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「ふんふふんふふーん♪」
会社からの帰り道、俺は先ほど買ったゲームを片手に浮かれていた。
鼻歌は出てしまったがそれくらいは許してほしい。
ずっと欲しかったゲームが手に入ったのだから。
いや、ゲームが欲しかったというのは少し語弊があるかもしれない。
何故ならこれは、BLゲームだからだ。
違うよ?
腐ってないよ?
じゃあなんで買ったんだって?
それは、もちろん大好きな声優さんが登場するから!
低音で色気のある声!
彼が出ているアニメは全て見ているし、ゲームも全て買っている。
今回のゲームは正直買うか迷っていたのだが、BLってことは....あれでしょ?
色っぽい声とか聞けちゃうんでしょ?
そんなわけで初めてBLゲームを購入したのだ。
———だが、そこで俺の意識は唐突に途切れた。
多分、死んだのだろうと思う。
多分というのは死んだ時の記憶が曖昧だから。
まあ、あんまり鮮明に覚えてても怖いだけだしそれはいいんだけど。
どうやら俺は流行りの異世界転生をしてしまったらしい。
ゲームできなかったのがよっぽどショックだったのかな。
もっとも、この世界にはゲームがないからどうしたってプレイは出来ないのだが。
この国は前世とはまるで違っていて小説によく出てくるようなファンタジーな世界だ。
魔法だってあるし魔物もいる。
魔法があるので化学は発達していないが大抵のことは魔法や魔道具で出来てしまうためむしろ前世よりも便利な暮らしができている。
比較的平和な国で子爵家の次男坊として生を受けた。
名前はフィルローゼ・マクファイン。
前世を思い出したときは今から約5年前。
10歳の時だった。
当初はかなり混乱したが、一番最初に思ったのは...
プレイしてから死ねよ!
だった。
まあ、今更何を言ってももう遅いし意味もないんだけどね。
前世を思い出してから生活は少しだけ変わった。
家族がやたら過保護になったのだ。
前世を思い出した時、高熱が出て三日三晩下がらなかったそうなのでわからないでもないが。
他人事なのはその時の記憶があまりないから。
夢を見ているかのように前世の事を思い出していた。
命に別状はないと医者には言われていたようだがなかなか目を覚さないのでかなり心配したらしい。
しかも目を覚ましたと思ったらおかしな発言をしだすから余計心配をかけてしまったのだろう。
それからやることなすこと危ないんじゃない?あなたにはまだ早い。など止められる事が多かった。
今は流石にそこまでではないがまだ多少過保護気味である。
でもまあギスギスした家族よりよっぽどいい。
「フィルー?どこだい、フィル」
兄さんの声だ!
急いで自室から出て玄関へと急いだ。
兄さんは俺よりもふたつ年上で今は全寮制の魔法学校に通っている。
ちなみに俺も来年入学予定だ。
帰ってくるのは長期休暇のみなので会うのは約5ヵ月ぶりだ。
兄さんが帰ってくる際は必ず玄関でお出迎えするのが常になっている。
考えごとをしていたらもうそんな時間になっていたようだ。
「すみません、兄さん!今行きます!」
階段の上から声をかけてそこから飛び降りた。
「フィル!?」
兄さんの焦った声が聞こえたが、風魔法で自身をふわりと浮かせ難なく着地する。
「兄さんおかえりなさい」
にっこり笑うと兄さんは頭を抱えてため息をついた。
「フィル、階段から飛び降りるのはいつもやめなさいと言っているだろう?怪我でもしたら大変じゃないか」
「兄さんに早く会いたかったので...」
しまった。
つい、いつもの癖が。
普段は階段だけじゃなく2階からも平気で飛び降りている。
もちろんバレないようにね?
魔法を使うのが楽しくてつい使ってしまうのだ。
「それは嬉しいけど、それならモーリスのように前もって行動をしてくれ」
そう言って俺の頬にちゅっと口付ける。
モーリスというのはマクファイン家の執事だ。
兄さんから荷物を受け取ってすでに運んでいるところだった。
「お声がけしたのですが返事がないのでお休みになっているかと」
「あー、ちょっと考えごとをね....」
マクファイン家の使用人は驚くほど少ない。
貧乏、というわけではないのだが数に重きを置いてないのだ。
見栄っ張りな貴族にとって使用人の数は分かりやすいステータスなのだが、うちにとってはそんなことよりも信頼関係がなにより重要視されている。
どうやら以前なにかあったようだが詳しくは聞いていない。
使用人は少ないがこの生活に不満を持ったことなど一度もない。
あまり多すぎても名前を覚えられないだろうし、前世では1人で暮らしていたこともあった。
他の貴族からは変わり者と呼ばれているらしいが、十分幸せなので気にしていない。
「さあ、お父様とお母様にも挨拶をしなくては。フィル、おいで」
当然のように手を取って歩きだした。
「お父様、お母様、ただいま戻りました」
「おお、シュレイツ。おかえり」
「おかえりなさい、シュレイツ。変わりはないですか?」
「はい。お陰様で有意義な学校生活を送れています」
「それはよかった。シュレイツも帰ってきたし、食事にしようか」
そのまま全員でダイニングへと移動した。
会社からの帰り道、俺は先ほど買ったゲームを片手に浮かれていた。
鼻歌は出てしまったがそれくらいは許してほしい。
ずっと欲しかったゲームが手に入ったのだから。
いや、ゲームが欲しかったというのは少し語弊があるかもしれない。
何故ならこれは、BLゲームだからだ。
違うよ?
腐ってないよ?
じゃあなんで買ったんだって?
それは、もちろん大好きな声優さんが登場するから!
低音で色気のある声!
彼が出ているアニメは全て見ているし、ゲームも全て買っている。
今回のゲームは正直買うか迷っていたのだが、BLってことは....あれでしょ?
色っぽい声とか聞けちゃうんでしょ?
そんなわけで初めてBLゲームを購入したのだ。
———だが、そこで俺の意識は唐突に途切れた。
多分、死んだのだろうと思う。
多分というのは死んだ時の記憶が曖昧だから。
まあ、あんまり鮮明に覚えてても怖いだけだしそれはいいんだけど。
どうやら俺は流行りの異世界転生をしてしまったらしい。
ゲームできなかったのがよっぽどショックだったのかな。
もっとも、この世界にはゲームがないからどうしたってプレイは出来ないのだが。
この国は前世とはまるで違っていて小説によく出てくるようなファンタジーな世界だ。
魔法だってあるし魔物もいる。
魔法があるので化学は発達していないが大抵のことは魔法や魔道具で出来てしまうためむしろ前世よりも便利な暮らしができている。
比較的平和な国で子爵家の次男坊として生を受けた。
名前はフィルローゼ・マクファイン。
前世を思い出したときは今から約5年前。
10歳の時だった。
当初はかなり混乱したが、一番最初に思ったのは...
プレイしてから死ねよ!
だった。
まあ、今更何を言ってももう遅いし意味もないんだけどね。
前世を思い出してから生活は少しだけ変わった。
家族がやたら過保護になったのだ。
前世を思い出した時、高熱が出て三日三晩下がらなかったそうなのでわからないでもないが。
他人事なのはその時の記憶があまりないから。
夢を見ているかのように前世の事を思い出していた。
命に別状はないと医者には言われていたようだがなかなか目を覚さないのでかなり心配したらしい。
しかも目を覚ましたと思ったらおかしな発言をしだすから余計心配をかけてしまったのだろう。
それからやることなすこと危ないんじゃない?あなたにはまだ早い。など止められる事が多かった。
今は流石にそこまでではないがまだ多少過保護気味である。
でもまあギスギスした家族よりよっぽどいい。
「フィルー?どこだい、フィル」
兄さんの声だ!
急いで自室から出て玄関へと急いだ。
兄さんは俺よりもふたつ年上で今は全寮制の魔法学校に通っている。
ちなみに俺も来年入学予定だ。
帰ってくるのは長期休暇のみなので会うのは約5ヵ月ぶりだ。
兄さんが帰ってくる際は必ず玄関でお出迎えするのが常になっている。
考えごとをしていたらもうそんな時間になっていたようだ。
「すみません、兄さん!今行きます!」
階段の上から声をかけてそこから飛び降りた。
「フィル!?」
兄さんの焦った声が聞こえたが、風魔法で自身をふわりと浮かせ難なく着地する。
「兄さんおかえりなさい」
にっこり笑うと兄さんは頭を抱えてため息をついた。
「フィル、階段から飛び降りるのはいつもやめなさいと言っているだろう?怪我でもしたら大変じゃないか」
「兄さんに早く会いたかったので...」
しまった。
つい、いつもの癖が。
普段は階段だけじゃなく2階からも平気で飛び降りている。
もちろんバレないようにね?
魔法を使うのが楽しくてつい使ってしまうのだ。
「それは嬉しいけど、それならモーリスのように前もって行動をしてくれ」
そう言って俺の頬にちゅっと口付ける。
モーリスというのはマクファイン家の執事だ。
兄さんから荷物を受け取ってすでに運んでいるところだった。
「お声がけしたのですが返事がないのでお休みになっているかと」
「あー、ちょっと考えごとをね....」
マクファイン家の使用人は驚くほど少ない。
貧乏、というわけではないのだが数に重きを置いてないのだ。
見栄っ張りな貴族にとって使用人の数は分かりやすいステータスなのだが、うちにとってはそんなことよりも信頼関係がなにより重要視されている。
どうやら以前なにかあったようだが詳しくは聞いていない。
使用人は少ないがこの生活に不満を持ったことなど一度もない。
あまり多すぎても名前を覚えられないだろうし、前世では1人で暮らしていたこともあった。
他の貴族からは変わり者と呼ばれているらしいが、十分幸せなので気にしていない。
「さあ、お父様とお母様にも挨拶をしなくては。フィル、おいで」
当然のように手を取って歩きだした。
「お父様、お母様、ただいま戻りました」
「おお、シュレイツ。おかえり」
「おかえりなさい、シュレイツ。変わりはないですか?」
「はい。お陰様で有意義な学校生活を送れています」
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