27 / 34
27… 緑色に光る
しおりを挟む普段は忘れている水の恐ろしさ・・・。
時として人は嫌と言うほど思い知らされる。
その巨大な威力と脅威を。
アスカは気を失ったまま、激しい濁流に流され続けた。
水は谷の終わりに行きつくのではない。
未だ人の知らぬ闇の地底へと帰っていくのだ。
ポタ、ポタ・・・・・・・
方々から、水の音楽が聞こえてくる。
若き騎士クラウスは、必死の思いでアスカを濁流の中その胸に抱き、空気のある場所にたどり着いた。真っ暗でほとんど何も見えない。
流されている途中で、岩に木に、バンバンぶつかったせいか全身痣と血だらけになっているのを感じた。
顔面も激しく打ち付けたので、目の上が切れて腫れ、視界が悪い。
しかし彼はとても幸福だった。
彼の腕の中には、憧れてやまない美しい少女・・・アスカがいるのだから。
暗くてアスカの顔は見えていないが、その柔らかい体は紛れもなくアスカだ。
気を失っているが生きている。小さな唇にそっと触れると柔らかな息が感じられた。
クラウスはアスカを抱いて慎重に川から上がり、岩だらけの川辺を歩く。
カツン、
と、クラウスの腰に差してあった剣が岩に当たった。
ポ、ポ、ポ、
と、反響するように小さな緑色の光があちこちに現れる。
「音苔か・・・ということは、ここは洞窟!」
音に反応して光る、洞窟にしか生えない苔たちのおかげで、周りの様子がほんのりと見えた。
天井が高い大きな洞窟の用だ。
濁流はすっかり洞窟の中に流れる川へと姿を変えていた。
クラウスは剣でカンカン、と音を立てながら歩き、アスカを横たわらせることができる場所を探した。
近くに平たい岩があって、そこにアスカをそっと寝かせる。
音苔は岩にくっついているので、いくつか集めてアスカの側に置いた。
カン、カン、カン、・・・
クラウスはアスカのそばに座って、そっと叩き続ける。
やさしい緑色に照らされるアスカがこの世の者と思えないほど美しかったから、見ていたかったのだ。
「う・・・ん・・・」
アスカが少し苦しそうなうめき声を漏らした。
「大切にお守りしたつもりだったが、もしかしたら、どこか大きな傷か骨折があるのかも・・・!だとしたら早く手当てしないと・・・。」
クラウスは戸惑い、緊張しながらアスカの身体に手を伸ばした。
濡れた小さな柔らかい体。
壊れやすい宝物を包んだ布を剥ぎ取るように、アスカのそっと服を脱がしていく。
「白い体がこんな暗闇でも光る・・・」
クラウスは自分の服の端を裂いてきつく絞り、濡れたアスカの身体を拭きながら怪我がないか確かめた。
触れるたびにアスカの乳房が揺れる。
彼は全てを見た。
ジェイドしか知らないであろう所も。
アスカの身体には数か所小さな傷があるだけで、とても綺麗だった。
ホッとするクラウス。
アスカのまだ濡れた衣服は岩場に干して、その体には一番薄い下着を掛けておいた。
濡れた衣服を着たままでは体温が下がってしまうからだ。
アスカを見い届けた後、自分も裸になり衣服を絞る。
「これから、無事にアスカ様をジェイド様にお届けするまでは私がしっかりしなくては・・・!」
ジェイドの騎士団に入団できたと言っても若き騎士クラウスはまだ17歳。全てに戸惑っていた。
コン・・・
足元の剣が不意に岩にぶつかり、アスカが緑色に照らされた。
浮かび上がる白い体。
クラウスは息をのんだ。
全身に感じる血液の温度の上昇・・・
気が付けば彼はアスカの身体の上にまたがっていた。
手には、アスカにかけていた薄い布。
「駄目だ、駄目だ、駄目だ、駄目だ!!!」
声にならない叫びがクラウスの喉で暴れている。
この先には絶望と破滅しかないことは分かっていた。
この少女は、自分が尊敬し崇拝し、そして最も恐れている人間が狂おしいほどに溺愛しているのだ。
もし、一線を越えてしまえばクラウス自身のみならず、一族郎党生きてはいけなくなるだろう。
「くっ・・・」
首筋の、ジェイドにつけられた十字の傷が痛んだ。
しかし、しかし自分の手に届く白い体を貪りたいという欲望にあらがう事が出来ない。
クラウスは幾度想像しただろう・・・。ジェイドに弄ばれるアスカの姿を。
ジェイドはいつしかクラウスに変わっていくのだ。
「お許しを・・・!」
クラウスはアスカの小さな唇を塞いだ。
冷たい自分の唇で。
0
あなたにおすすめの小説
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる