとして...、千葉が駄目となると影山か....?だが、ノリノリで立候補する影山を見ているとなぜか不安になってくる。
「ちょっと、なに面白そうなことになってんすか。俺も仲間に入れてくださいよ」
「.........いや、お前はやっぱいい」
「えー!なんでですかっ!」
そうえいば、触ってもらう事に対しての理由を考えるのを忘れていた。
もしちゃんと説明するのなら、俺のトラウマの事も話さなければいけなくなる。だが、できるだけそれは言いたくない。そもそも打ち明けられる方も迷惑だろう。
なんと説明しようか考えていると、佐原が「パトロール行ってきます!」と、強引に俺を連れ出した。
「で、あの発言はなんだったんですか」
もちろんしっかりと周りに目を光らせながら、佐原が聞いてきた。
「.....だから、お前以外の奴が触っても気持ち悪くならないかどうか確かめたかっただけだって」
「それならなんで俺に一言言ってくれなかったんですか」
「.....あれは、本当に軽い気持ちで....。服の上からでも触ってくれればあとは想像で何とかなると思ったんだよ」
「それでもし千葉さんが止まらなかったらどうするつもりですか?」
「は.....?」
何言ってんだ、こいつは。止まらなかったら?そんなのぶん殴るだけだろ。まさかまだ俺の事を弱いとでも思ってるんだろうか。
「お前、俺が千葉に負けるとでも思ってんのか?」
「そうじゃないです!」
足を止め、大きな声を出した佐原に少し注目が集まる。
「あんまり大きい声だすな」
「.....すみません。ですけど、俺が言いたいのはそうじゃなくて、そんな事確かめるためだけに、姫崎さんが嫌な思いをする必要はないって事です」
「........でも、それだと佐原が大丈夫だった理由がわからないだろ」
「..........姫崎さんって、意外とバカですよね」
「あ゛?」
なんだこいつ、喧嘩売ってんのか?
せっかく人が真剣に考えてるっていうのに。
「あー、すみません、そういう意味じゃなくて....」
他にどういう意味があるのか教えてほしい。
「とにかく、そういう事なら俺に考えがあるんで!誰にも触らせちゃ駄目ですよ!」
「なんだよ、考えって」
「帰ったら言いますから。間違ってもプロにお願いしようとか思わないでくださいね」
「え、」
なんでわかったんだ。
触ってもらう理由を作るのが面倒で、最終手段を使うしかないかと思っていたんだが。
「絶対駄目ですからね!?」
「わかったからパトロールに集中しろ」
その後、一人だけ幽霊に取り憑かれた人を発見し、神社へと送り届けて、その日のパトロールは終了した。
こんなことを相談できる友人などいないし、どうしたものか。
考えても埒があかないので、とりあえず気になっている事から確かめていく事にした。
まず、一番気になっているのは、他の奴に触られても気持ち悪くないかどうかだ。
本当にトラウマを克服できたのか。
とはいえ、誰彼構わず触ってもらうわけにもいかない。というかそれは俺が嫌だ。
本当はそんな検証もしたくないが、真剣に考えると言った手前、これを確認するのが一番の近道な気がする。
だが、問題は誰に触ってもらうか、だ。
想像しただけで吐きそうになる奴は却下だとすると、幽霊課のメンバーしかいない気がする。
プロに頼む事も考えたが、知らない人は少しハードルが高い。なのでそれは最終手段にする事にした。
「千葉、どこでもいいから触ってみてくれないか」
仕事の合間にそう頼んでみると、幽霊課全員の動きが一瞬止まった。
......しまった。みんながいる前で言う事じゃなかったか。
まずは服の上からでも、と軽く考えていたのがいけなかった。
だが、俺が言葉を撤回するより、みんなの反応の方が早かった。
「頭でもおかしくなったか?」
と、目の前の千葉はドン引きしており、
「姫崎さん!?なんで千葉さんに触ってもらう必要が!?」
と、佐原が怒ったような顔で詰め寄り、
「俺も触りたいです!」
と、影山が立候補し、
「私も触らせてもらえるのかな?」
と、神野さんが携帯を取り出しながら言った。
.....神野さんはとりあえず撮るのやめてもらえますかね....。
「姫崎さん!真剣に考えてくれるって言ったじゃないですか!」
佐原の怒りように、先に伝えておけばよかったと少し後悔した。
「.....だから、それを考えるために触ってもらおうと思ったんだよ...」
この間の飲み会で、俺が佐原にタメ口で喋っている事が影山以外にも知られてしまったので、もうほとんど敬語を使っていない。
佐原にはちゃんと説明するとして...、千葉が駄目となると影山か....?だが、ノリノリで立候補する影山を見ているとなぜか不安になってくる。
「ちょっと、なに面白そうなことになってんすか。俺も仲間に入れてくださいよ」
「.........いや、お前はやっぱいい」
「えー!なんでですかっ!」
そうえいば、触ってもらう事に対しての理由を考えるのを忘れていた。
もしちゃんと説明するのなら、俺のトラウマの事も話さなければいけなくなる。だが、できるだけそれは言いたくない。そもそも打ち明けられる方も迷惑だろう。
なんと説明しようか考えていると、佐原が「パトロール行ってきます!」と、強引に俺を連れ出した。
「で、あの発言はなんだったんですか」
もちろんしっかりと周りに目を光らせながら、佐原が聞いてきた。
「.....だから、お前以外の奴が触っても気持ち悪くならないかどうか確かめたかっただけだって」
「それならなんで俺に一言言ってくれなかったんですか」
「.....あれは、本当に軽い気持ちで....。服の上からでも触ってくれればあとは想像で何とかなると思ったんだよ」
「それでもし千葉さんが止まらなかったらどうするつもりですか?」
「は.....?」
何言ってんだ、こいつは。止まらなかったら?そんなのぶん殴るだけだろ。まさかまだ俺の事を弱いとでも思ってるんだろうか。
「お前、俺が千葉に負けるとでも思ってんのか?」
「そうじゃないです!」
足を止め、大きな声を出した佐原に少し注目が集まる。
「あんまり大きい声だすな」
「.....すみません。ですけど、俺が言いたいのはそうじゃなくて、そんな事確かめるためだけに、姫崎さんが嫌な思いをする必要はないって事です」
「........でも、それだと佐原が大丈夫だった理由がわからないだろ」
「..........姫崎さんって、意外とバカですよね」
「あ゛?」
なんだこいつ、喧嘩売ってんのか?
せっかく人が真剣に考えてるっていうのに。
「あー、すみません、そういう意味じゃなくて....」
他にどういう意味があるのか教えてほしい。
「とにかく、そういう事なら俺に考えがあるんで!誰にも触らせちゃ駄目ですよ!」
「なんだよ、考えって」
「帰ったら言いますから。間違ってもプロにお願いしようとか思わないでくださいね」
「え、」
なんでわかったんだ。
触ってもらう理由を作るのが面倒で、最終手段を使うしかないかと思っていたんだが。
「絶対駄目ですからね!?」
「わかったからパトロールに集中しろ」
その後、一人だけ幽霊に取り憑かれた人を発見し、神社へと送り届けて、その日のパトロールは終了した。
43
あなたにおすすめの小説
忠犬だったはずの後輩が、独占欲を隠さなくなった
ちとせ
BL
後輩(男前イケメン)×先輩(無自覚美人)
「俺がやめるのも、先輩にとってはどうでもいいことなんですね…」
退職する直前に爪痕を残していった元後輩ワンコは、再会後独占欲を隠さなくて…
商社で働く雨宮 叶斗(あめみや かなと)は冷たい印象を与えてしまうほど整った美貌を持つ。
そんな彼には指導係だった時からずっと付き従ってくる後輩がいた。
その後輩、村瀬 樹(むらせ いつき)はある日突然叶斗に退職することを告げた。
2年後、戻ってきた村瀬は自分の欲望を我慢することをせず…
後半甘々です。
すれ違いもありますが、結局攻めは最初から最後まで受け大好きで、受けは終始振り回されてます。
ただの雑兵が、年上武士に溺愛された結果。
みどりのおおかみ
BL
「強情だな」
忠頼はぽつりと呟く。
「ならば、体に証を残す。どうしても嫌なら、自分の力で、逃げてみろ」
滅茶苦茶なことを言われているはずなのに、俺はぼんやりした頭で、全然別のことを思っていた。
――俺は、この声が、嫌いじゃねえ。
*******
雑兵の弥次郎は、なぜか急に、有力武士である、忠頼の寝所に呼ばれる。嫌々寝所に行く弥次郎だったが、なぜか忠頼は弥次郎を抱こうとはしなくて――。
やんちゃ系雑兵・弥次郎17歳と、不愛想&無口だがハイスぺ武士の忠頼28歳。
身分差を越えて、二人は惹かれ合う。
けれど二人は、どうしても避けられない、戦乱の濁流の中に、追い込まれていく。
※南北朝時代の話をベースにした、和風世界が舞台です。
※pixivに、作品のキャライラストを置いています。宜しければそちらもご覧ください。
https://www.pixiv.net/users/4499660
【キャラクター紹介】
●弥次郎
「戦場では武士も雑兵も、命の価値は皆平等なんじゃ、なかったのかよ? なんで命令一つで、寝所に連れてこられなきゃならねえんだ! 他人に思うようにされるくらいなら、死ぬほうがましだ!」
・十八歳。
・忠頼と共に、南波軍の雑兵として、既存権力に反旗を翻す。
・吊り目。髪も目も焦げ茶に近い。目鼻立ちははっきりしている。
・細身だが、すばしこい。槍を武器にしている。
・はねっかえりだが、本質は割と素直。
●忠頼
忠頼は、俺の耳元に、そっと唇を寄せる。
「お前がいなくなったら、どこまででも、捜しに行く」
地獄へでもな、と囁く声に、俺の全身が、ぞくりと震えた。
・二十八歳。
・父や祖父の代から、南波とは村ぐるみで深いかかわりがあったため、南波とともに戦うことを承諾。
・弓の名手。才能より、弛まぬ鍛錬によるところが大きい。
・感情の起伏が少なく、あまり笑わない。
・派手な顔立ちではないが、端正な配置の塩顔。
●南波
・弥次郎たちの頭。帝を戴き、帝を排除しようとする武士を退けさせ、帝の地位と安全を守ることを目指す。策士で、かつ人格者。
●源太
・医療兵として南波軍に従軍。弥次郎が、一番信頼する友。
●五郎兵衛
・雑兵。弥次郎の仲間。体が大きく、力も強い。
●孝太郎
・雑兵。弥次郎の仲間。頭がいい。
●庄吉
・雑兵。弥次郎の仲間。色白で、小さい。物腰が柔らかい。
経理部の美人チーフは、イケメン新人営業に口説かれています――「凛さん、俺だけに甘くないですか?」年下の猛攻にツンデレ先輩が陥落寸前!
中岡 始
BL
社内一の“整いすぎた男”、阿波座凛(あわざりん)は経理部のチーフ。
無表情・無駄のない所作・隙のない資料――
完璧主義で知られる凛に、誰もが一歩距離を置いている。
けれど、新卒営業の谷町光だけは違った。
イケメン・人懐こい・書類はギリギリ不備、でも笑顔は無敵。
毎日のように経費精算の修正を理由に現れる彼は、
凛にだけ距離感がおかしい――そしてやたら甘い。
「また会えて嬉しいです。…書類ミスった甲斐ありました」
戸惑う凛をよそに、光の“攻略”は着実に進行中。
けれど凛は、自分だけに見せる光の視線に、
どこか“計算”を感じ始めていて……?
狙って懐くイケメン新人営業×こじらせツンデレ美人経理チーフ
業務上のやりとりから始まる、じわじわ甘くてときどき切ない“再計算不能”なオフィスラブ!
女子にモテる極上のイケメンな幼馴染(男)は、ずっと俺に片思いしてたらしいです。
山法師
BL
南野奏夜(みなみの そうや)、総合大学の一年生。彼には同じ大学に通う同い年の幼馴染がいる。橘圭介(たちばな けいすけ)というイケメンの権化のような幼馴染は、イケメンの権化ゆえに女子にモテ、いつも彼女がいる……が、なぜか彼女と長続きしない男だった。
彼女ができて、付き合って、数ヶ月しないで彼女と別れて泣く圭介を、奏夜が慰める。そして、モテる幼馴染である圭介なので、彼にはまた彼女ができる。
そんな日々の中で、今日もまた「別れた」と連絡を寄越してきた圭介に会いに行くと、こう言われた。
「そーちゃん、キスさせて」
その日を境に、奏夜と圭介の関係は変化していく。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
【オメガバース】替えのパンツは3日分です
久乃り
BL
オメガバースに独自の設定があります。
専門知識皆無の作者が何となくそれっぽい感じで書いているだけなので、マジレスはご遠慮ください。
タグに不足があるかもしれません。何かいいタグありましたらご連絡下さい。
杉山貴文はベータの両親の間に生まれたごく普通のベータ男子。ひとつ上の姉がいる29歳、彼女なし。
とある休日、何故か姉と一緒に新しい下着を買いに出かけたら、車から降りてきたかなりセレブな男と危うくぶつかりそうになる。
ぶつかりはしなかったものの、何故かその後貴文が目覚めると見知らぬ天井の部屋に寝ていた。しかも1週間も経過していたのだ。
何がどうしてどうなった?
訳の分からない貴文を、セレブなアルファが口説いてくる。
「いや、俺は通りすがりのベータです」
逃げるベータを追いかけるアルファのお話です。
騎士と狩人
みけねこ
BL
小さい頃から狩人として父親に鍛えられてきた主人公。その甲斐あって同郷の同年代に比べてしっかりしていたが、ところが狩人という生業のせいか心なしか同年代から遠巻きにされているような……しっかりと交流してくれているのは幼馴染二人。
一方で常に周りに囲まれている村一番の三歳年下の美少年。自分とは正反対で今後関わることはないだろうなと思いながら狩人としての日々を過ごす中で、変化が訪れる。
ヤンキーDKの献身
ナムラケイ
BL
スパダリ高校生×こじらせ公務員のBLです。
ケンカ上等、金髪ヤンキー高校生の三沢空乃は、築51年のオンボロアパートで一人暮らしを始めることに。隣人の近間行人は、お堅い公務員かと思いきや、夜な夜な違う男と寝ているビッチ系ネコで…。
性描写があるものには、タイトルに★をつけています。
行人の兄が主人公の「戦闘機乗りの劣情」(完結済み)も掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる