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一章
10話 メールアドレス
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昨日撮った写真欲しいなぁ。
と思ったのが今日の朝。
メールアドレスを交換していないことに気づく。
今になって思えば、気づくのがだいぶ遅い。
これまでメールアドレスを交換するという考えがなかったというのもあるのかもしれない。
ともかく、桜さんのメールアドレスを教えてもらわなければならない。
「おはようございます。蔭西くん」
「おはようございます。あの…」
「はい」
「や、何でもないです」
いや、どうして?
桜さんも少し困った顔をしているではないか。
たかが聞くだけ。
それなのになぜ緊張している?
ひとえにそういうお年頃ということもあるのかもしれないが、
この謎めいた感情はなかなかに面倒だ。
「それはそうと、昨日撮った写真いります?」
「え、いいんですか?」
「もちろんです」
桜さんはバックから印刷した写真を取り出して机の上においた。
それを受け取り、俺は無造作にファイルにしまった。
この大きさでは携帯にしまえない。
「では」
そういって、自分の席へと戻り座った。
写真をわざわざ印刷して渡してきたということは、もしや携帯を持っていない?
そういえば携帯を使っているところを見たことがない。
でもこの時代でこの年齢に携帯を持っていないことがあるのだろうか?
もちろん、いるとは思うがごく少数だろう。
俺は昼休みに持っていないかを尋ねた。
「携帯持っていますか?」
「携帯、ですか。持っているんですが、その…」
「その?」
「使い方がわからなくて…」
「え」
純粋な「え」が出てしまった。
使い方がわからないのに持っている。
そうだなぁ…。
「なのでその、教えてくれませんか?」
「え、ああ、いいですよ」
自分から「教えてあげましょうか」というのは気が引けたが
桜さんから言ってくれるのなら俺は喜んで教える。
「早速なのですが、メールアドレスの登録方法と文字の打ち方を教えてください」
「それをマスターしたらもう、教えることはありませんけどね」
「そうなんですか。意外に簡単なんですね」
「そう、簡単なんですよ」
俺は一通り教えた後に、試しに俺のメールアドレスを桜さんの携帯に登録させた。
「フフッ。初めての友達の連絡先です」
「それは良かったです。次なんですが、多分キーボードの方がいいですよね」
「そうですね。この3×3のはよくわかりません」
「では、少し携帯をお借りしてもよろしいでしょうか」
「もちろんです」
俺は桜さんから携帯を借りると、キーボード設定を開き設定をキーボードにした。
桜さんの携帯はすべてが初期設定だった。
その事実に驚きながらも、すぐに携帯を返す。
「ありがとうございます!」
「いえいえ」
桜さんはそういい、自分の席に戻ると携帯をいじり始めた。
しばらくすると、俺の携帯にメールが送られてきました。
ありがとうございます!
たったそれだけだ。
でもなぜかとても嬉しい。
なんかぽかぽかするような、暖かくなるような。
俺はすぐに、「どういたしまして」と打ち送信した。
送信した瞬間、パシャッという音がする。
そして3分後ぐらいに「今日の一枚」と言ってさっき撮ったであろう写真が送られてきた。
その写真には手で口を隠し、恥ずかしそうにうつむいている自分が映っている。
反射的に桜さんの方を見ると、桜さんは無邪気な笑顔を浮かべていた。
と思ったのが今日の朝。
メールアドレスを交換していないことに気づく。
今になって思えば、気づくのがだいぶ遅い。
これまでメールアドレスを交換するという考えがなかったというのもあるのかもしれない。
ともかく、桜さんのメールアドレスを教えてもらわなければならない。
「おはようございます。蔭西くん」
「おはようございます。あの…」
「はい」
「や、何でもないです」
いや、どうして?
桜さんも少し困った顔をしているではないか。
たかが聞くだけ。
それなのになぜ緊張している?
ひとえにそういうお年頃ということもあるのかもしれないが、
この謎めいた感情はなかなかに面倒だ。
「それはそうと、昨日撮った写真いります?」
「え、いいんですか?」
「もちろんです」
桜さんはバックから印刷した写真を取り出して机の上においた。
それを受け取り、俺は無造作にファイルにしまった。
この大きさでは携帯にしまえない。
「では」
そういって、自分の席へと戻り座った。
写真をわざわざ印刷して渡してきたということは、もしや携帯を持っていない?
そういえば携帯を使っているところを見たことがない。
でもこの時代でこの年齢に携帯を持っていないことがあるのだろうか?
もちろん、いるとは思うがごく少数だろう。
俺は昼休みに持っていないかを尋ねた。
「携帯持っていますか?」
「携帯、ですか。持っているんですが、その…」
「その?」
「使い方がわからなくて…」
「え」
純粋な「え」が出てしまった。
使い方がわからないのに持っている。
そうだなぁ…。
「なのでその、教えてくれませんか?」
「え、ああ、いいですよ」
自分から「教えてあげましょうか」というのは気が引けたが
桜さんから言ってくれるのなら俺は喜んで教える。
「早速なのですが、メールアドレスの登録方法と文字の打ち方を教えてください」
「それをマスターしたらもう、教えることはありませんけどね」
「そうなんですか。意外に簡単なんですね」
「そう、簡単なんですよ」
俺は一通り教えた後に、試しに俺のメールアドレスを桜さんの携帯に登録させた。
「フフッ。初めての友達の連絡先です」
「それは良かったです。次なんですが、多分キーボードの方がいいですよね」
「そうですね。この3×3のはよくわかりません」
「では、少し携帯をお借りしてもよろしいでしょうか」
「もちろんです」
俺は桜さんから携帯を借りると、キーボード設定を開き設定をキーボードにした。
桜さんの携帯はすべてが初期設定だった。
その事実に驚きながらも、すぐに携帯を返す。
「ありがとうございます!」
「いえいえ」
桜さんはそういい、自分の席に戻ると携帯をいじり始めた。
しばらくすると、俺の携帯にメールが送られてきました。
ありがとうございます!
たったそれだけだ。
でもなぜかとても嬉しい。
なんかぽかぽかするような、暖かくなるような。
俺はすぐに、「どういたしまして」と打ち送信した。
送信した瞬間、パシャッという音がする。
そして3分後ぐらいに「今日の一枚」と言ってさっき撮ったであろう写真が送られてきた。
その写真には手で口を隠し、恥ずかしそうにうつむいている自分が映っている。
反射的に桜さんの方を見ると、桜さんは無邪気な笑顔を浮かべていた。
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