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2話
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食事は使用人たちも一緒に食べている。
もちろん全員ではないが手の空いているものは同じテーブルを囲み、今日あった出来事などを話す。
これも他の貴族からしてみればありえないことのようだ。
楽しいからいいじゃんね。
兄さんが帰ってくるといろいろな話が聞けるのでいつもより楽しい。
だけど、知りすぎると楽しみがなくなりそうなのであまり詳しくは聞かないようにしている。
前世に存在した小学校のような教育機関は存在せず、だいたい15歳までは家で雇った家庭教師をつけるのが一般的だ。
そのまま家庭教師から学ぶ人もたまにいるようだがほとんどの人は16歳になったら学校へ通う。
その理由は良く言えば社交性を養うため。
悪く言えば子供の自慢大会だ。
あとはコネ作りや結婚相手を探すために行く人もいるらしい。
大半の理由は後者だろう。
俺みたいに純粋に魔法を学ぶ事を楽しみにしている人は少ない。
学ぶだけなら家庭教師で事足りるからだろうが、うちでは過保護が発揮されてしまい積極的に教えてくれないのだ。
まあ、内緒で練習はしてるんだけどね。
「フィルが通う時は大物が揃うね」
夕食を食べながら兄さんが言った。
大物?
「ああ、王太子殿下も来年だったね」
「ええ。それに宰相のご子息と近衛騎士団団長のご子息も同じ学年です」
「それはまた....。大変な年に当たってしまったね....」
「いじめられたりしないかしら?」
俺関連の話なはずなのに肝心な俺は置いてきぼりだ。
待って待って、なんの話?
「一体なんの話です?」
「まったくお前は、本当に魔法の事にしか頭に無いな」
それは全くその通りですが。
「来年、フィルと同じ年に王太子殿下と宰相のご子息、それに近衛騎士団団長のご子息も入学するんだよ」
....正直、へ~という感想しか思い浮かばない。
でも、それでは駄目だと本能が騒ぐ。
「ご挨拶したほうがいいのでしょうか」
できればお偉いさんには関わりたくないのだが。
「まあこんな田舎の貴族は相手にされないだろうが機会があればしておくといいよ」
「わかりました」
機会がないことを祈ろう。
「でも、名前くらいは覚えておきなさい。王太子殿下がカイル・ユグドール殿下、宰相のご子息がレミオラ・クロスフィード様、騎士団長のご子息がベルトレッド・アレイシス様だ」
殿下がカイル・ユグドール
宰相の息子がレミオラ・クロスフィード
騎士団長の息子がベルトレッド・アレイシス
心の中で復唱すると聞いたことのあるような名前に首を傾げる。
「フィル?どうかしたかい?」
「あ、いえ。聞いたことのあるような名前でしたので....」
「聞いたことくらいはあるだろう」
「そう、ですね」
いや、違う。もっとずっと前に———
ガタガタ!
思い出した!
思わず立ち上がってしまい、視線が俺に集まる。
「す、すみません」
「フィル!?顔色が悪い。モーリス!すぐに医者を!」
「に、兄さん!?大丈夫ですから!お医者様は必要ありません!」
「フィルローゼ、本当に大丈夫かい?無理をしてはいけないよ」
「お父様、本当に大丈夫ですので...。兄さんを止めてください....」
横抱きされて今にも医者に診せに走り出しそうな勢いだ。
「シュレイツ、少し落ち着きなさい。明日良くならないようなら医者に診せよう。今日はゆっくり休みなさい。モーリス、フィルローゼを部屋に」
「かしこまりました」
「私がこのまま運びます」
兄さんは俺を抱えたまま、モーリスに渡すまいとぎゅっと力を込める。
「お父様、お母様、食事中に申し訳ありません。本日は先に休ませていただきます」
「いらぬ気遣いは不要だよ」
「ゆっくり休むのですよ」
「ありがとうございます」
俺は兄さんに抱えられたまま自室へと運ばれた。
ベッドへそっと下ろされ、心配そうな瞳と目が合う。
兄さんの左手が右頬をさらりと撫でた。
「シュレイツ様」
ついて来ていたモーリスが退出を促す。
「わかっている。フィル、気分が悪くなったらすぐに言うんだよ」
「はい。ありがとうございます」
額にちゅっと唇を落とし、2人は部屋を出た。
足音が離れていったのを確認してからがばっと起き上がった。
どくん、どくん、と鼓動が少し速く感じる。
深呼吸をしてから先ほど思い出した事を整理した。
カイル・ユグドール
レミオラ・クロスフィード
ベルトレッド・アレイシス
この3人の名前は前世で死ぬ直前に買ったあのBLゲームに出てくる人物の名前と一緒なのだ。
偶然で片付けるには少し無理があるだろう。
事前情報は見ない派だったので詳しくは分からないが。
プレイする前に死んじゃったしね。
知っていることといえば概要と攻略相手の名前くらいだ。
舞台は魔法学校。
主人公アレン・スピナーが学校生活を送りながら個性溢れる攻略相手と恋愛を楽しむ物語だ。
攻略相手は4人。
先ほどの3人ともう1人、主人公の幼なじみのラーフエル・トライトン。
王子のカイルが俺様系、宰相の息子レミオラがツンデレ系、騎士団長の息子ベルトレッドがクール系、幼なじみのラーフエルがわんこ系、だったはず。
攻略相手にはそれぞれライバルもいて、名前は忘れたが顔を見ればわかると思う。
知っていることはこれくらいだ。
いや、あとひとつだけあった。
俺は大好きな声優さんが声を担当する人を攻略しようと思っていたのでその人の出会いイベントが行われる場所だけは調べたんだ。
その人は騎士団長の息子のベルトレッド。
場所は校舎裏にある木の下。
入学式が終わった後、そこに行くと出会いイベントが起こる。
「........」
これって、もしかしてあれですかね?
プレイ前に死んじゃった俺を憐れに思った神様がご褒美をくれたんですかね?
だって!あの!イケボを!間近で!聞ける!チャンスかも!!!
いかん。興奮しすぎた。
神様ありがとう。
概要しか知らないけど俺の名前も顔も概要に載ってなかったってことはモブってことでしょ?
学校生活を楽しみながらイケボも堪能出来ちゃうってことでしょ?
元々楽しみにしていたのにより一層楽しみになってきたんですけど!
もう一度言おう。
神様ありがとう!!
学校では主人公たちを邪魔しないように遠くから鑑賞させてもらおう。
あわよくば、1回でいいから近くで聞きたいけど。
そんでもってできればどうにかして声を録音したい。
あれ、でも声が同じとは限らないのか....?
いや!きっと同じだろう!
入学前に録音できる魔道具を買わなければ。
その日は興奮しすぎて全然寝付けなかった。
もちろん全員ではないが手の空いているものは同じテーブルを囲み、今日あった出来事などを話す。
これも他の貴族からしてみればありえないことのようだ。
楽しいからいいじゃんね。
兄さんが帰ってくるといろいろな話が聞けるのでいつもより楽しい。
だけど、知りすぎると楽しみがなくなりそうなのであまり詳しくは聞かないようにしている。
前世に存在した小学校のような教育機関は存在せず、だいたい15歳までは家で雇った家庭教師をつけるのが一般的だ。
そのまま家庭教師から学ぶ人もたまにいるようだがほとんどの人は16歳になったら学校へ通う。
その理由は良く言えば社交性を養うため。
悪く言えば子供の自慢大会だ。
あとはコネ作りや結婚相手を探すために行く人もいるらしい。
大半の理由は後者だろう。
俺みたいに純粋に魔法を学ぶ事を楽しみにしている人は少ない。
学ぶだけなら家庭教師で事足りるからだろうが、うちでは過保護が発揮されてしまい積極的に教えてくれないのだ。
まあ、内緒で練習はしてるんだけどね。
「フィルが通う時は大物が揃うね」
夕食を食べながら兄さんが言った。
大物?
「ああ、王太子殿下も来年だったね」
「ええ。それに宰相のご子息と近衛騎士団団長のご子息も同じ学年です」
「それはまた....。大変な年に当たってしまったね....」
「いじめられたりしないかしら?」
俺関連の話なはずなのに肝心な俺は置いてきぼりだ。
待って待って、なんの話?
「一体なんの話です?」
「まったくお前は、本当に魔法の事にしか頭に無いな」
それは全くその通りですが。
「来年、フィルと同じ年に王太子殿下と宰相のご子息、それに近衛騎士団団長のご子息も入学するんだよ」
....正直、へ~という感想しか思い浮かばない。
でも、それでは駄目だと本能が騒ぐ。
「ご挨拶したほうがいいのでしょうか」
できればお偉いさんには関わりたくないのだが。
「まあこんな田舎の貴族は相手にされないだろうが機会があればしておくといいよ」
「わかりました」
機会がないことを祈ろう。
「でも、名前くらいは覚えておきなさい。王太子殿下がカイル・ユグドール殿下、宰相のご子息がレミオラ・クロスフィード様、騎士団長のご子息がベルトレッド・アレイシス様だ」
殿下がカイル・ユグドール
宰相の息子がレミオラ・クロスフィード
騎士団長の息子がベルトレッド・アレイシス
心の中で復唱すると聞いたことのあるような名前に首を傾げる。
「フィル?どうかしたかい?」
「あ、いえ。聞いたことのあるような名前でしたので....」
「聞いたことくらいはあるだろう」
「そう、ですね」
いや、違う。もっとずっと前に———
ガタガタ!
思い出した!
思わず立ち上がってしまい、視線が俺に集まる。
「す、すみません」
「フィル!?顔色が悪い。モーリス!すぐに医者を!」
「に、兄さん!?大丈夫ですから!お医者様は必要ありません!」
「フィルローゼ、本当に大丈夫かい?無理をしてはいけないよ」
「お父様、本当に大丈夫ですので...。兄さんを止めてください....」
横抱きされて今にも医者に診せに走り出しそうな勢いだ。
「シュレイツ、少し落ち着きなさい。明日良くならないようなら医者に診せよう。今日はゆっくり休みなさい。モーリス、フィルローゼを部屋に」
「かしこまりました」
「私がこのまま運びます」
兄さんは俺を抱えたまま、モーリスに渡すまいとぎゅっと力を込める。
「お父様、お母様、食事中に申し訳ありません。本日は先に休ませていただきます」
「いらぬ気遣いは不要だよ」
「ゆっくり休むのですよ」
「ありがとうございます」
俺は兄さんに抱えられたまま自室へと運ばれた。
ベッドへそっと下ろされ、心配そうな瞳と目が合う。
兄さんの左手が右頬をさらりと撫でた。
「シュレイツ様」
ついて来ていたモーリスが退出を促す。
「わかっている。フィル、気分が悪くなったらすぐに言うんだよ」
「はい。ありがとうございます」
額にちゅっと唇を落とし、2人は部屋を出た。
足音が離れていったのを確認してからがばっと起き上がった。
どくん、どくん、と鼓動が少し速く感じる。
深呼吸をしてから先ほど思い出した事を整理した。
カイル・ユグドール
レミオラ・クロスフィード
ベルトレッド・アレイシス
この3人の名前は前世で死ぬ直前に買ったあのBLゲームに出てくる人物の名前と一緒なのだ。
偶然で片付けるには少し無理があるだろう。
事前情報は見ない派だったので詳しくは分からないが。
プレイする前に死んじゃったしね。
知っていることといえば概要と攻略相手の名前くらいだ。
舞台は魔法学校。
主人公アレン・スピナーが学校生活を送りながら個性溢れる攻略相手と恋愛を楽しむ物語だ。
攻略相手は4人。
先ほどの3人ともう1人、主人公の幼なじみのラーフエル・トライトン。
王子のカイルが俺様系、宰相の息子レミオラがツンデレ系、騎士団長の息子ベルトレッドがクール系、幼なじみのラーフエルがわんこ系、だったはず。
攻略相手にはそれぞれライバルもいて、名前は忘れたが顔を見ればわかると思う。
知っていることはこれくらいだ。
いや、あとひとつだけあった。
俺は大好きな声優さんが声を担当する人を攻略しようと思っていたのでその人の出会いイベントが行われる場所だけは調べたんだ。
その人は騎士団長の息子のベルトレッド。
場所は校舎裏にある木の下。
入学式が終わった後、そこに行くと出会いイベントが起こる。
「........」
これって、もしかしてあれですかね?
プレイ前に死んじゃった俺を憐れに思った神様がご褒美をくれたんですかね?
だって!あの!イケボを!間近で!聞ける!チャンスかも!!!
いかん。興奮しすぎた。
神様ありがとう。
概要しか知らないけど俺の名前も顔も概要に載ってなかったってことはモブってことでしょ?
学校生活を楽しみながらイケボも堪能出来ちゃうってことでしょ?
元々楽しみにしていたのにより一層楽しみになってきたんですけど!
もう一度言おう。
神様ありがとう!!
学校では主人公たちを邪魔しないように遠くから鑑賞させてもらおう。
あわよくば、1回でいいから近くで聞きたいけど。
そんでもってできればどうにかして声を録音したい。
あれ、でも声が同じとは限らないのか....?
いや!きっと同じだろう!
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その日は興奮しすぎて全然寝付けなかった。
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