ケーキなボクの冒険

墨汁らぼ

文字の大きさ
39 / 67

泉の者

しおりを挟む
旅の二日目は雨だった。

「雨は恵みの象徴だよ。森の精が私たちの結婚を祝福してくれているのだろね。」

とマーリン王子は微笑む。リーフは色々と生きた心地がしなかった。

昨夜の「婚儀」のことを考えると気分が果てしなく沈む。
なにも覚えていないというのも怖かった。
本やネットでしか見たことない大人の行為を、自分がしてしまったのだろうか・・・。しかも女の子として・・・。
マーリン王子が夜の悪魔になった時にあれこれされた記憶のほうが鮮烈で、すごく怖いイメージしかない。
悶々と悩むリーフ。馬車の長旅は、悩む時間が十分にあった。


出発したみどりの村から一日半も遠く離れると、随分森の風景が深くなってくる。
緑色が濃くなり、木々は巨大に生い茂り、日が差す場所が少なくなる。

自分がどんどん小さくなっていき、人間の世界から精霊の世界に入っていくような気がした。
そんなリーフとは対照的に、森の中でマーリン王子は元気になってきているように見える。
王子の髪の色、肌の色、目の色が鮮明になっている。
水彩絵から油絵に変わった感じだ。

妖精の末裔、だからかなとリーフは思う。


ウオ~ン・・・


森のさらに奥深くから、獣の鳴き声が聞こえてくる。
リーフは、アーサー王子と森で出会った双頭のオオカミを思い出してゾクッとした。

馬車の中の時間つぶしにと、あの時のことをマーリン王子に話してみる。

「それは恐らく、″泉の者”だろうね。」
「泉の者?」
「この地のどこかに、魔物の生まれし泉があると言われている。その泉を求め、その泉の水を飲みし者は、
恐ろしい力を持った魔物になるということだ。」

リーフは身震いした。「魔物の泉を求めるって、どういうことだろう・・・。」
「何かに恨みや怨念を持つものが、とても強く念じた時、泉が現れるそうだよ。
我が1000年前の王も、妖精の血を断ち切るほどに怒り悲しみ悪魔と契約してしまった。
泉の者の気持ちはわかるかもしれない・・・。」

王子は少し震えているリーフを抱きしめる。
ちょっと抵抗したが、悲しい獣の声があまりも恐ろしかったので、リーフは身を任せた。
王子の暖かく力強い胸、鼓動。

カッコよくて頭が良くて優しい、こんなお兄さんがいたらいいな、とは思う。

コンコン

走行中の馬車がノックされた。並走しているスカーレットだ。

「失礼します、王子。少し森の様子がおかしい気がしますので・・・、今夜は夜止まらず、夜通しこのまま走りたいと思います。
お疲れでしょうが、申し訳ありません。」

ウオ~ン、ウオ~ン、ウオ~ン・・・・・・

確かに、獣の鳴き声が増えていた。
ただならぬ気配、背筋に悪寒が走る。

スカーレットが兵士たちにあれこれ指示すると、馬車は速く走るようになった。

ガラガラと車輪が回る音が大きくなる。時を同じくして雨が強くなり、バチバチと馬車に打ち付けた。



先を急ぐ一行。
激しくなる雨、風。
その様子を見ているものがいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...