いつか、いつかは、追いつける気がして

みょ~じ★

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第三章:ン・キリ王国、モンスターの大攻勢を受けるのこと。

第三節:近衛隊長ロベンテ、神官ネブラと共に謀略を練るのこと。

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 一方、部屋の外ではルーチェが飲み物をロベンテやネブラのいる部屋に運んでいた。と、そんな折である。ロベンテとネブラの会話が外に漏れているのか、声が聞こえてきた。以下、ルーチェが聞き取れなかったところは「*」表記で記述したいと思う。
「……さて、話を戻しましょうか。****の*滅は可能でしょう、ただし……」
「ああ、誰がその****を運営しているか、**の者によっては対応も変えねばならん、な」
「まさか、とは思うが……」
「やはり、ロベンテさんもそう思いますか」
「ああ」
「なればお互い、*に*いて見せ**ますか」
「……そうだな、**とはいえ**れると拙い」
 近衛隊長ロベンテと神官ネブラは引き続き密売組織壊滅のための密議をしていた。だが、ルーチェの頭と耳ではあまり多くのことはわからなかった。彼女も決して耳が悪い方ではなかったのだが、彼らの声は外に配慮した音声であった。また、年の割に知恵の回る方の彼女と言えども、まだ12である。それなりにしか内容はわからなかった。
(何の話なんだろう……)
「……まったく同じ**だったな……」
「ええ、まさか**れている**まで一*だったとは」
「それでは、**にはその***け合うことを**しておく」
「よろしいので?」
「事後**にしたかったが、*****裏があれば、最悪**傾く」
「確かに、それはまずいですな」
「ああ」
 と、不意に扉が開かれ、ロベンテがやや驚きながらもルーチェをとがめた。
「……ルーチェ、立ち聞きをするのはみっともないぞ」
「えっ、あっ、そのっ……」
 まさか、ロベンテに叱られるとは思っていなかったのか、完全に狼狽するルーチェ。それに対してロベンテはため息をつきつつ、
「……まあいい。それより、何の用だ」
と話題を変えるのだった。
「あのっ、あっ、はいっ、その、飲み物を……」
「……そうか。それじゃ、引き続き話し合いを行うが、今日はもうこの部屋には近づかないようにな」
「は、はいっ!」

 ……そして、飲み物を出したルーチェは大部屋に戻り都合六百枚余りの書類をしまい終え、一息ついていた。日がまだ傾いていないことを考えると、それは驚異的な速さであった。
「あ、ルーチェちゃんもう分担分終わったの?」
 本日、ルーチェ達のチームは一人六百枚少々の書類作業を分担されており、作業目標(ノルマとは異なる)は計1000枚とそこまで多いものではなかった。にもかかわらず、他の者が二百三百といったレベルの中、ルーチェはすでに自身の担当分を終えていた。それは、先ほど述べたように驚異的な実務能力と言えた。
「はい、本日の作業目標はチームで千枚でしたよね?」
 すでにルーチェは担当分を終えている上に、チームのメンバーもそれなりの数を終えており、作業量は相当なものであった。
「作業目標なんて気にしなくていいのに、律儀だねえ」
 思わず苦笑する先輩の神官。出世には興味がないのか、彼はルーチェと同じ階級章を肩に乗せていたが、その手の節くれ立ちを考えたら相当な能力者と言えた。
「そういうわけにもいきませんから」
 と、次の書類の束に手を伸ばそうとするルーチェを制して、彼はルーチェの効率を伸ばすために、
「そう、それじゃ先上がるかい?」
と提案した。それに対してなぜか顔を赤くして焦りながら否定するルーチェ。
「そ、そういうわけにもいきませんよ!」
「いいのいいの、愛しの隊長さんが待ってるんだろ?こういうのは任せておいて、若いのは楽しんできな」
 だが、彼は知っていた、ルーチェがこの後用事があることを。そして。
「あ、ありがとうございますっ!」
 ルーチェも内心、楽しみにしていたのか。それは足音が物語っていた。
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