いつか、いつかは、追いつける気がして

みょ~じ★

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第四章:ゼス一行、教会の支援の下サム病撲滅のため旅立つのこと。(前)

第十五節:「チワカスの聖女」、被験者であるレイスに丸薬を治験するのこと。(前)

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「さて、レイス、とか言ったかね。……サム病の根源は、わたしは治せると思っている。
 無論、まだそのための薬品は発明できてないけどね。だからこそ、アンタを被検体として使うことにした」
 たんたんと腰を叩き、ビーカーや試験管だらけの研究室から出てくる怪しい女。ひょっとしたら、外見よりは歳を老けているかもしれない。
 ……大体、見当のついた方もいらっしゃるだろう。一応、彼女こそ「チワカスの聖女」なのだが、到底その背格好は「聖女」とは言い難かった。
 とはいえ、聖女は聖女である。一応、旅の目標としては申し分ないものではあった。
「それは、理解しております」
 その「聖女」に対して、若干の緊張をしつつも、受け答えを行うレイス。ひょうひょうとした優雅な態度を自負する彼女にしては、構えるのは珍しいことであり、同時に彼女はそれを、少し愧じていた。
「おう、そうだね。でなきゃこんな怪しげな女に身を捧げたりはしないもんさ。
 ……安心しな、わたしは本質的には薬師だ。侵襲性の高い実験はしないし、たぶんできないよ」
「はあ……」
 心配しているのはそこではない、そう言いたげなレイスであったが、そんなことに気を取られる、あるいはとがめることもなく、「チワカスの聖女」は近くの棚から丸薬をいくつか取り出した。金色に光るそれは、もちろん金でくるまれたものではないのだが、何らかの金属で胃酸に負けないようにコーティングされた、まだ治験どころか人体実験も済んでいない、「チワカスの聖女」が製造した新薬であった。
「よろしい、まずはこの薬品を試してもらえるかね」
「……なんですか、これは」
 若干、顔のこわばるレイス。とはいえ、危険なにおいはしない。まあもっとも、それは亜鉛と銅の……すなわち真鍮でコーティングされているから当然ではあったが、そうでなくとも、それは無臭の薬品であった。
 キリン豆どころか指の第一関節くらいはありそうな、大きい丸薬であり、飲み込むには若干の工夫が必要と思われた。
「……サム病の発生推論が確かなら、一時的に魔力に蓋をする薬さね。とはいえ、まだまだ研究中だから成功するかどうかは運次第だよ?」
「ありがとうございます、それでは」
 に促されるまま、薬品チワカス薬品丸薬を飲み干すレイス。本来、チワカスの末端価格を考えたらそんなことに使うものではないのだが、何せこの研究所にはチワカスが一山いくらの価値しかないほどの、文字通り腐るほど存在するわけで、決して水が豊富ではないであろう現地に於いては、それも一つの服薬テクニックと言えた。
「おお、案外潔い……、いい飲みっぷりだねぇ、惚れ惚れするよ」
「…………」
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