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3… 父の帰還
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「父さん・・・」
家の中に父親の姿はあった。しかし、あるべきはずのものがなかった。
ぐったりとロッキングチェアに腰かけた体には、両足と片腕がない。
片目に眼帯、頭部を包帯で覆われていて、黒く豊かな髪は無残に抜け落ちている。
傍らでは継母が泣き崩れている。双子の兄たちの姿はなかった。
「な・・・何があったの・・・?」
夕日が差し込む薄暗い部屋の中をゆっくりと進むアスカ。
父親は残った片目で美しい我が子を見た。
「怪物だ・・・。怪物が出た・・・。」
継母はその言葉に一層声を荒げて泣く。
「あんな恐ろしい生き物は初めてだ・・・。巨大なイカとクジラが混ざったような化け物・・・。大きさは山ほどあった・・・。」
そこで父親は血を吐きながらむせた。アスカは布で父親の口の血を拭き、背中をさする。
「父さん、無理に話さなくていいよ・・・早くお医者様に診せよう!そうだ、ボク呼んでくる!」
「医者はいいんだ、話せるうちに聞いてくれ!」
父親はアスカの腕を掴んだ。
「あの怪物がいたのは遠くの深い海じゃない、この村の近くの海なんだ。
俺たちは長い航海を経て、後は1日ほど風に乗って進むだけだった。
みな、無事に我が家に帰る事が出来ると喜び、安心していた・・・。
昨日の夜明け、突然船が大きく揺れた。みなは座礁したのかと思ったが違ったんだ。
見張りが叫ぶと同時に甲板に何本もの巨大なイカの触手のようなものが伸びてきて、みなを襲い始めた。
それは触れるだけで腕や足をもぎ取っていき・・・喰っていた・・・。」
「そんな・・・!」
アスカは真っ青になって立ちすくむ。
「100人もいた仲間たちで形が残っているのは半分、生きているのはそのまた半分だ。
船は何とか無事だが、もう漁には出られないだろう・・・。あんな化け物がいては・・・!」
ゴトッ
父親はそう言うと、椅子から崩れ落ちて気を失った。
「あなたっ!あなたっ!」
継母が支え起こす。しかしすぐに手を離した。
すっかり様子の変わった夫に我慢できなかったのだ。
「アスカ、お父さんをベッドに寝かしてちょうだい!」
「は・・・はい」
アスカは軽くなってしまった父親を抱えてベッドに横たえた。幸い息をしている・・・。
継母に、医者に見せることを相談しようとする前に、継母は冷たく言い放った。
「ああ、これから一体どうすればいいの?やっと帰って来たと思ったら稼ぎがないばかりか、もう二度と働けない体になってしまって・・・!しかも、この辺りでは漁が出来ないですって?
漁師になったドゥーガとリョーガはどうしたらいいの?!」
「母さん・・・あの・・・お医者さんを呼ばないと父さんが・・・」
「医者?医者ですって?そんなお金がどこにあるというの?
私たちは年に数回しか帰ってこないこの人の漁の稼ぎでギリギリ暮らしていたのよ!それが今回少しのお金もなかった・・・。ドゥーガとリョーガも漁に出られないとなれば、医者どころか。明日からの暮らしもままならないのよ!」
「・・・でも・・・」
何も言い返す事が出来ないアスカ。
「アンタはまだ半人前で男でも女でもなく、何の稼ぎもないんだから!」
母親は瞳を潤ませるアスカを見て、ハッとあることを思いついた。
「・・・そうだわ・・・。アンタでもお金を稼ぐ方法がある・・・。そうよ、ねえアスカ、この村で漁師にもなれないんだったら男になる必要なんてないわ。
たしか北の大陸の中央では、この村の女は高値で売れるって聞いたことがある。
アンタ、女になりなさい!」
家の中に父親の姿はあった。しかし、あるべきはずのものがなかった。
ぐったりとロッキングチェアに腰かけた体には、両足と片腕がない。
片目に眼帯、頭部を包帯で覆われていて、黒く豊かな髪は無残に抜け落ちている。
傍らでは継母が泣き崩れている。双子の兄たちの姿はなかった。
「な・・・何があったの・・・?」
夕日が差し込む薄暗い部屋の中をゆっくりと進むアスカ。
父親は残った片目で美しい我が子を見た。
「怪物だ・・・。怪物が出た・・・。」
継母はその言葉に一層声を荒げて泣く。
「あんな恐ろしい生き物は初めてだ・・・。巨大なイカとクジラが混ざったような化け物・・・。大きさは山ほどあった・・・。」
そこで父親は血を吐きながらむせた。アスカは布で父親の口の血を拭き、背中をさする。
「父さん、無理に話さなくていいよ・・・早くお医者様に診せよう!そうだ、ボク呼んでくる!」
「医者はいいんだ、話せるうちに聞いてくれ!」
父親はアスカの腕を掴んだ。
「あの怪物がいたのは遠くの深い海じゃない、この村の近くの海なんだ。
俺たちは長い航海を経て、後は1日ほど風に乗って進むだけだった。
みな、無事に我が家に帰る事が出来ると喜び、安心していた・・・。
昨日の夜明け、突然船が大きく揺れた。みなは座礁したのかと思ったが違ったんだ。
見張りが叫ぶと同時に甲板に何本もの巨大なイカの触手のようなものが伸びてきて、みなを襲い始めた。
それは触れるだけで腕や足をもぎ取っていき・・・喰っていた・・・。」
「そんな・・・!」
アスカは真っ青になって立ちすくむ。
「100人もいた仲間たちで形が残っているのは半分、生きているのはそのまた半分だ。
船は何とか無事だが、もう漁には出られないだろう・・・。あんな化け物がいては・・・!」
ゴトッ
父親はそう言うと、椅子から崩れ落ちて気を失った。
「あなたっ!あなたっ!」
継母が支え起こす。しかしすぐに手を離した。
すっかり様子の変わった夫に我慢できなかったのだ。
「アスカ、お父さんをベッドに寝かしてちょうだい!」
「は・・・はい」
アスカは軽くなってしまった父親を抱えてベッドに横たえた。幸い息をしている・・・。
継母に、医者に見せることを相談しようとする前に、継母は冷たく言い放った。
「ああ、これから一体どうすればいいの?やっと帰って来たと思ったら稼ぎがないばかりか、もう二度と働けない体になってしまって・・・!しかも、この辺りでは漁が出来ないですって?
漁師になったドゥーガとリョーガはどうしたらいいの?!」
「母さん・・・あの・・・お医者さんを呼ばないと父さんが・・・」
「医者?医者ですって?そんなお金がどこにあるというの?
私たちは年に数回しか帰ってこないこの人の漁の稼ぎでギリギリ暮らしていたのよ!それが今回少しのお金もなかった・・・。ドゥーガとリョーガも漁に出られないとなれば、医者どころか。明日からの暮らしもままならないのよ!」
「・・・でも・・・」
何も言い返す事が出来ないアスカ。
「アンタはまだ半人前で男でも女でもなく、何の稼ぎもないんだから!」
母親は瞳を潤ませるアスカを見て、ハッとあることを思いついた。
「・・・そうだわ・・・。アンタでもお金を稼ぐ方法がある・・・。そうよ、ねえアスカ、この村で漁師にもなれないんだったら男になる必要なんてないわ。
たしか北の大陸の中央では、この村の女は高値で売れるって聞いたことがある。
アンタ、女になりなさい!」
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