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「フィル?起きたかい?」
昨日の夜全然寝れなかったせいで今朝起きるのが遅くなり、兄さんにめちゃくちゃ心配された。
「ご心配おかけしました」
「本当に大丈夫なんだね?」
「はい。大丈夫です」
ようやく納得してくれたようでよかった。
兄さんは離れている分、過保護がぶり返してきた気がする。
帰ってきている間は俺にべったりくっついて離れないので自主練もできない。
そのくせ自分は剣と魔法の練習は欠かさないのだ。
ちょっとずるくない?
でも文句も言えずせめて見て盗もうとその姿を目に焼き付ける。
「兄さん、学校では皆が同じ所で学ぶのですか?」
「おや、以前は何も知らない方が楽しいからと聞かなかったのにどうかしたのかい?」
「いえ、あと数ヶ月で入学だと考えると少々不安になってきまして....」
「ふふ、大丈夫。フィルは可愛いからいじめられたりしないよ」
昨日のお母様の発言を気にしていると思っているのか頭をよしよしと撫でられた。
いや、気にしてるのはそこじゃないんです。
「入学時の人数にもよるけどだいたい2、3クラスに分かれるんだ。授業はクラスごとに行われる」
「クラス分けはどのようにするのですか?」
「入学前に簡単なテストをするのさ」
「テスト...ですか?」
「ああ、テストの内容は毎回違うようだけど私の時は少し離れた的に魔法を当てることだったよ」
なるほど。
「それではある程度実力でクラスが分けられるんですね」
「そうだね。2年に上がる時はそれまでの成績を踏まえてクラス替えが行われるらしい」
ずっと同じクラスではないのか。
「やはり、昨日お話に上がった御三方は実力も凄いのでしょうか....」
「フィルは同じクラスになりたいのかい?」
「あ....、その、できれば、ですが。このようなことでも無ければ一生関わることはないでしょうし...」
「きっと家庭教師も一流だろうから、実力もあると思うよ。フィルは彼らが魔法を使うところが見たいんだろう?」
う、バレてる....。
まあそれだけじゃないんだけど。
だって同じクラスにならないと声なんてほとんど聞けないじゃんね!
仲良くはならなくてもいい。
壁になるので声を聞かせてください。
空気になるので是非声を聞かせてください!
「それじゃあひとつアドバイスをしようか」
「よろしくお願いします!」
「先生方は何を見ていたと思う?」
「え....、的に当たるかどうかではないのですか?」
「的に当てるのは大前提だよ」
「.....それでは当たった場所、とかでしょうか?」
「そう!フィルは賢いね。精度も見られていたと思うよ。これは私が感じたことだから他にもあるとは思うけどね」
「精度、ですか....」
「例えば、大きさの違う火球があるだろう?」
そう言って右手に野球ボールくらいの火の球と左手に焚き火のようにメラメラと燃え上がる火を出した。
「これ実は、魔力量は同じなんだ。けど...」
そのふたつを案山子に投げつけた。
この案山子は魔法耐性のある魔道具である程度の攻撃では壊れない。
なので魔法の練習をする時は必須アイテムだ。
野球ボールくらいの火の球はすぐに直撃して弾けたが、焚き火のような火は届くのが遅い上に威力もイマイチだ。
「兄さんすごい!」
「ただ大きければいいってことではないんだよ」
なるほど!
やっぱ魔法っておもしろい!
試したいことが増えてワクワクしてきた!
兄さんが居る間は魔法でやりたい事を考えまくった。
◇◇◇◇
「兄さん、いってらっしゃい」
王都まで3日ほどかかるので約3週間程度の帰省となった。
「いってくるね。くれぐれも無理はしないように」
最後まで過保護だな。
「はい。お気をつけて」
馬車が見えなくなるまで見送ってから自室へ急いだ。
やっと魔法の練習ができる!!!
心の中で叫びながら両腕を天井に向けた。
違うよ?別に兄さんのことが嫌いなわけじゃないよ?
むしろ尊敬してる。
けど、それよりも早く魔法を使いたかっただけで。
やりたい事がたくさんある。
まずはいつもやっていた高い所からの着地で体を浮かせる時、もっと要領良くできないかどうか。
あとは風って火みたいに球にしてぶつけるっていう発想があんまりなかったけど、よく考えたら空気銃ってことだよね?
もっと小さくして速いスピードで打てれば結構脅威な気がする。
威力が小さければ先端を尖らせたりもできるし。
前世で読んだ小説や漫画を参考に思いついたことは全て実践してみた。
一度、寝るのも忘れて練習していたらさすがにお父様には怒られ、お母様には心配された。
今後もこのような事があったら入学するまで魔法は禁止にすると言われ、それからはちゃんと寝るようにしている。
でもやりたい事が多すぎて時間が足りないよ!
魔法の事で頭がいっぱいになり、BLゲームの世界だってことも頭から抜けていた。
しまった!録音機買いに行くの忘れてた!
そんな感じでバタバタとあっという間に半年が過ぎた。
昨日の夜全然寝れなかったせいで今朝起きるのが遅くなり、兄さんにめちゃくちゃ心配された。
「ご心配おかけしました」
「本当に大丈夫なんだね?」
「はい。大丈夫です」
ようやく納得してくれたようでよかった。
兄さんは離れている分、過保護がぶり返してきた気がする。
帰ってきている間は俺にべったりくっついて離れないので自主練もできない。
そのくせ自分は剣と魔法の練習は欠かさないのだ。
ちょっとずるくない?
でも文句も言えずせめて見て盗もうとその姿を目に焼き付ける。
「兄さん、学校では皆が同じ所で学ぶのですか?」
「おや、以前は何も知らない方が楽しいからと聞かなかったのにどうかしたのかい?」
「いえ、あと数ヶ月で入学だと考えると少々不安になってきまして....」
「ふふ、大丈夫。フィルは可愛いからいじめられたりしないよ」
昨日のお母様の発言を気にしていると思っているのか頭をよしよしと撫でられた。
いや、気にしてるのはそこじゃないんです。
「入学時の人数にもよるけどだいたい2、3クラスに分かれるんだ。授業はクラスごとに行われる」
「クラス分けはどのようにするのですか?」
「入学前に簡単なテストをするのさ」
「テスト...ですか?」
「ああ、テストの内容は毎回違うようだけど私の時は少し離れた的に魔法を当てることだったよ」
なるほど。
「それではある程度実力でクラスが分けられるんですね」
「そうだね。2年に上がる時はそれまでの成績を踏まえてクラス替えが行われるらしい」
ずっと同じクラスではないのか。
「やはり、昨日お話に上がった御三方は実力も凄いのでしょうか....」
「フィルは同じクラスになりたいのかい?」
「あ....、その、できれば、ですが。このようなことでも無ければ一生関わることはないでしょうし...」
「きっと家庭教師も一流だろうから、実力もあると思うよ。フィルは彼らが魔法を使うところが見たいんだろう?」
う、バレてる....。
まあそれだけじゃないんだけど。
だって同じクラスにならないと声なんてほとんど聞けないじゃんね!
仲良くはならなくてもいい。
壁になるので声を聞かせてください。
空気になるので是非声を聞かせてください!
「それじゃあひとつアドバイスをしようか」
「よろしくお願いします!」
「先生方は何を見ていたと思う?」
「え....、的に当たるかどうかではないのですか?」
「的に当てるのは大前提だよ」
「.....それでは当たった場所、とかでしょうか?」
「そう!フィルは賢いね。精度も見られていたと思うよ。これは私が感じたことだから他にもあるとは思うけどね」
「精度、ですか....」
「例えば、大きさの違う火球があるだろう?」
そう言って右手に野球ボールくらいの火の球と左手に焚き火のようにメラメラと燃え上がる火を出した。
「これ実は、魔力量は同じなんだ。けど...」
そのふたつを案山子に投げつけた。
この案山子は魔法耐性のある魔道具である程度の攻撃では壊れない。
なので魔法の練習をする時は必須アイテムだ。
野球ボールくらいの火の球はすぐに直撃して弾けたが、焚き火のような火は届くのが遅い上に威力もイマイチだ。
「兄さんすごい!」
「ただ大きければいいってことではないんだよ」
なるほど!
やっぱ魔法っておもしろい!
試したいことが増えてワクワクしてきた!
兄さんが居る間は魔法でやりたい事を考えまくった。
◇◇◇◇
「兄さん、いってらっしゃい」
王都まで3日ほどかかるので約3週間程度の帰省となった。
「いってくるね。くれぐれも無理はしないように」
最後まで過保護だな。
「はい。お気をつけて」
馬車が見えなくなるまで見送ってから自室へ急いだ。
やっと魔法の練習ができる!!!
心の中で叫びながら両腕を天井に向けた。
違うよ?別に兄さんのことが嫌いなわけじゃないよ?
むしろ尊敬してる。
けど、それよりも早く魔法を使いたかっただけで。
やりたい事がたくさんある。
まずはいつもやっていた高い所からの着地で体を浮かせる時、もっと要領良くできないかどうか。
あとは風って火みたいに球にしてぶつけるっていう発想があんまりなかったけど、よく考えたら空気銃ってことだよね?
もっと小さくして速いスピードで打てれば結構脅威な気がする。
威力が小さければ先端を尖らせたりもできるし。
前世で読んだ小説や漫画を参考に思いついたことは全て実践してみた。
一度、寝るのも忘れて練習していたらさすがにお父様には怒られ、お母様には心配された。
今後もこのような事があったら入学するまで魔法は禁止にすると言われ、それからはちゃんと寝るようにしている。
でもやりたい事が多すぎて時間が足りないよ!
魔法の事で頭がいっぱいになり、BLゲームの世界だってことも頭から抜けていた。
しまった!録音機買いに行くの忘れてた!
そんな感じでバタバタとあっという間に半年が過ぎた。
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